特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構「RobiZy」(ロビジー)の第一回リテール・フード部会が2020年12月23日にオンラインで開催され、RobiZy理事で部会長であるニチワ電機株式会社の西耕平氏がショート講演を行った。西氏は飲食・小売などの現場にロボットが活用されるために何が必要なのか語った。レポートしておきたい。
職人のカンやこだわりを超えて
ニチワ電機株式会社 専務取締役 西耕平氏
西氏は初めにニチワ電機が昨年12月に、一般財団法人省エネルギーセンター主催の「2019年度省エネ大賞」省エネ事例部門において「経済産業大臣賞」を共同で受賞したことを紹介した。これはニチワ電機が丸亀製麺を運営する株式会社トリドールホールディングスに「省エネ自動茹で麺機」を導入し、中部電力を加えた3社に対し、「茹で釜の自動制御による省エネルギーの取り組み」として受賞したもの。
丸亀製麺は茹で麺機の湯量や沸かし方、さし湯の給湯タイミングなどを職人が調整している。それが「こだわり」でもあるのだが、人間が感覚で行っていたことなので、どうしてもロスがあった。ヒーター出力とさし湯を自動制御するニチワ電機の「省エネ自動茹で麺機」を「丸亀製麺 掛川店」に対して使うことで、水道量が約半分、電気使用量を約3割下げられたという。
西氏は同じチェーンのレストランでも都心部とロードサイドでは売上変動が異なることを指摘。15分ごとにデータを細かく取得し、そのデータにもとづいて給湯量や電気使用量を変えることによって省エネを達成したと紹介した。
既存厨房機器と組み合わせられるロボットを
ニチワ電機の厨房機器は、牛丼チェーン各社や、ファミレスなどで広く使われている。ファミレスの厨房では一台の機械が同時に様々な調理を行うことができるようになっている。西氏は、それらの調理器具と組み合わせて省力化・生産性向上ができるロボットを量販可能なかたちで開発ができれば次の世代にバトンタッチができるのではないかと展望を述べた。
■ 動画
外食はファストフード、ファミレス、居酒屋、ディナーレストラン、喫茶などに分類でき、それぞれ利用形態・提供内容・客単価その他が異なる。実態も一般的に考えられているのとは異なっている。たとえば「ハンバーガーチェーン」と聞くと一般的にはハンバーガーの売上が主なのだろうと考えてしまうが、実際にはバーガーの売上は3割程度で、7割がドリンクというのが現実だという。
また、日本フードサービス協会の分類では老人施設の給食は外食に含まれてない。それは「喫食者が食を選ぶことができないから」と理由があるからだが、実際には高齢者向け施設の食事も多様化されており、それらも外食産業そのものであり、今後、そこに向けた自動化技術の投入も行うべきだと指摘した。
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大手に採用されるためには汎用性が必要
現状の調理ロボットについては、単独での運用が多く「汎用性に乏しい」ことを課題として指摘した。特定の料理なら対応できるが、それ以外はできない。だが、大手チェーンに幅広く採用されるには「汎用性が重要だ」とし、ロボットを使う側と作る側との認識のギャップを強調した。その上で「使う側・作る側、双方の発展に寄与できるようなロボットの誕生を目指したい」とした。
そして外食には「Food and beverage Control」という店舗での料理・飲料サービスの原価率維持管理の考え方があることを紹介。まず厨房の活動調査を行い、その上で、レイアウトを考えた設備の配置、高生産性の機器の設置を行う。そして価値分析をして、不必要なコストを取り除く。そして生産性を向上させるように改善する。
これらができている現場には既に導入されている自動機械がある。そこに人と共同作業を行えるロボットを導入することになる。ニチワ電機は蒸気と熱風で調理するスチームコンベアオーブンに力を入れているが、材料を最初に設置するのと最終的に調理が終わった料理を取り出すのは人間が行なっている。それらを自動化できれば、新たな概念の調理器具が生まれるのではないかと考えているという。
また、容器類などが統一されると食器洗浄・清掃時間も短縮することができる。それらを自動化することで価値分析を行なっていきたいという。これら厨房づくりの原則を守り、そこに技術を投入することで、既存の厨房のシステムと連携できるロボットを生み出していければと語った。
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現場の考え方を変えるためにはシステムから
ロボットが使えるのは厨房だけではなく、ニチワ電機ではDoog社の搬送ロボット「サウザー」をバックヤードでの搬送などに使っている。たとえば宴会用の食器などを自動で運ばせたりしているという。動線が長いところでは有効だそうだ。そのほか、ステーキチェーンのホールでの下膳に活用している。
■ 動画
ロボット導入の課題としては、「5S」の徹底と教育をあげた。飲食や小売の現場では泥臭いやり方で現状をしのいでいるところが多い。要するに人海戦術だ。多くの現場ではそのやり方を急には変えられない。
自動化を進め生産性を上げる、あるいは今後ますます厳しくなる人手不足に対応するためには、既存の仕組みの見直しから入らないといけない。だが、そのための思想が現場に行き渡っていないのが現状だという。西氏は「オーナーが自動化で生産性を上げることを求めていても、思想がない現場に機械を与えられても活かしようがない」と指摘し、考え方を変え、システムから入れることが重要だと述べた。
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December 24, 2020 at 07:46AM
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