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映画の街 市民と作る - 読売新聞

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 NPO法人「門真フィルムコミッション」理事長の奈須崇さん(47)は、門真市で府内唯一の国際映画祭を毎年開催しています。コロナ禍に見舞われた8月、多くの障害を乗り越えて第3回の実施にこぎつけました。市民出演の映画制作も手がけており、映画を通じた地域活性を目指しています。

 「門真国際映画祭」は運営も字幕翻訳も全て無償ボランティアがやっています。地元の人が出演、制作した映画をみなで楽しむ。自分たちの映画祭を企画したいとの思いで、2018年に始めました。

 今夏はコロナで開催を迷いましたが、世界中の国際映画祭が中止になるなか、映画復興ののろしを上げたいと決断しました。実際の会場以外にウェブ会場を設置。消毒などはもちろん、独自の接触追跡登録システムも考案し、あらゆる対策を取りました。

 映画祭では44の国と地域から届いた1020本のうち78本を上映。対策に出費がかさみ収支は赤字ですが、今年は他に上映の場がなく、喜ばれました。無事に終わり、しっかり対策すれば映画鑑賞は安全にできると実証できたと思います。

 高校卒業後、会社勤めをしましたが、本当は音楽をやりたくて。とはいえ、仕事を辞めたら親が心配するので、20歳の時、「学生なら親も納得するのでは」と吉本総合芸能学院(NSC)に入りました。

 当時、200人の募集枠に応募は2000人。面接では一発ギャグでなく、あえて普通に自己紹介したら通りました。漫才に興味はなかったのですが、歌が歌えるのを見込まれ、先生に「演劇に行け」と言われて。いきなり生徒が出演する卒業公演の主役を任されました。

 NSCを卒業後は、大阪の劇団「スクエア」の芝居を見て舞台美術に魅了されて入団。小劇場で俳優と劇作家を約10年間続けましたが、やりきったとの思いがあって退団し、小説を書くなどしていました。

 門真は妻と僕の実家の中間という理由で11年から住んでいます。夜に街灯が少なく、市役所に相談に通ううち職員と仲良くなり、地域活性に協力したくなりました。

 そんな時、自主制作映画の脚本依頼があり、オール門真ロケにすれば、面白いと思いました。でも準備はめちゃくちゃ大変で。道路などの撮影には国や警察の許可が必要で「どんな映画ですか」などと聞かれて話が進まなかった。

 この経験を他でも生かせればと、16年1月にロケ地の支援をする「門真フィルムコミッション」を作りました。

 撮影でトラックの横転シーンがあり、冗談半分でSNSに「横転させていいトラック、貸してくれませんか」と投稿したら、門真のトラック販売会社が提供してくれました。冷凍倉庫を貸してくれた企業も。「門真を盛り上げたい」と言えば「よっしゃ!」と協力してくれる。門真の熱さと人情に支えられました。

 NPOで撮影した映画は8本。門真市シルバー人材センターの依頼で、創立40周年の記念映画「門真市ゾンビ人材センター」を制作中です。最初は「なんでせなあかんねん」とぼやいていた会員の方が、ゾンビのメイク後、「孫に送るから写真撮って」と元気になるのを見てうれしかったですね。

 「人に喜んでもらいたい」というのが、僕の根本。来年2月には門真市駅周辺での社会実験に参加し、高架下で期間限定の映画館を開設します。次は門真に常設の映画館を設けることが目標です。海外でもニッポンのオオサカの映画祭といえば「カドマ」と定着しつつあります。地元の人と一緒に門真を誰もが知る「映画の街」にしていきたいですね。(久場俊子)

 ◆八尾市出身。1994年に吉本総合芸能学院(NSC)大阪校に入学。同期はブラックマヨネーズ、次長課長ら。その後、大阪の人気劇団「スクエア」で、役者と劇作家として活躍した。2015年には「上方スピリッツ」で小説家としてもデビューした。

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December 27, 2020 at 03:00AM
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