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利休にならう「家で仕事空間」を作る方法。:アエラスタイルマガジン - 朝日新聞デジタル

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プロのアスリートも通う整体の先生から、「コロナ禍から以降、腰痛の患者さんが増えている」と聞きました。テレワークのために「とりあえず」ベッドの上に座ってPC作業をするなど無理な姿勢が原因だそうです。「テレワークできてしまう」と気づいてしまった以上、「家は寝て帰るだけ」ではなく「仕事ができる場所」として環境を整える時代になりました。

気になるのが、家でのプライベートとビジネスモードの切り替えです。現代のすまいはLDKを大きくとり、追加で寝室がついている設計が多いため、書斎専用の部屋を持つのは現実的ではありませんよね。そこで参考になるのが〈茶室〉です。少々ハードルが高く感じるかもしれませんが、精神を制御する仕掛けのヒントがたくさんあります。

《わび茶》(※1)における草庵風茶室(※2)は、超スモール空間です。千利休(※3)が作った〈待庵(たいあん)〉(※4)に至ってはわずか二畳敷き。茶事に招かれた客人は露地庭(※5)を通って茶室に向かいます。歩行には不安定な飛び石の上を伝い歩き、手水鉢(ちょうずばち)(※6)に腰をかがめて手口を清め、思い切り足を高く上げて踏み石を踏んで敷居をまたぎます。このように、あえて「非日常的な動作を強いる」仕掛けがあることで、身体に集中が行き届き、短時間で精神統一がなされるようになっています。

〈待庵〉はさらにラジカルな仕掛けがあります。それが、踏み石の代わりに設置された60センチ四方の「にじり口」(※7)。武士にとって最も重要な刀剣をはずさないと入れないクリティカルなサイズです。身分をはずした姿で体をねじりやっと体を滑り込ませると、そこは外部とは異なる世界──薄暗く閉ざされた茶室という圧縮された聖域に移り変わります。

この仕掛けをテレワークに応用するならば、まずリビングか寝室の一部に四角い空間を確保しましょう。最低限、茶室的な空気を作るためには、「四角い空間」であること・周囲と区切れるように「スペースを囲む」ことが重要です。いまなら室内作業用のスクエア型テントが安価で手に入ります。腰を痛めては元も子もありませんので、デスクと椅子だけは用意したいところ。テントに入る前には儀式として一度手口を洗ってもいいですね。やがて自然で落ち着いた心が目覚めてくるかもしれません。

(※1)わび茶:利休が大成したもの寂しく色あせた様に美を見いだす「わび」の精神を重んじた思想からなる茶の湯。
(※2)草庵風茶室:都会にいながらにして山里の風情を味わう「わび茶」を体現した質素で狭小な茶室。
(※3)千利休:安土桃山時代に「わび茶」を完成。織田信長、豊臣秀吉に仕える。秀吉により切腹を命じられる。
(※4)待庵(たいあん):国宝。日本最古の茶室建造物。千利休作と伝えられる確かなものとして唯一の現存茶室。
(※5)露地庭:茶庭(ちゃてい、ちゃにわ)とも言う。茶室への園路に自然を盛り込んだ庭でありアプローチ。
(※6)手水鉢(ちょうずばち):神前や仏前で口をすすぎ、身を清めるための水を確保する器。茶の湯に採り入れられ、露地の中に置かれるようになった。
(※7)にじり口:小間茶室の客の出入り口。刀をはずし頭を下げてはじめて人ひとりがようやく入れる。

Illustration: Satoshi Ogawa
Text: Sayaka Umezawa(KAFUN INC. /MOIKA GALLERY)

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January 12, 2021 at 08:07AM
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