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“まるで本物”日本刀、花札の3DCGを作る少数精鋭集団 こだわりでリアルさ追求 「目指すはナンバーワン」 - ITmedia

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 刃先が光の反射で鋭く光り、滑らかに反った刀身に金の紋をあしらった鞘(さや)――古くは戦で使われ、贈答品や家宝として受け継がれてきた、日本の伝統工芸品である日本刀。そんな日本刀を3DCGで極限までリアルに再現したモデルデータがある。

 これは、3DCGデザイナーやプログラマー4人の制作集団「Bunnopen」(ブンノペン、名古屋市)が制作したもの。ゲームやVR用の素材として、Unreal EngineマーケットプレイスやUnityアセットストアで販売している。

 日本刀以外も花札、百人一首などユニークなモデルを制作。花札は絵柄の裏側の紙の艶感まで表現され、百人一首では通常の読み札と取り札の他、金箔に仕上げたセットを用意。どちらも札を並べる畳のデータも含まれている。映画やアニメーション、ゲームなど、3DCGは世の中にあふれているが、いずれも目を見張るものがある。

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photo 花札や百人一首(画像は金箔に仕上げたもの)のモデルも制作

精巧な3DCG作りに取り組む裏側には、メンバー同士でときに口うるさいほどの指摘を行うリアルさへのこだわりがあるという。

 伝統工芸や文化にフォーカスした3DCGを手掛ける理由、制作の過程をBunnopen代表の井本直宏さん、3DCGデザイナーの大坪晃輔さん、森光洋さんに聞いた。

伝統工芸の“正しい”3DCGはごくわずか

 もともと名古屋市立大学芸術工学部の学生だった井本さんたち。当時から仲間内で3DCGやゲームを制作していた。ちょうどその頃、2011年3月に東日本大震災が発生。多くの企業が採用活動の見直しを行う中で「企業に頼らず自分たちの手で事業を生み出せないか」という思いが芽生えていったという。

 ただし、仲間内で趣味として行っていた活動をいきなり事業化したところで軌道に乗るかは分からない。すぐに法人化するのはリスクが高いと考え、3DCGデザイナーやプログラマーなど個人事業主をまとめる組織として「Bunnopen」を2012年に立ち上げた。

 伝統工芸や文化に注目するきっかけは「世の中に3DCGを始めデジタルコンテンツは一杯あるのに、その国や地域発祥のものを正しく表現したものが少ない」という気付きだった。日本刀の3DCG「Katana」を制作した大坪さんは「例えばゲームのアイテムで“日本刀”が出てきたとき、刀の専門家ではない自分が見ても形や色が日本刀に見えないことがよくあります」と語る。

photo Bunnopen代表の井本直宏さん

 伝統工芸などの3DCGが少ないということは、他社や他のデザイナーにまねされにくく、組織を差別化できるのではという思惑もあった。

 「実物を正確に再現した3DCGを作り世界に公開することで、多少なりとも文化の正しい理解につながるのではと思いました。日本で生まれ育ったわれわれには、特に日本発祥のものを知っているという自負があります。他にはできない最高の3DCGを作りたいと思いました」(井本さん)

 そこで組織をBunnopenと命名。Bunnopenの「Bun」は「文化」、「pen」は筆記具を表し、「文化を描けるような集団を目指す」という意味を込めたという。

photo Bunnopen公式サイトより

ときには口うるさく指摘も

 とはいえ自分たちは伝統工芸や文化の専門家ではない。見た人に違和感なく3DCGが受け入れられるには、精巧なモデルが求められる。そのため実地調査や、細かい調整を繰り返すことを心掛けているという。

 例えば、Katanaの制作では室町時代や戦国時代の刀剣資料を調べた他、三重県桑名市の刀工及び刀の「村正」と縁が深い桑名市博物館、戦国大名の刀剣を展示する愛知県の徳川美術館などを訪れた。実物の日本刀を見て、刀を握る部分の柄(つか)、刀と柄の境目の鍔(つば)、刀をしまう鞘(さや)、模様の家紋など刀を構成するパーツを隅々まで確認したという。

photo Bunnopenの3DCGデザイナー大坪晃輔さん

 制作には、よりリアルな光学現象を表現できる物理ベースレンダリング(Physically Based Rendering)を採用。制作の途中で形や模様の勘違いに気付き、作り直す作業を繰り返しながら完成に近づけた。

 刀の種類は、戦で使われた「打刀」「太刀」、短刀の「脇差」、大型の打刀や太刀の「大太刀」を用意。デザインは村正の他に備前長船(岡山県)、美濃伝(岐阜県)など有名な刀剣の特徴を出すことにした。

 例えば、相州伝(神奈川県)を模した打刀は刀部分の「刃文」に、太く線状に光る「金筋」や細い線状の模様「稲妻」を表現。大坪さんは「相州伝が華麗な刃文を持つことを表現しました」と説明する。

photo 刀の種類は「打刀」「太刀」「脇差」「大太刀」を用意
photo 相州伝(神奈川県)を模した打刀

 Katanaでは鞘や柄で色のカスタマイズが可能。家紋は20種類から選べ、金箔押して鞘に描くことができる。「3DCGモデルとしてゲームなどでの使用を想定し、ユーザーが好みのものを選べるよう色や質感など刀のバリエーションが出るようにしました」と大坪さんは話す。

photo Bunnopenの3DCGデザイナー森光洋さん

 精巧なモデル作りには、制作者以外のメンバーの確認や指摘も不可欠だ。花札の3DCGモデル「Hanafuda」を作った森さんは「紙の質感を表すのに井本から何度も指摘を受けました」と苦笑いしながら振り返る。

 紙製の花札をよく見ると、絵柄の縁をくるむように裏側から紙がまかれている。「そうした質感を正確に表すため、『紙が本物に見えない』『札の角が違う』など口うるさく言いました」と井本さん。Hanafudaが動画でどう見えるかを確認しながら、細かい調整を重ねたという。

 こうしたフローはKatanaや他の3DCG制作でも行われている。井本さんは「複数人の視点が加わることで1人では気付きにくい点にも目を向けることができ、ユーザーによりリアルに感じてもらうことにつながると思います」と話す。

3DCG制作でナンバーワンを

 Bunnopenでは日本刀や花札以外にも、将棋、囲碁、オセロ、麻雀などのアセットをゲームやVRコンテンツを手掛ける企業、クリエイター向けに販売している。最近は広告ビジュアルに使われることもあるという。

 とはいえ反響は「正直芳しいとはいえない状況」(井本さん)。「Bunnopenが作った3DCGモデルがもっと広まるには認知が課題です」と続ける。現在はこうしたアセット販売に加え、ゲーム制作のプログラミングなどの依頼を企業から受けマネタイズにつなげている。

 しかし伝統工芸や文化に関連した3DCGの制作は、諦めずに続けていくという。今後は中国などで盛んな将棋「シャンチー」や、インド発祥の指で行うビリヤードのようなゲーム「カロム」といったモデルを作り、アセットとして展開する予定だ。

 「われわれ日本人は細かな作業は得意といわれるのでその特長を生かした3DCGを作り、アセット制作のナンバーワン目指していきたいです」(井本さん)

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February 01, 2021 at 05:00AM
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