料理やお菓子に入っていたり、コーヒーや紅茶に入れたりと、日々、口にする機会が多い砂糖。その産地でいま、伝統的な生産手法に批判が上がり、国を挙げて見直しに動いているところがあります。砂糖が直面する、大気汚染問題につながる課題とは。(アジア総局記者 影圭太)
砂糖大国に立ち上る煙
私が訪れたのはタイの首都バンコクから飛行機で1時間ほどのところにある東北部のウドンタニという町。タイは毎年1000万トン前後を生産する砂糖大国で、日本が輸入する砂糖も全体の13%がタイから来ています。この地方でも砂糖産業が盛んで、12月から今シーズンのサトウキビの収穫作業が始まっていました。
「簡単に現場は見つからないかもしれない」
そんな事前の情報に反して機内から見える光景に、“焼き畑”が広がる現実を到着前から実感することになりました。
「キビ焼き」って何?
火をつけるのは収穫をしやすくするためで、次の作物の栽培のために土壌の養分を高めようとする、いわゆる焼き畑農業とは目的が違います。
タイ国内のサトウキビ農家には広く普及していて、2019年から20年にかけての収穫期には、タイ全土で収穫されたサトウキビの50%、半分がキビ焼きによる収穫だったとされています。
タイでは、収穫されたサトウキビの最低買い取り価格を政府が決めます。その際の価格を、キビ焼きで収穫されたものは、そうでないものより安く設定する仕組みも設けられています。
タイの砂糖業界は、抜本的な作業の見直しを迫られているのです。
なぜ火をつける?
本当に減っているのか、なぜ続けるのか、農家の1人に話を聞きました。
農家の男性
「私たちだってやりたくてキビ焼きをやっているわけではない。理由があるんだ」
最大の理由は、“作業の効率化”です。
12月でも30度近い気温の中、収穫は重労働で、手作業では多くても1日に1トンほどしか収穫できません。農家の売り上げは、日本円にして1日3000円程度にとどまります。
農家の男性
「すべて手作業でやれば働き損になってしまう。だからキビ焼きはなくならない」
砂糖メーカーも迫られる対応
日本の大手商社「三井物産」が出資するメーカーもその1つで、農家の代わりに作業を行う収穫請負に乗り出しました。作業の際に使うのは、ハーベスターと呼ばれるサトウキビ専用の収穫機械です。葉を落とす事前の作業も必要なく、手作業の100倍の作業効率があるとされています。
砂糖メーカーの降矢博司副社長は、少しでも作業の効率を上げ、少しでも売り上げを増やしたいという農家の事情に寄り添っていかないと、キビ焼きはなくならないと感じています。
降矢副社長
「環境に悪いのは明らかだと思うが、農家が抱える根本的な問題が解決されていない中で急激にキビ焼きを減らすのは難しい。なぜやらざるをえないのかを見つめないと減っていかないと思うので、会社として農家をサポートしていきたい」
解決には「なぜ」が必要
東南アジアでは、サトウキビ以外でも、洗剤や加工食品などに使われるパーム油をめぐって、原料のアブラヤシ農園の拡大で森林が減少していると指摘されるなど、世界的な環境意識の高まりを背景に、伝統的な産業の手法に批判が集まる事例が出ています。
一方で、農家の話を聞くと、キビ焼きを一気になくすことは簡単ではないとも感じます。
大気汚染や温暖化問題は地球規模の切迫した課題で、国連が定めたSDGs=「持続可能な開発目標」の考え方も広がり始めています。
「伝統的な作業だから」で終わらせず、「なぜその作業が続いているのか」「なぜやらなければならないのか」を今まで以上に見つめていくことが必要になっています。
アジア総局記者
影 圭太
2005年入局
仙台局 経済部などを経て
2020年から現所属
January 20, 2021 at 03:04PM
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“燃やして作る”砂糖 対応迫られる事情とは? - NHK NEWS WEB
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