アジェンダと前提
町田貴昭氏:「創業期にやったプロダクトマネジメントっぽいこと」というテーマでお話しします。私は株式会社ビットキーでVPoPとして今はプロダクトリードをしている、町田と申します。よろしくお願いします。
簡単に弊社の紹介ですが、「Connect Everything」というミッションを掲げていて、2018年8月に創業した会社です。
本日のアジェンダですが、今日のお話のプロダクトマネジメントというところで、前提を整えてから話をしようかなと思っています。そのあと創業初期の話と、プロダクト組織が50人を超えてからの話という2つで話せればと思います。
さっそく前提です。まず今日話をする前提として、弊社は事業会社なので、事業会社の話ですよというところと、弊社はBtoCもやっているんですが、メインのビジネスモデルがBtoBであったりBtoBtoCなので、BtoBのビジネスがメインですよというところ。
あとは、創業初期の期間、弊社が最初にプロダクトをローンチするのがだいたい1年ぐらいだったので、創業から1年ぐらいのスパンの話ができればなと思っています。
創業初期にプロダクトマネージャーというロールは存在しなかった
では、さっそく本題の創業初期についてです。今日聞いてくださっている中で、創業のタイミングでプロダクトマネージャーがいた会社があるのかな、というのが1個の疑問です。弊社も創業時に代表陣がいて、エンジニアがいて、ビジネスサイドがいてというような体制でやっていました。
実際に創業のタイミングでプロダクトマネージャーというロールは存在しませんでした。ちょっと脱線するんですが、デザイナーもいなければリサーチャーもおらず、PMMもいないという体制の中で創業した会社です。
じゃあ実際にプロダクトマネジメントの領域は誰が担っていたかというと、最初は代表陣が担っていて、ビジョンを描いたり、どのタイミングでプロダクトをローンチするみたいな意思決定はしていたんですが、このままずっと進めていくと、細かい課題から大きな課題までちらほらと出てきます。
細かい課題を挙げていくとキリがないので大きな課題として4つ挙げています。例えば抽象化された代表陣が語るビジョン。かなり抽象的なビジョンだったりするので、そこから実際に具体化するのが困難だったり、エンジニアとビジネスサイドの共通理解を得るのがすごく大変だったりとか、あとは代表陣のメインの業務が経営だったり、他の領域の仕事もたくさんあるので、限られた時間の中で全員が言っていることを理解する必要があったり。こういう課題が出てきます。
「エンジニアとビジネスの間に翻訳者が必要なのでは?」
そこで私が創業時に最初にやったこととして、間に翻訳が必要なんじゃないかという課題意識があって、翻訳者になろうということを、プロダクトマネジメントっぽいこととしてやってきました。
代表陣が語る会社のビジョンに紐づいて、さまざまなキーワードが弊社の中にはあったんですが、我々のミッションである「Connect Everything」に紐づいて、スマートロックやサブスクリプションとか、時空間不一致の問題とか。
今では語れますが、創業当時に「時空間不一致の問題を解決する」とかを言われても、実際に何をやりたいのかがさっぱりわからず、「何を作ればいいの?」みたいな感じで、頭の中が「?」だらけだった経験があります。
このようなかたちで、キーワードはたくさんあるけれども具体的に作るプロダクトの解像度が低い状態だったかなと思います。
このままだとメンバー全員が「どんなことが実際にできるんだろうか」「実際にどんな体験になるの?」「そもそも時空間不一致問題って何よ?」みたいな(感じになってしまう)。こういった課題が出てきます。
ここに対して、動くものがなければ仕様書もない中で、創業時のメンバーが各自の解釈によって理解していくことになるんですが、そうすることでちょっとした認識の齟齬とか、理解の違いみたいなものが生まれてくるんじゃないかなと思います。
そんな中で、翻訳者として代表陣が言っていることを徹底的に理解して、具体的に言語化してみて、全員に発信し続けるということをやり続けました。
具体的な取り組み、取り組みによって実現できたこと
(スライドを示して)具体的にどんなことをやったかというと、小さくて一つひとつは見えないと思いますが、具体的にペルソナを立てて、ストーリーを作って、一人ひとりがどんな言葉を言うか、セリフを一言一句まで全部文字起こしをして、「我々が作るプロダクトが普及したらこういう世界観になるよね」みたいなストーリーを書き続けました。
書き続けて「Slack」に毎日発信し続けることによって、メンバーに見てもらうだけじゃなくて、代表陣にも見てもらうことによって、フィードバックサイクルを回すようなことをやり続けてきました。
結果としてスマートロックとかの具体的なサービスのイメージが湧いたり、具体的に何を作るかが明確化されたり、あとはエンジニアとビジネス間で共通の理解が持てたんじゃないかなと思っています。
あとはこれ以外に本来やるべきであるロードマップの作成だったり、ブランディング戦略とかKPIの設計みたいな、プロダクトマネージャーとしてやるべきことは一切捨てました。
これはやりたくなかったわけではなくて、スタートアップ初期のフェーズだからこそ、早期に全員の世界観というのを一致させる必要があるなと思っていたし、プロダクトのローンチを最優先にしたかったので、ロードマップを作るとかプロダクト戦略を書くよりも、動くプロダクトを作るところを最優先にしていました。
さらに、弊社はソフトウェアだけではなくてハードウェアの開発も担っているので、メチャクチャ先行投資が必要なんですね。資金がメチャクチャ必要です。資金調達するためには、作り方であったり品質とかプロセスよりも、初期は動くという事実のほうが大事だったので、このプライオリティを上げていました。
というわけで、創業初期に翻訳者としてやったこととして、世界観の具体的な言語化をすることによって答え合わせと共通理解をするということをやっていきました。あとは動くものを提供し続けることによって、外部に対してでも我々の作る世界観の具体的な翻訳をやってきました。
エンジニアとビジネスサイドの関係づくり
もう1つプロダクトマネジメントっぽいこととしては、エンジニアとビジネス間へのアプローチです。
良いプロダクトを作り続けるには、エンジニアとビジネスサイドの関係性がすごく大事だなと思っていて、お互いに何でも言い合えて、一緒にプロダクトを創っていく文化を創業初期、もしくは事業立ち上げ期とかに作り切っておくことはすごく大事かなと思っています。
そのためにエンジニア組織がビジネスサイドに信頼をしてもらうために、プロダクトを毎週アップデートし続けたり、営業同行したり。あとは営業が今困っていることをヒアリングしたり、「どうやって売れるんだろうね」ということを一緒に考えたりとかをすることによって信頼を獲得し続けてきました。
結果的に気軽にコミュニケーションを取れるようになったり、PMF(Product Market Fit)は一度達成しておしまいではないので、継続的なPMFを達成するためのフィードバックサイクルが自然に回ったり、あとはビジネスサイドが一緒にプロダクトの有り様を考えてくれるみたいな文化ができたんじゃないかなと思っています。
50人のエンジニア組織になって「Product Value Desgin」を設定
最後に、プロダクト組織が50人を超えてからの話です。
創業初期、弊社ではプロダクトマネジメントとか、プロダクトマネージャーのロールみたいなものは一切作ってこなかったし、そういう言葉を使ってきませんでした。
12名からスタートした会社で5人のエンジニアがいましたが、2021年後半に50人を超えるまでは、プロダクトマネージャーとかというロールは作ってきませんでした。
それは、プロダクトマネジメントという業務はかなり広範囲に広がるし、「プロダクトマネージャーというロールで担うのではなくて、事業部全体で一緒にみんなでやっていくものだ」と考えていたので、明確にロールは作ってきませんでした。
ただ50人のエンジニア組織を超えてから、どこに向かっているかわからないメンバーが出てきたり、あとは誰がどこに責任を持つのかを気にし始めたり、あとは価値が語れないとかの課題が徐々に出てくるようになってきました。
弊社ではこのタイミングで「Product Value Desgin」という言葉を定義して、社内で使い始めて責任範囲を決め始めるということをやってきました。
具体的にはWhyの言語化であったり、ロードマップの説明、ビジョンの共有みたいな、プロダクトマネージャーの中の1個の領域を担うようなロールです。宝箱を地図に示して、そこに向かうためのコンパスになるというロールを作っています。
弊社はソフトウェアとハードウェアの両方の領域を越えてユーザーの体験をデザインして、広いプロダクトの価値をデザインする必要があります。さらに、ソフトウェアだけでなくハードウェアもいるので大量のステークホルダーがいるんですが、全員同じ方向に引っ張っていく存在として、Product Value Desginというロールが存在します。
創業初期取り組んだ、プロダクトマネージャーっぽい2つのこと
今日のまとめです。創業初期にプロダクトマネージャーっぽいことをやったということで、3つです。創業初期は翻訳者が必要ということで、翻訳者になりましたよという話。あとは、創業初期に動くものが必要ということで、動くものをどんどん作り続けるみたいなことをやってきました。最後はビジネスメンバーとの関係性が大事ということで、創業初期だからこそできる文化醸成を大事にしてやってきましたよという話でした。
以上になります。ご清聴ありがとうございました。
Published at
January 16, 2024 at 09:00AM
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