今回は「中華粥」の作り方を伝授します
料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は「中華粥」です。
デンプンが液体に溶け出した一体感を味わう
穀物を粥状にした食べ物は世界中で食べられていますが、アジア圏の主役はやはり米粥。日本では1月7日には七草粥を食べる習慣がありますが、粥は年中食べてもおいしいものです。日本のお粥もいいですが、新しい定番としてレパートリーに中華粥を加えるのはいかがでしょう。
というわけで、今日は中国風の粥の作り方をご紹介します。
そもそも日本と中国では米の種類が違います。日本ではほぼすべてが短粒米ですが、中国では北部を除き長粒米が主流。長粒米は粥状に炊くと割れやすく、独特のとろみが出ます。この状態を「米の花が咲く」と表現しますが、デンプンが液体に溶け出した一体感を味わうのが中華粥です。
今回は手に入りやすい日本の短粒米を使いますが、米の花が咲いた状態を目指します。そのためのコツが2つあるので順番に確認していきましょう。
中華粥の材料(2〜3人分)
米 75g
サラダ油 小さじ1
水 750ml
顆粒ガラスープ 小さじ2
水 400ml
米の10倍の量の水を用意するところまでは日本の米と同じですが、ここから先が異なります。
長粒米を使う場合も基本は同じです
米は軽く洗い、ザルに上げて20分ほど置きます。ザルに置いて空気にさらすことで米が割れやすい状態になるので、次にサラダ油小さじ1を振りかけましょう。
倍量つくる場合もサラダ油の量は小さじ1で大丈夫です
ここが1つ目のコツです。米を手でよくもむのです。表面に傷をつけることでその後の加熱工程で米が割れやすくなります。
ふつうにお米を炊くときは「米をザルに上げておく」や「力強く研ぐ」ことは推奨されません。米が割れて食感が悪くなりますし、余分なデンプンが溶出し、ベタベタとした炊きあがりになるからです。
しかし、中華粥の場合は別。普段とは逆の調理工程を踏むことで中華粥らしい食感をつくるのです。
米の一部が割れてもいいので力強くもみましょう
鍋に水と米を入れ、中火にかけます。沸騰してきたら弱火に落とし、30分煮ます。吹きこぼれるので鍋のフタはしません。焦げる心配はないので、タイマーをかけて放置しても大丈夫です。
鍋の厚みも特に関係ありません
これはオプションですが、30分経ったら泡だて器で軽く混ぜます。さらに米が割れ、煮汁と米に一体感が出ます。
泡だて器がなければこの工程は省いて結構です
この状態で白粥として食べることもできます。日本の米は甘みが強いので、このままの状態でもおいしいもの。ただ、この状態ではじつは未完成。さらにおいしく食べるにはここで一旦、冷まします。
このまま、ごま塩を振って食べるのもおすすめです
冷めると米が水分を吸って重たくなります。ここまでが仕込みで、このあと仕上げの加熱をするのが2つ目のコツ。
この状態で小分けにして冷凍しておけばいつでもお粥を楽しめます
水400mlに顆粒のガラスープを加え、中火にかけて沸騰させます。顆粒のガラスープの代わりに顆粒の貝柱だしを使うと海鮮系のお粥になります。
ここで生姜の千切りなどを加えてもいいでしょう
沸いたところにさきほど仕込んだお粥を加えます。
冷凍した場合は凍った状態のまま加えて問題ありません
ひと煮立ちさせたら出来上がり。この状態になれば米はあまり水を吸わないので、夏は氷水に当てて冷やし、冷たい粥として楽しめますし、密閉容器に入れて冷蔵庫に保存しておけば朝粥として楽しむのにも便利です。
中火で煮立てます
中華粥は単体で味わうのではなく、薬味や漬物と一緒に味わいます。今日は日本風にザーサイを添えてみましたが、豆腐丼のときにつくったザーサイ豆腐(『食欲落ちる猛暑に簡単絶品「豆腐丼」パッと作る技』参照)もよく合います。
出来上がり
他にもパクチーや青ネギの小口切り、ピータン、XO醤、揚げワンタンなどいろいろ添えるのも楽しいでしょう。中国ではお粥は朝ごはんに食べるもので、その他の時間にはあまり見かけないようですが、夜に食べるのも胃腸の負担が少なくていいものです。
(写真はすべて筆者撮影)
(樋口 直哉 : 作家・料理家)
January 06, 2024 at 10:00AM
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