「我々はほんのわずかな大気から酸素を生成しているということは言っておきたい。本当に薄い大気だ」とヘクトは述べ、「ちょうど地球の表面から10万フィート(約30キロ)の高さにいるようなものだ」と付け加えた。
MOXIEチームは、火星の環境で酸素を生成する装置を設計する際に、難題に直面したという。
「火星は難しい。まず火星到着以前に、あらゆる過酷な環境に耐えられるものにしなくてはならない」とヘクトは述べた。
MOXIEは宇宙の真空や放射線に耐えなければならないことに加え、パーサヴィアランスに搭載できるようにトースターほどの大きさにする必要があった。
火星探査機「パーサヴィアランス」とそれに搭載された科学機器を示したイラスト。
NASA
それでもこの装置は実力を証明したとヘクトは言う。
「短時間だったが10.4グラムの酸素を生成するという記録を樹立した」
この装置は、1時間に6グラムの酸素を生成するように設計されているという。
「我々はこの装置を限界近くまで稼働させた。そして本当にうまくいった」
MOXIEは二酸化炭素を一酸化炭素と酸素原子に分解し、酸素原子を結合させて人間の呼吸に使える酸素を作り出す。
2022年1月以降、チームは1カ月に1回程度のペースで実験を続け、これまでに計11回、この装置を使用した。それによってトラブルシューティングが可能になり、装置の電圧を一定に保てばより安全に運転できるようになることも分かった。
「与えられた条件に対して電圧が高くなりすぎると問題になる」とヘクトは言う。
「そうなると一酸化炭素を作る代わりに、炭素を作り始め、それが装置をダメにしてしまう。ゲームオーバーだ」
未来の火星探査では、超大型のMOXIEが使えるかもしれない
探査機パーサヴィアランスは、2021年2月18日に火星に着陸して以来、赤さびた地表の撮影や岩石の採取、「自撮り」などを行ってきた。
そしてMOXIEで火星の空気から酸素の生成が可能だと初めて証明したのは2021年4月のことだ。新しい研究は、この装置が火星でコンスタントに酸素を生成できるかどうかをテストするために行われた。また、装置の後継機をいかにして堅牢なものにして、将来の火星での有人探査に役立てられるのか、それを探ることも目指している。
「この研究は、将来のMOXIEに情報を提供するために行っている。そしてその将来こそが本当に重要なのだ」
今回の実験規模を約100倍にした大規模版MOXIEであれば、数百本の木と同じ速さで酸素を生成できるだろうと研究者らは考えている。
ヘクトによると、この技術の規模拡大はそれほど難しくはないという。他の惑星でもMOXIEで確実に酸素が生成できると証明されたことから、ヘクトと彼のチームは、将来の火星探査にこの技術の大規模版が活用されることを望んでいる。
「火星に人を送り、自給自足することを考えると、これは非常によいニュースだ」とヘクトは述べた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
September 12, 2022 at 08:30AM
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