「カオス(Chaos)」「カレンソロジー(Curensology)」などを展開するエレメントルールが、初のメンズブランド「ヒューベント(HUM VENT)」を立ち上げ、デビューコレクションとなる2022年秋冬コレクションの展開を7月から公式ECサイトで開始した。ディレクションを担当するのは、ウィメンズブランド「カオス」ディレクターの櫛部美佐子。古着のエッセンスを取り入れながら、女性視点を取り入れたデザインアプローチを試みている。2シーズン目を迎えるヒューベントの現在地とこれからについて、櫛部氏に話を聞いた。
「HUM VENT」2022年秋冬コレクション キーヴィジュアル
Image by: HUM VENT
— ADの後に記事が続きます —
ーエレメントルール初のメンズブランドとして、「ヒューベント」を立ち上げた経緯を教えてください。
長年女性の服を手掛けてきた中で、私自身、いつかメンズウェアのデザインにも挑戦してみたいという思いがずっとあったんです。ぼんやりと思い描いていたアイデアは以前からありました。そんな時、昨年の1月頃でしょうか、代表から初のメンズブランドを立ち上げる構想があることを伺って。「いつかメンズブランドを手掛けたい」という夢があることを知ってくださっていたので、今回お声がけ頂きディレクターに就任することとなりました。
ー昨年の年始から本格始動し、2022年秋冬コレクションでデビュー。かなりスピーディーだったんですね。
そうですね。年始にプレゼンを始めて、そこから製作、ヴィジュアル撮影など...今思えばかなりタイトだったと思います(笑)。
ーチーム体制は?
ディレクターの私、デザイナー、生産、営業、プレス、メインで動いているのはこの5〜6人ですね。少数精鋭で運営しています。
ーブランド名の由来は?
「人=HUMAN」と「熱水噴出孔=VENT」の造語です。深海に広がる熱水噴出孔は、生命が一番最初に誕生したと言われている大地の亀裂のことなんですが、これを知った時すごく奇跡的なことだなと感じて。さまざまな偶然の積み重ねの先に、生命の誕生という必然があったと思うととても神秘的ですよね。「ファッション」というクリエイションは本来、そんな神秘性を孕んできたと思うんです。私たちは「考えられた偶然性の服」と言っていますが、人々を魅了し、時代を超えて長く着てもらえるような、"不変的"な服を作っていきたいと考えています。デザインのインスピレーション源は、生命の誕生と密接に結びつく「海」からピックアップしています。
ーヒューベントは「クラシック」「インフレクション」「ファンクション」の3つをコンセプトに掲げていますね。
「不変的な服」の製作を試みるにあたり、古着のルーツを紐解きデザインに落とし込めないかと考えました。私自身、メンズの無骨な感じの古着やミリタリーウェアが大好きで、私服のスタイリングにもよく取り入れていて。そんな時代を超えて愛され続ける古着を起点に、今の時代の空気感を反映したディテール、現代人が求める機能性を散りばめています。ただヴィンテージウェアの当時のディテールをそのまま再現するというよりも、古着の持つ雰囲気であったりエッセンスをどうデザインに反映していくか、といったことを意識してデザインしています。
加えて、私自身が思う「こういう雰囲気の服を男性に着てみてほしいな」といった女性目線のデザインをアクセントに取り入れたり、男女問わず着られるよう幅広いサイズ展開にしたりと、従来のメンズブランドの型にとらわれない服作りを心掛けました。
ーこのブランドに込めた想いは?
現代に生きる男性の方々が無理せず等身大で自分らしく着られる服を作りたいという思いがありました。ヒューベントのブランドの世界観を知ってもらうためのデビューとなる2022年秋冬コレクションは、あえてシーズンテーマは設けず、3つのブランドコンセプトを意識したアイテムを作り上げています。
ーヒューベントのシグネチャーアイテムは?
シグネチャーアイテムは「Pコート」です。色や素材、シルエットを少しずつ変えながら、毎シーズン展開していく予定です。元々は海軍の防寒着だったPコートをはじめ、フィッシャーマンセーターや、ポルトガルの街 ナザレの漁師が着る服のチェック柄をあしらったアイテムなど、それぞれのアイテムのデザインには「海」にまつわるストーリーを落とし込んでいます。
ー2022年秋冬に登場したPコートはメルトン地を活かした綺麗なシルエットが印象的でした。
海軍の防寒着として使われていたタフなイメージや、動きやすさは残しつつ、シルエットを現代の人にも受け入れられるようアップデートしました。アイテム制作においては素材や生地選び、工場の選定までかなりこだわり抜いていて。今回のPコートでは、ホワイトカシミヤとタスマニアウールをブレンドしたヘビーメルトンを使用していて、深海を彷彿とさせる深いネイビーはブランドのシグネチャーカラーとして他のアイテムでも使われています。
ー特に反響の大きかったアイテムは?
暑い日が続いているので商品が動いていくのはもう少し先だとは思うんですが、先んじて関係者向けに行った展示会では特にオリジナルファブリックを使ったキャバリーツイルトラウザーの評判がとても良かったですね。サイドの切り替えを無くし、履いた時のシルエットの美しさを追求したアイテムで、男性だけではなく女性の方からも好評でした。そのほか、ホワイトカシミヤ混のウール原料を使用したブロックチェックのシャツや、ウール100%のタータンチェック柄のシャツ、40年代のデッキパンツを原型にオリジナルで作ったオーバーシルエットのオールインワンなども反響がありましたね。
ー櫛部さんにとって初のメンズブランドとのことですが、ウィメンズウェアの製作とは勝手が違う部分もあったかと思います。
そうですね、メンズウェアに関しては何もかも初めてで大きなチャレンジでした。ただ、実際作って完成させたから言えることかもしれませんが、根本的なクリエイションはウィメンズもメンズもそう大きく異なる訳ではないのかなと。
ーメンズウェアを作るにあたり特に意識した部分は?
「バランス感」ですね。着丈の長さや、着た時のシルエットやシワの付き方、トップスとボトムスを合わせた際のスタイリングなど、あらゆる視点から美しいバランスを追求しました。
ー櫛部さんから見て、ファッション感度の高い男性の方々がワードローブに求めることは何だと思いますか?
様々なトレンドを通ってきて、百貨店に並ぶラグジュアリーブランドのような上質なものにも触れてきた、目が効く本物志向の人が多いのかなと。素材感やシルエット、コレクションのストーリーなど、本物志向の方にクラフトマンシップを感じていただけるクオリティを追求していく必要があると考えています。
一方で、自分の好きなもの・こだわっている事がある程度確立されていると思うので、中々新しいものを取り入れるマインドになりづらいのではないかなと感じていて。周囲の男性を見ていると「ワードローブの幅が広がったら、もっと素敵になるだろうな...」と感じる場面もあるんです。ブランド選びにしろ、着こなし方にしろ、もっとフランクにファッションを楽しんでもらいたいというシンプルな思いがあります。「ファッションで冒険しちゃいけない」なんてことは決して無いと思うので。
ーヒューベントではどのような"冒険"を提案したい?
冒険といっても奇を衒ったデザインの服を着る必要はなくて、本当にちょっとしたことで変化を付けられたら素敵になるんですよね。例えば、いつも選ぶシャツよりも着丈の長さが少し長めのものを選んでみるとか。ちょっとしたスタイリングの変化で一気に今っぽくなると思うんですよね。
ー22年秋冬、23年春夏のヴィジュアルは写真家 水谷太郎さんが撮影を手掛けたそうですね。
実店舗を持たないブランドなので、ブランドの世界観やコレクションの質感をどのように伝えていくべきか、非常にこだわった部分でした。見た人の印象に残るヴィジュアルやサイトデザイン、SNSの活用など、ブランドの価値を最大限表現できる訴求方法は非常に重要だと感じています。初めてお仕事をご一緒させて頂きましたが、ブランドのコンセプトを伝えると瞬時に理解してどんどんヴィジュアルのアイデアを出して頂いて。デビューシーズンに続き、今回もオファーさせて頂きました。
ー2シーズン目となる2023年春夏コレクションのテーマは?
テーマは「白鯨」。ハーマン・メルヴィルの長編小説で「白鯨」という作品がありますが、非常に希少な幻の生物なんです。そんな人々が魅了してやまない神秘的な存在をコレクションで表現できたら面白いのではないかと考えて。クジラからインスパイアされたボリュームのあるシルエット感のコートや、クジラのお腹の縞模様から着想したスウェットなどを作りました。色味やシルエットで白鯨を表現しているので、今シーズンは前シーズンと比べてホワイトを基調としたアイテムが多くなっています。
ーファーストシーズンから小物類も展開していますね。
秋冬はニットキャップ、バラクラバ、サスペンダー、ソックスを販売中です。今後は、ファッションアイテムだけではなく、ブランドの世界観をお届けできるものも作っていけたらなと考えています。
ー生地開発をはじめ、多様なアプローチができるのはウィメンズウェアを手掛けてきた経験があるからこそ?
そうですね。私自身、かなりの素材フェチで質感に妥協したくない思いがあるので、数百単位の生地サンプルを見て、生地屋さんと話し合いながら試行錯誤していて。男性に納得して頂ける生地開発に注力するだけでなく、女性服で培った感覚的な生地の魅力を追求したりと、服作りにおいてさまざまな実験的なアプローチができるのはありがたい環境ですね。
ー直近で予定している取り組みは?
直近ですと、リテーラー様でのイベント開催などといった商品を実際に触れて体感して頂ける場を設ける予定があります。機会があれば顧客がしっかり付いた地方の個性的なセレクトショップへ出店するなど、ECを軸にしつつ各地で行うポップアップを通じてブランドの認知を広めていく計画です。
ー最後に今後のブランドのヴィジョンについてお聞かせください。
将来的にはショールーム兼店舗のような場所を開設したいと考えています。非常に上質なこだわり抜いたオリジナル生地を使用しているので、一つ一つのアイテムを是非手に取って頂きたいですね。ただ、一気にスケールを大きくしたいという気持ちもあまりなく、地道に一人一人のお客様と向き合って、本当に服が好きな方と長くお付き合いができるようなブランドでありたいと考えています。
■ヒューベント(HUM VENT)
エレメントルールによる初のメンズブランドで、ディレクションはウィメンズブランド「カオス」ディレクターの櫛部美佐子が担当。コンセプトは「Classic」「Inflection」「Function」。上質な素材と洗練されたシルエットで、自分のスタイルにこだわりを持った大人の男性に向けた服を提案している。7月には公式ウェブストアを開設。公式ウェブストアを中心に、卸販売やポップアップショップでの展開も予定。デビューコレクションではアウターやジャケット、ボトムスなど約25型を披露し、ヴィジュアルの撮影は写真家 水谷太郎が手掛けた。
September 09, 2022 at 04:30PM
https://ift.tt/epcAkdU
女性視点で作るメンズウェア 古着のエッセンスを落とし込んだ「ヒューベント」のクリエイション - FASHIONSNAP.COM
https://ift.tt/yRA6tDJ
Mesir News Info
Israel News info
Taiwan News Info
Vietnam News and Info
Japan News and Info Update
Bagikan Berita Ini
0 Response to "女性視点で作るメンズウェア 古着のエッセンスを落とし込んだ「ヒューベント」のクリエイション - FASHIONSNAP.COM"
Post a Comment