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旅先の不便、当事者が解消 真にバリアフリーの宿を作る - 朝日新聞デジタル

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 和歌山県那智勝浦町にバリアフリーの宿を作ろうとしている女性がいる。きっかけは、自身も障害がある中で感じた旅先での不便さだった。障害のあるなしにかかわらず、気軽に旅行を楽しめる宿にすることを目指している。

 勝浦漁港の中で、飲食店などが並ぶ商業施設の「にぎわい市場」。そこで定食屋を営む片原桜子さん(37)は両脚にマヒがあり、車いすや杖を使う。店では棚などに手をついて動き回り、料理を作る。

 同町で生まれた。小さい頃から、海外の写真を見て世界への興味を膨らませた。地元の路地を歩き回り、地図帳を眺めては他の場所へ行った気分を味わうのが好きだった。高校卒業後、1カ月間、ニューヨークにホームステイ。「人種のるつぼ」と呼ばれる場所を自分の目で見たかった。その後もヨーロッパやアジアを旅行した。

 2011年、事故で腰を強く打った。脊髄(せきずい)を損傷し、両脚にマヒが残った。悲しかったのかつらかったのか覚えていない。入院した病院で同室だった女性から、「ロウ人形みたいな子が来た」と思われたほど、表情が消えていたという。

 子どもの頃から料理が好きだった。事故当時は大阪の日本料理店で修行をしていた。店の大将からは「戻って来い」と励まされた。元のように厨房(ちゅうぼう)に立つことが目標になった。

 リハビリを続け、杖を使ったり壁を伝ったりして歩けるようになった。約半年の入院後、職場に戻った。しかし、重い物を運んだり、高いところにある物を取ったりすることができなくなった。事故前のような仕事が難しくなり苦しんだ。体力的な限界も感じ、店を辞めた。

 一方、思い通りに動けなくても旅行は心の支えであり続けた。事故から数年後に、マラソン大会の運営を手伝うため夜行バスや鉄道を使って宮城県へ。「『できた』という成功例になったのが大きかった」。行く前は不安だったが、経験してしまうと自信になった。その後は車いすで国内外を旅した。

旅行は楽しかったけど…

 旅行は楽しかったが、不便さも感じた。予約サイトに「バリアフリー対応」と記していても段差などがあって当事者として使いにくいことも多く、事前に電話で確認する必要があった。水回りが狭かったり、1人部屋が少なく料金が高くついたりした。海外では街中の人が気軽に助けてくれたが、国内では見過ごす人も多いと思った。設備だけでなく、心理的な壁も感じた。

 地元に帰り、2年前から「にぎわい市場」で店を開いた。店には多くの観光客が来る。中には障害がある人もいて、旅行中に不便さを感じていると知った。「障害の有無にかかわらず、自由に旅行して楽しいと思ってもらえる場所になったら」。自分の体験を生かしたバリアフリーの宿を作ろうと決めた。

 宿は町中心部に新築する。ワンフロア貸し切りにするつもりだ。段差をなくすのはもちろん、車いすでも入れるシャワー室と、手すりやシャワーチェアを備えつけ、起き上がりやすいようにモーターベッドも入れようとしている。費用がかさむ分を少しでも埋め合わせようと、10月上旬からクラウドファンディング(CF)を始めた。2週間ほどで目標の80万円を上回り、現在は約120万円が集まっている。

 お金の支援だけでなく、「こういう設備も採り入れて」という意見も集まる。「自分にはない障害がある人からの情報に教えてもらうことも多い」。オープンは来年春を目指す。「バリアフリーの宿のモデルとして作りたい。観光の街、那智勝浦に新しい風が吹いたら」と願っている。

 CFは11月30日まで。サイト「MOTION GALLERY」(https://motion-gallery.net/projects/nachikatsuura_UD/collectors?page=2別ウインドウで開きます)から。(藤野隆晃)

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November 04, 2020 at 12:41PM
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