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東京都医師会で作る、人と医療をつなげるICT - 日経メディカル

tsukuru.prelol.com

 医療情報のネットワーク化についてはこれまで、補助金をベースとした構築が進んできた。だが、その多くは巨額な費用をかけてきたにも関わらず十分に活用されてこなかった。そんな中、2018年11月から、東京都医師会を中心とした新たな医療情報ネットワークの試みが始まっている。既存の医療情報連携システムと何が違うのか、東京都医師会理事で目々澤医院院長の目々澤肇氏に話を聞いた。

めめざわはじめ氏○1981年獨協医科大学卒。日本医科大学第二内科、スウェーデン・ルンド大学実験脳研究所、日本医科大学付属千葉北総病院などを経て、1999年より現職。また現在、東京都医師会理事も務める。

──東京総合医療ネットワークとはどのような試みなのでしょうか。

目々澤 病院と診療所、きちんと結ぼうという東京都医師会の試みだ。参加している医療機関は病院、診療所の関係なく、電子カルテ情報のうち、処方内容注射内容検査データを閲覧できる。病名やサマリーデータなどは今後の課題だ。とりあえずは一番重要な処方データが共有できるので、ある程度の医療ニーズは満たされるはずだ。

 NECや富士通は、それぞれの電子カルテを利用しているユーザーに対して、各社が持つサーバーを介して診療情報を共有する仕組みを持っている。だが、メーカーが異なると情報を閲覧できないのが問題だった。そこでまずはメーカーごとの診療情報を当該メーカーのユーザーでなくても見られるようにし、10月からはNECと富士通がそれぞれ持つデータセンターを接続、患者を名寄せして相互参照できるようにする。専用のサーバーやポータルを設置しないため費用を抑えることができ、会費で持続可能なネットワーク運営ができる。現在、ソフトウエアサービスやSBS情報システムのデータも接続できるようにする予定だ。

 最初の段階では、メーカー間の利害が一致せずに大変だった。だが、互いにつなぐ必要があることを理解してもらい、現在は細かいすり合わせも進んでいる。複数のカルテに登録された同一患者の名寄せも富士通の技術を使ってできるようになった。やはり病院向け電子カルテとして大きなシェアを持つ2社がコラボレーションしてくれたというのはとても大きい。

 現在、国が様々な同様の実証事業を行おうとしているが、基本的には我々が行ったことと同じ仕組みのはずだ。かつ、我々は総務省などの実証事業ではなく、東京都医師会や東京都病院協会などによる事業として行っている。地域医療支援の補助金で、東京都から年度ごと2000万円前後の補助は受けているが、後は参加する医療機関などの会費で運営している。あまりお金をかけずに既にあるものをうまく組み合わせることで持続可能なシステムの構築を目指している。

 我々が目指すデジタルの世界は、電子カルテを入れる以上はネットワークにつないで、患者さんたちの不利益にならないように注意しながら、患者が病院を受診した際にかかりつけ医のデータが見られるように情報共有を進めること。診療所と病院を行ったり来たりすることをサポートする仕組みにできればと思っている。まだ参加しているのは11病院だが、今までのように病院と診療所が1対1の関係でつながるのではなく、病院間がつながり、そこに診療所も参加することで多対多の関係になる。患者をどこに紹介してもそれなりに情報共有できるようになるだろう。

 あちこちでネットワークの形の整備は進んでいるが、各ネットワークで完結してしまっている。私はその垣根を壊したい。垣根さえなくなれば、国中がすべてつながる世界も見えてくるはずだ。また、“コロナ禍”でわかった日本の医療システムの大問題が連携をとる方法が、そこら中アナログのまま放置されているということだ。これも東京総合医療ネットワークが問題解決の糸口になっていると信じている。


──先生ご自身、東京都医師会で東京総合医療ネットワークとは関係なく、さまざまなITツールを用いてこられたと伺っています。

目々澤 AI問診システム「Ubie」の第1号ユーザーだったり、電子聴診器「ネクステート」をいち早く導入したりしていた。もともと趣味みたいな感じだ。Ubieについては、ホームページに問診票のリンクが貼ってあって、患者には来院前に問診できるようにしているほか、他の医療機関でも活用できるようにいろいろと活動中だ。

 私の専門は頭痛などの神経内科だ。頭痛の診療は「これとこれが認められると偏頭痛。だが、このようなことがある場合は診断をつけてはいけない」というのが決まっている。また、我々が知りたいのは頭痛発生時の話や性状だが、患者は現在の痛みのことなどをずっと話したがる。Ubieを用いることで、患者は入力を行う過程において自分の痛みを自己分析できるというメリットもある。医師側からのメリットとしては問診時に重要なことを聞き忘れることもない。現在、UbieはAI問診を院内システムだけでなくWeb上でも使えるものとして提供を始めており、これを共用できるサービス展開を考えている。これは院内のデジタルトランスフォーメーション(DX)に留まらず社会的ソリューションとしてのDXとなりうるものと考えられる。

 将来的にはUbieなどの患者情報が、そのまま電子カルテに反映され、その情報がすべての医療機関で共有するような仕組みができればいい。そのためには、国が電子カルテについてきちんとした枠組みを作り、長期的なビジョンを描くことではないか。それができていれば、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)でもマイナンバーできちんと管理したうえで保健所・医療機関で情報共有できていたはずだ。

 例えば、患者が県境をまたいで2つの医療機関で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に陽性になると、それが同じ人だということを把握するのに苦労してりする。国が絡むならば、やはり1人のデータは1つのデータベースできちんと作ってほしい。それができていれば、現在の混乱はないのではないか。逆にそのような仕組みを作れなければ、日本の医療は進んでいかないだろう。いくつもの似たようなシステムが乱立することは開発費のムダに繋がり、さらに医療機関側も複数のシステムに同じことを入力するというばかげた労力を使わされることになる。ICTを入れて余計な手間が増えるという本末転倒なことになってしまう。

──COVID-19のまん延は開業医のICT化にも影響を与えていると言えるのでしょうか?

目々澤 東京の医療機関からは、まだHER-SYSの利用が出来る状態が整えられていない。これは行政と保健所の都合だ。これでは新型コロナウイルス感染症患者の自宅療養者を保健所に代わって取り扱うこともできない。また、都内の診療所では東京都と集合契約を結んで唾液検体によるPCR検査が出来るようになった。これは行政検査なので毎日東京都へ報告しないとならないのだが、その方法がエクセルで作成された帳票に当日分の結果を書き込んでメール添付で送付するという前時代的なものとなっている。これを毎日実行させられるのは大変な労力だが、このことが開業医をPCの前に座らせる時間を作るチャンスにもなっている。

 新型コロナウィルス感染症対策として始まった電話再診もしくはオンライン診療に関する一時的規制緩和や、ICT機器の導入への補助金もついたことなどから、開業医からのICT技術に向ける再認識が起こっている。おりしも2021年度から始まるオンライン資格確認も医療ネットワークの再整備のきっかけとなる可能性を秘めている。この1年間で医療ICTに関わる相当なパラダイムシフトが起こり、結果として開業医におけるDXが進化するのではないか。

 日経メディカルと日経BPの技術系デジタルメディア日経クロステックでは、このほど共同で「医療はDXでどう変わるか?」と題した連続のオンラインワークショップを開催します。医療とIT・データのそれぞれに詳しく具体的な取り組みを進めている5人の有識者に登壇いただき、ワークショップ参加者との意見交換を中心とした試みとなる予定です(参加費は無料)。

 9月15日は目々澤氏を迎え、東京総合医療ネットワークについて議論を進めていきます。


第1回:新型コロナと医療データ活用の未来

2020年8月27日(木)19:00~20:00
慶應義塾大学医学部教授
宮田 裕章

第2回:在宅医療におけるデジタルトランスフォーメーション
2020年9月2日(水)19:00~20:00
鉄祐会祐ホームクリニック理事長/インテグリティ・ヘルスケア代表取締役会長
武藤 真祐

第3回:厚労省が推進するデータヘルス改革とオンライン資格確認
2020年9月9日(水)19:00~20:00
厚生労働省保険データ企画室長
大竹 雄二

第4回:東京都医師会で作る、人と医療をつなげるICT

2020年9月15日(火)19:00~20:00
目々澤醫院院長/東京都医師会理事
目々澤 肇

第5回:COVID-19で医師、患者の考え方はどう変わったか

2020年9月24日(木)19:00~20:00
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー ヴァイスプレジデント
大重 隆

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August 27, 2020 at 12:30AM
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