現在は招待制の音声チャットSNS「Clubhouse」が日本で大きな話題になってから約1週間。当初はClubhouseについて語っているClubhouseルームばかりだったものの、次第に登壇者をブッキングして開催されるイベントや対談、作業中の雑談部屋、自作の詩の朗読や合唱といったように、目的をもってルームを開く人が多くなってきました。 【その他の画像】
その一方で、興味のある人が話しているのに極端に居心地が悪く、その場に止まりたくないルームも目立つようになっています。 乱暴な言葉で話したり、非常識なテーマを選んでいたりといったルームは論外ですが、目的をもって真面目に開いているのに運営に不慣れなためにオーディエンスを不快にしているもったいないケースも中にはあります。 そこで、Clubhouseルームを開くときに失敗しがちなポイントに着目し、それらを反面教師として居心地のよいルームを運営するためのベストプラクティスについてみていきましょう。Clubhouseルームの居心地を悪くする3つの「罪」
聞いていて居心地の悪いClubhouseルームにはいくつかの共通点があります。モデレーターがルームの進行を掌握できておらず、オーディエンスと気持ちがずれてしまっているときは、大きく分けて次の3つの原因が考えられます。 1. モデレーターはいてもモデレーションをしていない Clubhouseではルームを最初に開いた人や、指名されて他のユーザーを登壇させる権限を持っている人のことを Moderator (モデレーター)と呼びますが、この人は壇上の議論の進行を整理する役割「モデレーション」をおこなうことが期待されています。しかし往々にして、モデレーターがモデレーションをしていないためにルームの雰囲気が悪くなっているケースがあります。 雑談部屋のように無秩序な会話を楽しむケースもありますが、イベント形式で進行しているルームの場合はモデレーションが必須です。 一部の人がマイクを離さずに喋りっぱなしになったり、関係のない話題に脱線してばかりといった場合に、モデレーターがそれを整理して、場合によっては介入してオーディエンスに戻っていただかないとオーディエンス側は苛立ちがつのります。 2. 無意味に会話がダラダラと続いている 無駄話のルームではなく、テーマや目的があって開いたルームの会話がいつまでも終わりが見えないまま居酒屋トークのようにループしていると、オーディエンスは疲れてしまいます。 本人たちは目的感をもって話しているつもりでも、途中からルームに入ってきた人が何について話しているのか分からず苛立つ場合もあります。Clubhouseのルームはいつでも入退室が可能であることを念頭に、会話が伝わるように話すことを意識しなければ、オーディエンスは滞在してくれないでしょう。 3. 登壇者とオーディエンスとの間に壁を作ってしまう 登壇者がオーディエンスを置き去りにして身勝手な話をしている場合や、登壇者は「特別」でオーディエンスは「呼ばれていない人々」と言わんばかりの上下関係を生み出す雰囲気があると、聞いている側の気持ちは一気に冷めてしまいます。 オーディエンスの雰囲気は、開いたルームの目的、登壇者がどれだけ著名な人か、どれだけ人が集まっていて、どんな会話を交わしているか次第で複雑に変化するものです。しかもClubhouseでは、登壇している側がオーディエンスの拍手やリアクションをみることが現状できません。そこで、部屋に入ってきた人が白けて次々に抜けていないかといった間接的なシグナルに注意してこの雰囲気を読み取る必要があるのです。 では、こうした罪作りなルーム運営を避けるためにはどういった点に注意すればいいのでしょうか? 筆頭モデレーターを決めておく ルームの進行を任される筆頭モデレーターを決めておくだけで、雰囲気は大きく変わります。モデレーターが複数いる場合でも、 ・どのオーディエンスを登壇させるか ・だれが次に発言するか ・話題の流れやタイムキーピングの調整 といった管理を筆頭モデレーターが行うだけで、オーディエンスにとって居心地のよいルームになります。無秩序なルームが、現実のイベントのように流れのある場に変わるからです。また、それ以外の登壇者は筆頭モデレーターの議事進行を妨げないようにしているだけで、ルームの混乱の大半は解消されます。 筆頭モデレーターは、ルームの会話が混乱してきたら一部の人をオーディエンスに戻すといった判断もしなければいけません。これはその人を仲間外れにするためではなく、また重要な発言があったら手を上げてくださいといったように発言を整理するためのものだと説明するのも重要でしょう。 Clubhouseの人気が急速に拡大したことで、日本時間の夜は多くのルームで登壇者がルームから落ちてしまうケースがみられます。こうしたときには、筆頭モデレーターに次ぐ立場の人を決めておくことで、ある程度ルームの混乱を収拾することも可能になります。 マイクの回し方に注意する 先行してサービスが開始していた海外のClubhouseルームでのマイクの回し方も参考にしてみましょう。 海外のルームでよく見られる光景ですが、登壇者が大勢いる場合でも筆頭モデレーター以外は基本的にマイクをミュートにして指名されない限り不規則な発言はしません。 発言をしたい人は、前の人の発言が終わったタイミングで「私の意見をインプットしてもよろしいですか?」「補足してもいいでしょうか?」「ちょっと私の経験を話させてください」といったように発言したい旨を告げます。 筆頭モデレーターはそれに対して「どうぞどうぞ」「もちろんですとも」と促すか、発言したい人が複数いる場合は順序を指定します。登壇者が長くしゃべりすぎている場合には、「他の登壇者の時間を大切にしてほしい」とやんわりと釘を差したうえで、要点の整理をおこないます。 登壇者の発言が終わったら、筆頭モデレーターが「貴重な意見をありがとう」「あなたは大事な点に触れてくれましたね」といったように発言者に感謝を述べるのも、海外ルームで見られる美しいやりとりです。 ここまで形式にこだわる必要はないかもしれませんが、まるで本物のステージの上でマイクを回しているように、ペースに注意しつつ登壇者に公平に発言の機会を与えることでルームの雰囲気は良くなります。 時間の使い方は大切に イベント的なルームを開催しているならば、ルームを何時まで開いておくつもりなのかあらかじめ想定しておきましょう。急に面白い登壇者が現れて時間が伸びる場合も、「ぜひこのかたにお話をうかがいたいので30分延長しましょう」といったように、オーディエンスに区切りを宣言します。 こうした宣言をしなくても、オーディエンスの数は見かけ上減らないかもしれません。しかしその心証は悪くなっている可能性があることは意識しておきたいところです。 オーディエンスが減らないのは、ルームに人気があるからとは限りません。有名人が発言しているのを見逃したら損をするかもしれない、大勢の人が見ているのに自分だけ去るのは寂しいといった、FOMO(Fear of missing out)の気持ちで残っていることもClubhouseでは多いからです。 それほど面白い会話ではなくてもFOMOでルームに縛り付けられているオーディエンスの居心地は悪くなります。疲れきるまでルームを続けるのではなく、「ではまた明日集まりましょう」といった具合に未来へとオーディエンスをつなぎ、すこし物足りないくらいのタイミングで幕を引くのもモデレーターの腕の見せどころなのです。 定期的にオーディエンスに語りかける 最後に、Clubhouseの特性に応じたオーディエンスへの呼び掛けも意識しておきましょう。 Clubhouseのオーディエンスは最初からいるとは限りません。途中からでも入室し、途中に離席してもういちど戻ってくる人も大勢います。登壇者は同じテーマでずっと話しているつもりでも、オーディエンスには話が見えなくなっていることも多いのです。 ときどきルームの目的を振り返ったり、登壇者を再度紹介したり、途中から入ってきた人にも話が見えるようにこれまでの流れを振り返ってまとめたり――といった気遣いも、Clubhouseならではのモデレーターの仕事です。 また、こうしてオーディエンスへ直接語りかけることで、登壇者とオーディエンスの間に生まれる無言の壁を取り払うことができます。登壇者とオーディエンスとの間にはもともと不公平さが存在することを意識して、オーディエンスの気持ちに寄り添った進行に努めましょう。 Clubhouseには瞬時に大勢の登壇者とオーディエンスをつなぐことができる大きな魅力があります。簡単につながることができるからといって、そのつながりに疲れが生まれないわけではありません。 時間をともにすることができる感動を大切にし、Clubhouseに疲れないようにするためにも、オーディエンスを魅了するルーム運営に注意してみてください。 (堀正岳)
February 04, 2021 at 02:51PM
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