そもそも「料理」は、どこからどこまでが「料理」なのか?? そんな着眼点から自分と他者のあいまいな境界を探るアーティスト、永田康祐さん。 永田さんは、素材が調理されて人の口に入るまでには長いプロセスがあり、そこにはたくさんの人やネットワークが介在していることに着目。文化や歴史を読み解きながら、料理の神髄にせまるビデオエッセイ作品を発表している。 永田さんみずからが厨房に立ち、とり肉やキノコ、ニンジン、アスパラ、タコなど多種多様な食材を使ってフルコース料理を作るなか、あぶりだされていく人間の身体の強さと弱さとは?
どこからどこまでが「料理」なのか
―永田さんの作品は料理がモチーフとなっていますが、これは実際に永田さんが作っていらっしゃるんですよね? そうです。 ―料理はいつから? 上京してから、週に2~3日は自炊でした。料理が趣味だと実感したのは大学院を修了して働き出してからです。食べることが好きで、YouTubeを観たり本を読んだりして独学で調理方法を覚えていきました。 ―性に合ったんですね。 いまは制作のためのルーティーンとしても重要な気がしています。 普段の制作は映像や写真を主に用いていて、僕自身絵画や彫刻のバックグラウンドがあるわけでもないので、作業はだいたいデスクで完結していて、絵を描いたり粘土をこねたりといったことはしていないんです。つまり、展覧会のときだけ展示に必要な素材と向き合っている。 そうすると、どんどん素材から自分の身体が離れていくような気がするんです。日々の生活のなかで実際に手を動かして何かを作る体験ができるのは料理くらいだから、僕にとって、普段の制作と作品を展示することのあいだのある種の緩衝材でもあります。 ―なるほど。この『Puree』(ピュレ)という作品名は、フランス料理の“ピュレ”のことですか?
はい。料理名でもあるし、食材をミキサーやすり鉢ですり潰す調理法のことでもあります。そのピュレを起点にして作ったのが、この34分くらいの映像作品です。実際に料理を作ったり食べたりしている映像に、僕自身が朗読する形でナレーションを付けています。一般にビデオエッセイと言われる形式の作品ですね。 ―これはどういったことを表現されているんでしょう。 《Puree》について説明するには、2019年に制作した《Translation Zone》についてお話しする必要があります。それは、日本や中国といった特定の文化圏に属する料理がある一方で、でも中国料理が日本料理に影響を与えていたり、その逆もある。ある文化と別の文化とを分割する境界とはなんだろう、と考えた作品だったんですね。 ―国が違えど似ている料理ってありますもんね。 どこからが日本料理でどこからが中国料理なのか。中国料理のなかにもたくさんの区分があるし、そういった境界ははたして確定できるようなものなのか。それを踏まえて、「料理はどこからどこまでが料理なんだろう?」「どこからが食べる行為なんだろう?」という、“料理”の境界について考えた作品が《Puree》なんです。 ―“料理”の境界? 「料理はどこからどこまでが料理なんだろう?」でいうと、たとえば、カツオ節で出汁を取ってお味噌汁を作るのは料理だと思えますけど、カップ麺にかやくとかスープの素を入れてお湯を注ぐのは直感的には料理じゃない気がしませんか? ―たしかに、そうですね。 その境目ってどこなんだろうと。カップ麺は調理済みのインスタント食品だからそれを準備するのは料理じゃない感じがするのだと思いますが、実際にはカツオ節だって、複雑な調理工程によって作られたものですよね。 釣ったカツオの内蔵を抜いて、塩茹でにして、燻製にかけながら乾燥させて、カビを付けて、乾燥させて、カビを削って、もう一回カビ付けして、そのカビを削ってまた乾燥させて……。その行程には煮たり燻製にしたりっていう調理が含まれているじゃないですか。 ―わかります。というか詳しすぎませんか……?(笑) 本格的な日本料理店ですらカツオ節は買ってくるのが当たり前で、カンナで削るところから料理が始まります。それ以前の行程は“製造”とか“加工”という言葉で呼ばれていて、料理とは切り離されている。一体料理はどこからはじまっているんだろうと。 ―その観点はおもしろいですね。 そこから派生して、次は「どこからが食べる行為なんだろう?」という疑問が湧いてきました。 たとえばホテルのビュッフェにあるローストビーフは、まず料理人が仕込みの段階で肉を切りわけますよね。それから加熱調理が行われる。さらにフロアにいる給仕人の方が一切れに切る。僕はそれをお皿に受け取って、自分の席でナイフとフォークを使って切る。それぞれ“切る”という行為は変わらないけど、じゃあどこまでが料理なんだろう、と。
February 12, 2021 at 06:04PM
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