マツダ『MX-30』のマイルドハイブリッド(MHEV)と電気自動車(EV)を比較試乗する機会を得た。短時間の試乗ではあったが、その違いははっきり感じられた。そして、2022年発売予定とするレンジエクステンダー(REX)モデルへの期待も大いに高まるものだった。
試乗コースは一般道と高速道路を組み合わせたモデルコースが設定された。総延長が29kmあまり。車両はMHEV、EVともに2WDモデル。天候は晴れで気温はMHEV試乗時で8度から9度。EV試乗時は11度だった。
回生協調ブレーキは玄人好み?
MHEVモデルは、マツダ安定のSKYACTIVエンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムが合体したe-SKYACTIV Gが搭載される。トランスミッションは電子制御6速AT(SKYACTIV-DRIVE 6EC-AT)だ。CVTではなくATというのも個人的には評価ポイントだ。マツダ独自のアイドリングストップ機構であるi-Stopも優秀。他社システムにありがちなエンジン始動の不快な振動がうまく抑えられている。
街中、高速道路ともにそつなく走ってくれる。電動パーキングブレーキのホールドモードをONにしておけば渋滞や信号の多い道でもブレーキ操作は楽になるし、改良されたベクタリングコントロール(GVC Plus)は、街中で駐車車両を避けたり、高速道路のレーンチェンジなどもストレスなくスムースに抜けてくれる。Bピラーがまったくないフリースタイルドアのボディも試乗コースで剛性不足を感じることはない。
ただ、注意したいのはブレーキだ。MHEVは回生エネルギーを利用するため、ブレーキペダルの操作はすべてバイワイヤーとなり、全領域で回生協調ブレーキとなる。通常走行でどこが回生ブレーキなのか油圧によるブレーキなのかわかるような制御はしていないが、強めのブレーキを踏むときは、すこしペダルを重く感じるかもしれない。これはEVモデルも同じ設定なので言えることだ。
感覚としては、負圧によるブレーキブースターがついていない車のブレーキペダルに近い。若干重いのだが、わかって踏んでいれば気になるレベルでないし、むしろしっかりブレーキを踏むことになるので悪いことではない。なお、競技車両は、足の感覚で細かく踏力を制御できるため、ブースターをつけないことが多い。
また、残念だったのは低速域の加速・動力性能だ。せっかくCVTではなくATを搭載しているのだから、もう少しダイレクト感のあるレスポンスがほしいところだ。高速道路の中間加速などは問題ないのだが、完全停止からの加速がちょっともっさりした感じなのだ。オートクルーズを設定していても、加速時のエンジン音が気になる。
そう感じたのは、じつはEVモデルを直後に試乗したからだ。モータートルクをもってすれば当然なのだが、MX-30 EVはMHEVより軽快で運転しやすい。坂の途中、コーナリング中などどんなシチュエーションでもアクセルを強く踏むと意識しなくても速度維持ができる。アクセルの踏みしろ十分な余裕があるため、むしろ繊細なアクセル操作がしやすく本当にストレスがない。もちろんオートクルーズに任せればステアリング操作に集中できる。
EVモデルは「シフトアップ」ができる
MX-30 EVには、他のEVにはない機能もついている。近年のEVには、回生ブレーキの強さを制御するスイッチやレバーがつく。電子制御ATのパドルシフトのようにステアリングコラムにつくものが多い。回生ブレーキを切り替えるため、シフトダウンでエンジンブレーキをかける機能に相当する。シフトアップに相当する機能はないので、左右のパドルの効果に違いはない。しかしMX-30のステアリングホイールパドルは、左がシフトダウンのように使え、右がシフトアップのように使える。
これまでのEVのパドルは、回生ブレーキの強弱を循環切り替え(1→2→3→1)か、速度などの走行条件で自動的に解除されたりリセットされるものが多かった。MX-30では、右パドルで切り替え段階を戻すことができる。たとえば、コーナー入り口で減速するときに、左パドルだけで減速するとする。そのまま立ち上がりで加速しようとすると、従来EVの場合回生ブレーキが強いままなので、加速応答が抑制されてしまう。このとき右パドルで回生ブレーキの強度を弱めれば、アクセルレスポンスがよくなる。つまりシフトアップで加速するという体験が得られる。
高性能なEVの場合、このようなシチュエーションを検知して自動的に回生ブレーキを切り替える制御も可能だ。普通のアクセルオフとスポーツ走行時のアクセルオフを検知して、回生ブレーキの強さを自動で切り替えれば同じ効果は得られる。しかし、MX-30 EVのパドルは、ドライバーが積極的に回生ブレーキの強さを制御できる。人馬一体を標ぼうするマツダならではの機能といっていいだろう。
GVCはEVとの相性もよい
専用プラットフォームによる低重心・高剛性という特性も、MHEVよりEVのほうが生きている。もともとEVとして設計されたMX-30なので、フロアにバッテリーパックを構造物として搭載することで、このプラットフォームはむしろ完成する。フロアは、車体のクロスメンバーとバッテリーフレームのメンバーの2重構造で補強され、リアアクスルの取り付け部ごと強化構造を形成する。リアはコンパクトカーでは一般的なトーションビーム方式だが、取り付け部分の剛性が高まることで、サスの動きが理想的になる。
トーションビームは、マルチリンクなど独立懸架に比べて安物、大衆車向けと揶揄する声もあるが、ボディがしっかりしていれば、むしろサスペンションの動きや車の動きが制御しやすく、リニアな動きになる。
ベクタリングコントロールは、モーター制御の特性を生かすe-GVC Plusに進化している。MHEVあるいはエンジン車と比較して、トルクの過渡特性がよいEVでは、コーナー出口のトルクが出しやすい。応答速度も上がるので、ターンアウトの加速によるリアへの荷重移動が速く多くなる。よりすばやく、精密にベクタリングを制御するようにチューニングされている。
コーナー出口やレーンチェンジでリアに駆動がかかったような動きを実現し、揺り戻しやふらつきをアクティブに抑えるような挙動を実現する。じつは高速道路のレーンチェンジを少し強めに試すことで、この挙動を体感することができた。
MHEVでもGVC Plusによる安定感は十分に感じられたが、EVのe-GVC Plusになると、4輪操舵のような挙動が強化された感じだ。レーンチェンジの最初のターンインの応答もよい。車線を移動した直後の挙動も安定している。このとき、フロアやタイヤは文字通り狙ったラインですぐに収束するのだが、その応答が速すぎるのかキャビンやルーフがワンテンポ遅れて収まるような感覚もあった(足元の挙動はしっかりしているので不安や違和感はない)。
LCAに捉われるのはもったいない
MX-30 EVは、バッテリー容量や航続距離のわりに価格が高いので、既存EVオーナーには魅力が伝わりにくいかもしれない。しかし、価格については3年後も55%という残価設定クレジットも用意されている。航続距離は日常の足ならまず問題になることはない。小容量バッテリーは、急速充電での時間当たりの充電効率はよい。車両重量も1.6トンとEVの中では軽い部類に入る。
今回の約31kmの試乗では、バッテリー残量およそ84%でスタートしてエアコンONの状態で69%で戻ってきている。高速道路ではしっかりアクセルを踏んで流れに乗る運転を心掛け、加速時や上り坂ではあえてトルクの出方をみるような運転もした。冬場の距離30kmのラフな運転でおよそ15%ほどバッテリーを消費。単純な電費換算で5.6km/kwhとなる。
GVCやオートクルーズなど各種ADAS機能との相性もよく、運動性能と運転のしやすさについてはEVモデルに軍配があがる。こうなると、発電用の小型ロータリーエンジンが搭載されるというレンジエクステンダーモデルもかなり期待ができる。航続距離のハンデがなくなるなら、もっとスポーティな走行性能設定も可能はなずだ。同じMXモデルを冠するロードスターに負けないホットモデルを、日本で無理なら北米や欧州で出してみてはどうか。
最後に、個人的な感想・意見となるが、EVにはあまり積極的ではないといわれていたマツダが、これだけ面白いEVが開発・市販できたわけだ。そう考えると、マツダの本質は内燃機関かEVかはじつは関係ない(ロータリーエンジンにはあるかもしれないが)。LCAにとらわれてバッテリー容量を自ら制限してしまうのはもったいないとさえ思う。MX-30 EVは非常にマツダ車らしいマツダ車だった。もっと積極的にEVを市場投入するべきではないだろうか。
February 28, 2021 at 07:00AM
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