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「ゲーム」は自分で作る。将棋の女流五冠・里見香奈氏とリコー発下着ブランド創業者が語る「挑戦」 - Business Insider Japan

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リコーの綿石早希氏と、将棋の女流五冠・里見香奈氏

リコーの社内ベンチャーとして未開拓の市場を目指す綿石早希氏と、将棋の女流五冠・里見香奈氏

「勝敗にはこだわらない」

女流棋士、里見香奈・女流五冠は淡々とした口調でこう話した。6歳で将棋を始め、「負けたくない」と将棋の世界にのめり込み、中学1年で女流棋士に。女流で5つのタイトルを持つ勝負師はいま、勝敗に一喜一憂するのではなく「目の前のことに集中する」ことが強さの秘訣だと説く。

自分の未来と社会を変えていこうとする人たちは、どのように道を拓いていくのか。

2020年からリコーの社内ベンチャーとして未開拓の市場を目指す綿石早希氏と、里見香奈氏に語ってもらった。

「負けたくない」から心境が変化

──将棋の世界は、歴史的に男性が多いと思うのですが、里見さんはなぜ、将棋の世界に進もうと思われたのですか?

里見香奈氏(以下、里見) もともと大の将棋好きだった父が兄に教えていたのを横で見ていて、自然に覚えたのが始まりです。兄が通っていた将棋道場にも一緒に通わせてもらいました。家族は「あれ、香奈もやるの?」という感じでしたが、反対はされませんでした。

将棋道場に女の子はぜんぜんいなくて、私一人。そんな中で同い年の男の子に負けると悔しくて悔しくて。男の子に負けたくないという思いで、のめりこんでいったところがあります。

将棋が大好きになって、続けていけるなら棋士になりたいと決断したのは小6の時でした。最初から職業として考えていたわけではなくて、続けていくなかで養成機関に入り、女流棋士になったという感じですね。

当初は、やはり頂点を目指すことを目標にしていました。タイトル(※)を獲得した後は、一時、目標を失ったこともありました。でも、そこで芽生えてきたのが、男女関係なく「強くなりたい」という思い。それがあったから、棋士(※)になることが次の目標になりました。

※女流棋士のタイトルは全部で8つある。里見香奈氏は「清麗」「女流王座」「女流王位」「女流王将」「倉敷藤花」の5つのタイトルを獲得している。

※将棋界には男女を問わない「棋士」と、女性だけが対象の「女流棋士」という2つのプロ資格がある。2022年10月時点で棋士になった女性はまだいない。

自分に制限を設けない

里見香奈さん

里見香奈(さとみ・かな)将棋の女流五冠。6歳から将棋を始め、12歳で女流2級としてプロデビュー。16歳8カ月で初のタイトルを獲得して注目を集めた。女流棋士と並行して奨励会でも活動し、21歳で女性初の三段に昇段。現在は8つある女流タイトルのうち5つを持つ。1992年3月、島根県出身。30歳。

綿石早希氏(以下、綿石) 里見さんのご両親は、男の子だから、女の子だからと区別しないで育ててくれたのですね。

里見 そうですね。私は兄について回っているような子どもだったので、遊び友達も男の子が多かったです。スカートもぜんぜん履かなかったみたいで。だけど、両親に「もう少し女の子らしくしなさい」とか言われたことはありませんでした。そのおかげで今があるのかなと思います。

綿石 私は逆に、男女の役割がはっきりと分かれている家庭で育ちました。

私にも兄がいますが、兄は遅くまで遊んでいてもいいけど、私は「女の子だから早く帰って家の手伝いをしようね」とか、「女の子はそんなに勉強をがんばらなくていい」と言われていました。私は「なんでお兄ちゃんはいいのに、私はダメなの!」って反発しながら育ってきたものの、潜在意識の中で「女性らしさ」が刷り込まれていました。

それに気づいたのは、2015年にリコーアメリカに出向した時です。

ITシステムをお客様に提案する仕事をしていたのですが、アメリカ人女性の上司から「もっと前に出なさい」「もっと自信を持ちなさい」というフィードバックをたくさん受けたんです。知らず知らずのうちに「女性は控えめであるべき」という女性像に囚われていて、その殻を打ち破ることに非常に苦労しました

でも、少しずつ仕事の中で自信をつけて、自分で設けていた制約を取り払い、夢に挑戦できる強さを持つことができました。

日本ではいまだに共働きでも家事のほとんどを女性が担っていたり、期待される女性像に苦しんでいる人が少なくありません。世界でもいまだ多くの女性が慣習という呪縛に縛られていると感じています。そこで、RANGORIE(ランゴリー)」というインド人女性向けの下着ブランドを立ち上げることにしたんです。この事業を通して、インド人女性を慣習から解放したいと取り組んでいます。インドに限らず、女性がこうした制約から解放される社会になればいいなと考えています。

里見 将棋界は徐々に女性人口が増えてきました。男性が多い将棋の世界でも、頑張る女性が増えてきたことで雰囲気が変わってきたと感じますね。

一方で、以前に比べたらだいぶ解消されてきたものの、都市部と地方の情報や機会の格差は依然として残っています。私の将棋の拠点は東京と大阪ですが、子どもの頃は自宅のある島根県から通っていたので、移動のための金銭的な負担もそれなりにありました。それに勉強するための道場は、東京や大阪の方が多いし、地方には限られた場所にしかありません。

小学生の頃に出かけた将棋のイベントに女流棋士が来ていて「かっこいいな」という気持ちが芽生えたことが強く印象に残っています。オンラインレッスンなどもしていますが、なるべく地方でイベントを開催できたらと思っています。

ビジネスは社会課題から生まれる

リコーの綿石早希さん

綿石早希(わたいし・さき)リコー「RANGORIE(ランゴリー)」プロジェクトリーダー。2009年リコー入社。ソフトウェアエンジニアとして、スキャンを活用した業務効率化ソフトウェアの開発業務に従事。2015年、リコーアメリカに出向。帰国後、リコーの新規事業アイデアコンテストに応募し、インド人女性向け下着事業「ランゴリー」を牽引。1985年、愛知県生まれ。37歳。

──綿石さんは、2020年、リコーの新規事業アイデアコンテストで「ランゴリー」を立ち上げました。複合機メーカーとして知られるリコーがインド人の女性向け下着をつくるというのは意外なのですが、なぜそのような事業を立ち上げたのでしょうか?

綿石 私はもともと、スキャン技術を使ったソフトウェアの開発をするエンジニアでした。複合機でスキャンしたものをパターン認識して、業務の効率化につなげる仕事をしていました。そのなかで、立体をスキャンする「3Dスキャナー」に興味を持つようになりました。

例えば女性の体をスキャンしたら、一人ひとりの体にフィットした下着が作れるのではと思ったのです。そんなことを考えていた折、社内の新興国(BoP)ビジネス発掘プログラムで行ったインドの農村部で、インド人女性のために仕事をつくりたいと考えていた元リコー社員の江副亮子さんに出会い、一緒に下着ブランドを立ち上げようということになりました。

RANGORIEの衣料品

ブランド名の「RANGORIE(ランゴリー)」は、インドの伝統的な文様「Rangoli(ランゴリ)」と「Lingerie(ランジェリー)」を掛け合わせた造語。ランゴリは家内安全などを祈って、女性たちが描く。

日本もインドも男女格差が根強く残っていますが、インドでは女性は就労できなかったり、下着や生理用品も男性店員から買うしかない現状があります。ランゴリーは、そんな彼女たちが自分たちで下着をつくり、販売し、収入が得られる枠組みづくりを目指しています

インドの農村部では男性が外で働き、女性が家事を担当するのが一般的な家庭の役割分担になっています。また結婚時に女性側の家庭から男性側の家庭にお金や宝石などを持っていく「ダウリー」という結婚持参金制度が残っている地域があります。そのため「女の子は家庭に経済的負担を与える」とみなされ、男の子のほうが喜ばれる風潮にあります。年齢が高くなるほどに高額になるため、児童婚が横行する原因ともなっています。女性たちは、自分たちもお金を稼げる存在であることを証明しようと職業訓練校に通ったりしているのですが、仕事自体がないのが現実です。こうした社会課題を解決したい、女性たちの社会的自立を応援したいというところから始まりました。

リコーには世の中の役に立つことをすれば、それがおのずと事業になるという考え方があります。江副さんがプログラムでインドに行ったのも、そうした考えの一環でした。

──「ランゴリー」の立ち上げは、女性エンジニアの視点が生きているんですね。

綿石 エンジニアとして、最新技術を女性の生活を豊かにすることに使いたいという思いがありました。下着という私たちが日々身に付けるものに着目し、3Dスキャナーを使って自分の身体にフィットしたものをつくろうという発想は、女性の気持ちを知っているからこその視点ですし、女性エンジニアならでは。それがビジネスの強みになると思いました。

一手、一手に集中していく

──お二人とも、自分の強みを生かして道をつくってこられたんですね。

綿石 里見さんは、厳しい勝負の世界でタイトルをたくさん獲得し、結果を残してきました。強さの秘密は何なのでしょうか?

里見私の場合、勝負に執着しすぎると結果が出ないことが多いので、最近ではあまりこだわらないように気をつけています。

kana.satomi

里見香奈女流五冠

メンタルは勝負に大きな影響を与えます。将棋って悪い手を指してしまった時に「なんでこんな悪い手を指してしまったんだろう」と考えているうちに、次も悪い手を指してしまうものなんです。だから、一瞬、一瞬に湧いてくる感情を切り捨てていかないといけない。悪循環にハマらないように食い止めるのは自分しかいません。

なので最近は、将棋の勉強をすることはもちろんですが、体調管理が大事だと思うようになりました。基本的なことですが、睡眠、食事、適度な運動を心がけています

綿石 いま目の前の、一手、一手に集中していくことが大切。とても共感します。

私自身は一つの山を登ると別の大きな山が近くに見えてきて、それに挑戦するというのを繰り返してきました。振り返ってみると、登るためのスキルや筋力は積み重なっていました。無駄な経験ってないんだなって最近、つくづく思うんです。だから、とにかく目の前のことに集中していくことが大事だと感じています。

いまランゴリーもコロナ禍によってインドでの生産が中断するなど、全てが順調なわけではありません。「こうでないとダメ」と思うと苦しくなってしまうので、意固地になりすぎず、柔軟性を持ちながら夢に挑戦し続けたいと思っています。

里見 私もうまくいかない時、将棋しか見えていないと苦しくなってしまいます。だから、違う業界の人とお話をして視野を広く持つように心がけています

今日は綿石さんの挑戦のお話が聞けて、とても楽しかったです。

綿石 こちらこそ! 本当にありがとうございました。


リコーについて、詳しくはこちら

「ランゴリー」について、詳しくはこちら

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October 11, 2022 at 09:00AM
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