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ソニーがドローンを作る理由。AirPeakが狙う「撮影」と「レベル4」 - Impress Watch

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ソニーブースに展示された「AirPeak S1」の実機

6月14日から16日の3日間、千葉市・幕張メッセでドローン関連イベント「ジャパンドローン2021」が開催され、ソニーは、9月から販売を予定している独自開発ドローン「AirPeak S1」を一般公開した。

14日には、AirPeakの開発責任者であるソニー・執行役員 AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏が登壇し、詳細を解説したほか、川西氏へのラウンドテーブル取材も行なわれた。川西氏が語ったAirPeakの狙いと特徴について説明していきたい。

ソニー・執行役員 AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏

「αのために作ったドローン」 モーターから自社開発、飛行性能に自信

AirPeak S1は、ソニーが開発したプロフェッショナル向けドローンだ。

ドローンにも複数の用途があり、日本では土木検査や土地管理、荷物配送などの「産業向け」と呼ばれるニーズが注目されている。「ジャパンドローン2021」で展示されていたのもこのジャンルが多い。

ソニーが開発したのは、まず「プロフェッショナルが撮影に使う」ことを想定したドローンである。本体下部にはジンバルにつけたソニーの一眼カメラ「α」を搭載し、ダイナミックなアングルで映像を撮影することを狙う。そのため川西氏は、「まずは“αのために作ったドローン”とも言える」と話す。

Airpeak S1 Launch

ただしもちろん、それにとどまるわけではない。産業用途も想定はしており、αの代わりに高精度なLiDARなどの計測機器を搭載することも可能。そのために、他社との連携も想定されており、SDKなどの公開も予定されている。

……と、この辺までは一般論であり、「まあそうでしょうね」というところ。今回はもっと詳細な情報が語られた。

次の図はAirPeakのシステム構成図である。使われているプロセッサーはQualcommのSnapdragon 845。最新とは言えないがかなりパワフルなものだ。それに加え、多数のソニー製センサーの組み合わせで作られている。

AirPeak S1のシステム構成図。メインプロセッサーはSnapdragon 845だが、センサーやその処理系にソニー独自の半導体が多く使われている
AirPeak S1のセンサー群とメイン基板。スマホやタブレットに搭載されるサイズに近く、本体と比較するとかなり小さなものだ。

川西氏(以下敬称略):AirPeakは、プロセッサーやパーツの一部こそ他社製ですが、ハードやシステム設計、ソフトウエアなどを含め、本体は自社製です。ジンバルは他社製なのですが、AirPeak向けにカスタマイズしていただいたものです。

ドローンはすでに多数販売されており、「もうコモデティではないか」という声は社内にもありました。ただ、小さなおもちゃのようなものはたくさん売られていても、プロの撮影機材として使えるものは少数の企業の製品に占められています。すなわち、そこには何かがあるのではないか、と。

必要なものは、高い空力性能と安定性、そしてそれを大量に安定して量産できる能力です。ならば、「そこをソニーがやるべきではないか」と考えました。

では、具体的に「高い空力性能と安定性」を実現するには何が必要なのか?

もちろん「すべて」が必要になる。安定飛行の制御にはAIとロボティクスが、周囲の認識や撮影にはセンシングとイメージングが、そして操縦には通信が必要で、それらはソニーが他の領域で手がけているものだ。

制御からセンシングまで、ソニーの技術が結集して作られている。

そして、さらにAirPeakのために開発したのが、オリジナルのモーターとプロペラだ。

AirPeak S1に使われているモーターとプロペラの実物。この機体のために独自設計されたものだ

川西:速く飛ばすにはモーターも速く回転することが大事だ、と思われがちです。しかし、高速回転だけでは機敏な動きは実現できません。「低回転でも回る」ことが重要。そこから回転数を上げてビュッと動く。ゆっくり回しても浮く空力特性が得られるプロペラも重要になります。

加速性能は、ホバリング状態から80km/hまでで3.5秒。機敏な操作からダイナミックな映像が得られます。

ちなみに、スポーツカーの加速性能は、0-100km/hで3秒弱。一般車で5秒程度と言われている。AirPeakならなんとかこれに追従して撮影ができる……と考えることもできる。

安定性も高い。最大耐風性能は20m/sとなっているが、これは人が風に向かって歩くのが困難になるレベルである。

AirPeak S1の性能。最高速度が目を引くが、実は注目は「耐風性能」だ

こうした部分については、JAXAの風洞実験施設を使ったテストも行なわれており、その様子が動画でも公開されている。

JAXAの風洞実験に関するテスト映像

川西氏は「災害対策用にはまだクリティカルな検証が足りないと思うが、その性能は十分に担保したい」と話す。

センサーで周囲をリアルタイム把握。クラウドで「撮影シミュレーション」

AirPeakはコントローラーによる操作と、事前に指定したルートを飛ぶリモート操作の両方に対応している。どちらにしても、モバイルアプリと専用コントローラー、そしてウェブサービスが本体と連携する形で動作する。

本体はコントローラーおよびウェブアプリと連動する
操作を快適にするため、専用コントローラーもかなりこだわって設計されている

まず重要なのは「安全に飛ぶこと」。本体には5つのステレオカメラによる空間認識と、上下方向専用の赤外線センサーが搭載されている。このため、GPSが入らない場所であっても、障害物を避けながら自律飛行することができる。

以下の画像は、AirPeak内蔵センサーがとらえたステレオ映像から、画像解析によって把握された立体空間だ。

2つのカメラから得られたステレオ映像から周囲の立体的構造を画像解析し、障害物を認識して自動的に避ける

処理はすべてAirPeak内で完結しているのだが、空間把握自体も、メインプロセッサーであるSnapdragon 845には依存せず、「ビジョンセンシングプロセッサー」と呼ばれる専用のLSI(CXD5620)で処理している。このLSIは非常に消費電力が低く、バッテリーのエネルギーをモーターにできるだけ回すことに寄与している。

AirPeak S1搭載のステレオカメラ群。この映像をビジョンセンシングプロセッサーがまとめて立体把握し、位置把握に利用する

川西:すべて本体内で処理しています。この辺は自動運転と同じですね。そうしないと、障害物はとても避けられません。飛ぶスピードによって解像度は異なるのですが、それは、どれだけ遠くまで把握するか、ということに依存しています。画像はゆっくり飛んでいる時のイメージだと考えてください。

そうした操作と連携するのが、コントローラーでありウェブアプリケーションだ。ドローンを直視しての操縦ももちろんだが、クラウドサービスを介してルート指定しての操作もできる。

川西:ルート指定時には、事前に経路・高さを決められるのはもちろんですが、撮影時のカメラのアングルまでシミュレーションできます。事前にかなり詳細な準備が可能になっているんです。クラウドアプリケーションになっている理由は、その方がデータは集積しやすいので、後々役に立つだろう……という想定です。

ちなみに、ソニーがクラウドインフラとして選んだのは「AWS」だ。aiboやソニーの試作EV「VISION-S」もAWSをクラウドインフラとして採用しており、その流れもあってノウハウがある、ということだろう。機能拡張や他社連携も容易だ。

ビジネスの核は「撮影」、産業向けを見据え「レベル4」を目指す

ビジネスのことを考えた場合、まず競合となるのはDJIなどの映像撮影用プロ向けドローンを作る企業だ。この点について問われると、川西氏は次のように答えた。

川西:国内では産業向けのお問い合わせが多いのですが、アメリカからは映像向けに、非常に多くのお問い合わせをいただいている状況です。

中長期でのシェアや競合についてはコメントできないので、ご勘弁ください。ただ、可能性は十分にあると思っています。数を追うよりも高い品質でご満足いただきたいと考えています。

性能については各社それぞれが追求していくので、今よりも向上していくでしょう。しかし、飛行性能についてはソニーの技術を導入して上回っていると思います。今後もきちんと自分達の技術で、競争力のあるものに仕上げたい、と考えています。

では、サイズバリエーションはどうだろうか? 現状はαなどの一眼クラスのカメラを搭載するものだが、本当に「映画」を狙うのであれば、CineAltaなどのシネマカメラ搭載が求められる。随分コンパクトになってきたとはいえ、かなり大きく、今のAirPeakには搭載できない。また、市場を広げるならもっと小さく安価なものを……という声も出そうだ。

川西:シネマカメラを搭載するには、もうひとまわり・ふたまわり大きなドローンを作る必要があります。そこは検討課題です。ただし、プロの映像制作といってもピンからキリまでありますから。アメリカの映像制作の現場から色々な反応があるのですが、「いいからとにかく使わせろ」という感じでしょうか(笑)

小さなものは、どうしても安定性が犠牲になります。飛ばされてしまうんですよね。耐風性能が下がるので、悩みどころです。

では産業用はどうだろう? 前述のように、日本では産業用ドローンのニーズが大きい。そこでは量産品ではなく、案件に合わせた専用設計で大型のものが使われることも多い。産業用シーンでの活用をどう広げていこうと考えているのだろうか?

川西:産業用にニーズがあるのは間違いのないことです。一方で、技術や法整備の点で発展途上な部分があるのも事実。社会の中での重要性を考えると、弊社としてはクリエイター向けがまず大前提です。しかし、産業用は重要視している部分でもあります。また、撮影用ドローンがそのまま「産業用」としてお使いいただける部分もあるかと思います。

すでに多くの企業の方々とはお話をさせていただいてます。パートナーとの実証実験の展開については現状一概には申し上げられないのですが、実際にお話ししている企業はあります。具体的には控えさせてください。

その上で、一つの目標として「レベル4」への対応を挙げる。レベル4とは、国土交通省の定めるドローンの飛行許諾に関する安全基準の中でも、「有人地帯における目視外飛行」を指す。現在の産業用はレベル1・2が中心で、レベル4は2022年の実現が目標とされている。ソニーとしても目指すのはここだ。

ソニーはドローン事業で「レベル4(有人地帯における目視外飛行)」の実現を目指す

川西:レベル4にとって重要なのは、まず「飛行性能」。どれだけ安定して飛べるのかが重要です。飛行機のレベルまで、高い条件が求められる可能性がありますが、そこに行くまでにまだやれることがあるはず。まず基盤を積み上げていくのが重要です。

実際、できない理由はありません。

そのためには、LTE・5Gを含めた無線技術が重要になりますし、モーターやプロペラの技術をさらに磨く必要もあります。センシングについても同様です。安定性に貢献できる部分は多々あり、そこに向けて技術開発を進めていきます。

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June 17, 2021 at 06:20AM
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