タンザニアで暮らしていると、日本でいうコロナ禍で仕事が突然なくなるような事態が頻繁に起きます。店の資本を増やしても突然警察に没収されたり、仲間の裏切りにあったり、商品を預けていた倉庫が火事になって無一文になったり。
公的な保障や保護がほとんど得られない不安定な社会では、「将来に備える」といっても、将来はどこにあるのかという感じです。日本だったら今頑張れば良い学校に入れ、大きな会社で働け、安泰な老後を過ごせるなど直線型の未来を描きやすい。でも、ここではそうはいかない。
資金や技術をすぐ貸し、仲間を増やす
では、人々はどうしているか。
この先どうなるかわからないリスキーな社会だから、一つの仕事に固執せず、いろいろな事業に投資して、いろんなタイプの人間とつながっておく。「生計多様化戦略」です。
例えば、コロナ禍で中国と取引ができず、電化製品の商売ができなくなった。日本なら政府の助成金に期待できても、ここでは自分で何とかするしかない。
都会に住むタンザニア人が目を向けたのが農村です。食べ物はコロナが来ようが常に要る。電化製品の商いはやめて1週間後には農村で養鶏を始めている。そんな時、役に立つのが多様な人と結んでおいた人脈です。中には養鶏のやり方を知っている人がいるから教えてもらう。すぐに新しい事業を始められる背景に、儲(もう)けは同じ事業につぎ込まず、農地の確保など、いつか役に立つかもしれない分野に投資しておく知恵があります。
面白いのは、「その日暮らし」をするぐらい生活が不安定で貧しくても、人々は資金や技術をすぐ人に貸したり、分け与えたりしてしまうこと。それは自分の首を絞めるだけで、お金は貯金し、技術は人に教えない方がよいと私たちは考えます。でも、不確実性の高い社会で暮らす人たちからすると、それはかえって安全ではない。
June 15, 2021 at 03:22PM
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貧しくても「分け与えて作る」仲間、自分が困ったら助けてくれる「人生の保険」に…タンザニア「その日暮らし」の知恵(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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