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育成の基本は「成長の階段」を作ること - DIGITALIST

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海老原 嗣生

ニッチモ代表取締役、政府労働政策審議会人材開発分科会委員、中央大学大学院戦略経営研究科客員教授

育成の基本は易しい仕事を寄せ集めてやらせて、できるようになったら、少しずつ難しくしていく「ゆでガエル」方式。ところが成長のために「よかれ」と思って難しい仕事をさせようとしても、若手社員が嫌がることも。パワハラも問題視される昨今、どう対応すべきか。

(写真:123RF)

 前回までで「採用」については終わりです。今回からは本連載の総仕上げとなる「育成」を取り上げます。

 育成について、考えることは二つです。
1.ボトムアップ(全員一律の底上げ教育)
2.トップエクステンション(優秀層の幹部教育)

 欧米では、入り口から「エリート」と「ノンエリート」に分け、前者にのみ1と2を手厚く施す、というスタイルをとっています。元々できる人たちで、しかも向上心旺盛なタイプが修学を通じて選抜されているから、1の期間はそこそこ短く、早期から2に移るというシステムに帰結します。それ以外のノンエリートは自助努力で這い上がる以外なく、多くの人がキャリアの階段を上れず滞留していく。こうした「階級分化」については、もうくどいほどに書いたのでよく理解できたでしょう。

 社会や雇用の全体システムを知らない場合、木に竹を接ぐ形で、欧米型の育成スタイルを取り入れようとつい無駄な努力をしてしまいます。この連載を読んだ人たちは、もうそんな過ちはしないでしょう。

 ここからは、日本の雇用システムに合っている方法で、しかも、自社の「キャリアの形」にも齟齬がないような育成メソッドを考えていきます。

仕事は研修なんかじゃ学べないという事実

 まず、日本社会で考えると、多くの若者が新卒社員として未経験のまま入社してきます。それも、例えば銀行であれば法学部や教育学部といった全く専門違いの学卒者を時には1000人も受け入れています。それが、10年もするとあの難しい大手向け法人融資をこなしています。どうして、こんな離れ業ができるのでしょうか。そこで問題です。

Q1.「人材育成がうまい」とは、どのような企業を指すのでしょうか?

 実社会を知らない人たちは、よく「教育研修が整っている」ことが人材育成のポイントと語ります。大学の就職部の職員や、教育学もしくは社会学の研究者などもそんな話をします。でも、研修や講習で実務などあまりうまくなりませんよね。それは研究者や大学職員がご自身のキャリアを振り返ればすぐに分かることでしょう。

 同様に、営業とか採用、はたまた労働組合対策など、いくらロールプレイング研修をこなしても、上達などできません。

 実際、ローミンガーというアメリカの人事コンサルティング会社が行った調査からは、研修などのOff-JTにより培われた職業能力は全体の1割以下だという考察がなされています。この調査によると、最も職業能力を伸ばしてくれたものは、「仕事」でありそれが7割を占めています(残りの2割は上司・周囲の薫陶となります)。これは日米で差はなく、キャリア育成の鉄則と言えるでしょう。

 実は、公的な職業訓練が盛んな欧州でもその実情はあまり変わりません。フランスのCFAという職業訓練を見ると、現在の職業教育の基本は、「企業での実習」がその中心となっています。このCFAの卒業生にとったアンケートでは、なんと64.2%が「プログラムの中でOff-JTを受けていない」と答えています。のみならず、企業実習中でさえ「体系化された教育は受けていない」という声が19.6%も寄せられています。よく、「日本はOJT主流でしっかりした研修がない」と言われます。が、欧州の職業訓練でも中身は大差ないところなのでしょう。

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April 01, 2021 at 02:02AM
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