「なかなかうまい図が作れなかった」
第45期棋聖戦七番勝負。終局後のフラッシュインタビューで、何度も同じ
第1局のコラムでも書いたことだが、プロになった棋士の実力差はほんのわずかなものだ。特に「読み」に関しては、初段になりたての少年もタイトル通算50期の井山裕太棋聖も、そんなに変わるものではない。トップクラス同士の対戦となると、なおさらだ。
では、どこで差が出るのか。カギになるのが、この「図を作る」という言葉だと思う。
対局に臨んで棋士たちは、様々な進行を読む。例えば、第5局の序盤、【図1】の局面を例に取ってみよう。白にはA、B、C、Dなど、様々な打ち方が考えられるが、それぞれどのような進行が考えられるかを考え、「図を作っていく」。
実戦は【図2】のように進行したのだが、【図3】の進行も考えられる。棋士たちは、このように頭の中で複数の図を作って「比較・検討」し、どの図がもっともいいかを「判断」しているのである。
先ほども書いたように、「図を作る」ベースとなる「読み」の能力は、どの棋士もさほど変わりない。だから「どんな図を作るか」という発想力と「その図はどちらが、どのくらいいいのか」を判断する能力、この二つが重要になってくるのだ。
実は、囲碁AI(人工知能)の発達で、もっとも変わったのが、この二つの分野である。「攻め合い」や「生き死に」などの「部分の読み」は、人間は決してAIに劣っていない。だが、発想力と判断力でAIは人間を大きく上回る。それを認めているから、棋士たちはAIの打つ手を研究し、そこから得られた成果を実戦に投入し続けている。
冒頭の「なかなかうまい図を作れなかった」という台詞を翻訳すると、「なかなか発想力と判断力で井山棋聖を上回ることができなかった」ということになるだろうか。読みの深さでは定評がある河野九段の言葉だけに、逆に言えば井山棋聖の充実ぶりが伝わってくる。日本一の「発想力」と「判断力」。それが如実に表れたのが、第3局の「令和の三妙手」だとも思うのである。
March 12, 2021 at 01:00PM
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[棋聖戦コラム]七番勝負の明暗を分けた「図を作る」力 - 読売新聞
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