発端は恐竜掘り出したい欲
プラモデルは説明書を見ながら順番に作っていくものだが、いったんその縛りから解き放たれてみたくないか。つまり説明書を見ずに作るのだ。
そもそもの発端は福井の恐竜博物館に行った時だった。
恐竜はバラバラに出てきた骨を、試行錯誤で組み合わせてもとの状態に並べるのだが、その時にはもちろん説明書なんて存在しない。
これは途方もなく大変な作業であると同時に、うまく組み上がったときには最高に興奮すると思うのだ。
前に3ykさんが取材していた土器のかけらを組み合わせる作業がまさにそれだろう。
この記事を読んで確信した、この作業はぜったいに楽しい。
しかし身近には土器も恐竜も埋まっていなさそうだし、見つけちゃってもそれはそれで緊張する。どうにかしてあの興奮だけを体験できないかと考えた末、思いついたのが説明書なしプラモデル組み立てだった。それはきっと土器や化石の復元作業を彷彿とさせる興奮があるのではないだろうか。
そういう目でプラモデルを選ぶ
とはいえ自分ひとりでやるとなると、買う時すでに完成形を知ってしまっているので興奮が半減しかねない。
そこで今回、同じ思いを持つ発掘調査員をもう一人用意した。互いにプラモデルを買い、箱から出して説明書を抜いた状態で相手に渡すのだ。やばい、もう興奮してきた。
さて、何を選ぼうか。
なかなか難しい。簡単に完成形が見えてしまってもつまらないし、かといってとんでもなく難しくては時間がかかりすぎるだろう。
そういう目でおもちゃ売り場を物色したところ、丁度よさそうなプラモデルを見つけた。
見つけたときこれしかないなと思った。
ハルキゲニアという生き物は、発見された当初に考えられた形状から、最近になってそれが裏表逆だったことが判明した(そのあとさらに前後も逆だったことが判明する)。このプラモも、説明書を見なかったらまったく違う形に組み立てられてしまいそうじゃないか。
目の前に置かれたパーツたち
今回の復元作業に参加してもらう調査員、ライター江ノ島さんにも同じ条件でプラモデルを選んできてもらった。それぞれに箱から出して説明書を抜いた状態で相手に渡す。
江ノ島さんが僕に渡してきた部品がこちら。
意外にもぜんぶ茶色である。最近のプラモデルは色を塗らなくても完成度の高いものが多いのだけれど、それを考えるとぜんぶ茶色いこともヒントだろうか。
一方、僕が選んできた部品を見た江ノ島さんの感想がこちら。
さすが、いい線いっている。
ちなみに江ノ島さんには説明書を見ながら作ったミニ四駆が走らなかった過去があるらしい。僕もマクロスのプラモを途中で断念し、撃ち落された様子、という名のジオラマに見立てたことがあるので、プラモデラーとしてのスキルは似たり寄ったりではないかと思う。
江ノ島くんが言う。
江ノ島「このひもみたいなやつも部品なんですか?」
いい質問である。もちろん部品だ。
完成形を知っていると、これは体と空飛ぶ手とをつなぐ大切な部品だとわかるが、これの使い方に気づけるかどうかで完成形が決まると言ってもいいだろう。
どうですか、興奮するでしょう。
江ノ島「なんだかわかんないですが、年末っぽいなってだけは思いました」
確かにプラモデルは年末年始の季語のような気もする。狙ったわけではないが、季節が僕を狂わせたのかもしれない。まあいい、よーいどん、である。制限時間を設けた方が燃えるかなと思い、とりあえず一時間とした。
骨?生き物?
僕に与えられたパーツを見ると、なにやら骨のような部品があるのがわかる。ということは生き物だろうか。いや、生き物だとすると骨が見えてるのはおかしいから骨格標本かもしれない。
パーツが全体的に骨っぽいので、これは恐竜か動物の骨格プラモではないかと予想した。まずは一番大きな部品から切り離して組み立ててみる。
パーツはなんとなく左右が対になってライナーに引っ付いていた。これを頼りにペアにして並べてみると、たまに凹凸がぴたりと組み合わさる部分があって「プラモデルかよ!」とつっこみたくなる(プラモデルである)。
手探りではまり合うパーツを固めていくと、なにやら頭骨らしき姿が見えてきた。顎があるな。犬だろうか。
そのころ、隣で江ノ島さんがなにやら力任せに引っ張っていた。
安藤「なんとなく左右が対になってるからさ、似たパーツを切り取って次々はめてみたらいいんですよ。たまにピタッとくることがあるので」
江ノ島「そう思ってやってみたんですけど、間違った穴にはまっちゃうとこれ、抜けなくなりますね」
説明書を読んでいないので組み立てる順番も自由である。大きなパーツからとりかかった僕は、なんとなく頭らしき塊ができて道筋が見えたが、手あたり次第はまる部品をあたっていた江ノ島さんにはカオスが訪れていた。
復元作業は続く
僕が取り組んでいる相手はどうやら恐竜の化石のようだった。それで全体が茶色かったのだ。生きていた頃の恐竜を思い浮かべながら骨を合わせていく。
スタートから一時間半ほどですべての部品を組み立てることができた。脳がしびれる疲労感だ、最高に気持ちがいい。
そしてたぶんこれはトリケラトプスだろう。
思った通り、説明書を見ないことで、組み上がったときの達成感が半端なかった。コーラが飲みたい。
もちろんクオリティを重視する場合は説明書に沿って丁寧に作るべきだが、説明書ノールック制作もプラモデルを楽しむ一つの方法になりうるのではないか。
どうですか、江ノ島さん。
江ノ島さんの周りは負のオーラで満たされていた。
江ノ島「安藤さん、いったん寝てもいいですか。」
江ノ島さんはその感動をまだ未来に期待したままだった。机の上は台風が通り過ぎた翌日みたいになっている。糖分をと思い、袋を開けたアーモンドチョコにも手を付けていないから相当だ。
安藤「どうします?この辺でやめときます?」
江ノ島「帰って寝て、明日またやる、でもいいですか。このままにしといてくれたら明日来ますから」
もう付き合いが長いからわかるよ。そう言って明日来ない気だろう。とはいえすでに2時間以上が経過しており、集中力にも限界が訪れているのもわかる。現状を打開するため、ここでヒントを投入したい。
箱投入
箱を渡した江ノ島さんが小さく(ハイグレードか)とつぶやいた。
ともあれこれで完成形は見えたはずだ。もはや記事の趣旨がどうこういっている時間もないので(いま21時)完成形を見ながら僕も江ノ島くんの復元作業に協力することにした。
江ノ島「安藤さん、箱を見ても手がどうしてもないんです。だからもうこれで完成でいいんじゃないですかね」
いいと思います。お疲れ様でした。
腕がないのは紐で分離した衛星みたいなやつが腕代わりだからである。箱を見てもそこの認識が共有できていなかったので、怖くて言わずにおいた。
情報解禁
そろそろスタートから3時間が経過しようとしているので、復元作業はここで終わりにして、江ノ島さんに説明書を渡した。それを見た江ノ島さんが疲れた声で笑う。
江ノ島「安藤さん、これ見ると(笑笑笑)笑っちゃいますよ(笑笑笑)」
江ノ島「これね(笑笑笑)、説明書見ても(笑笑笑)無理ですわ。IKEAの説明書みたいですもん。」
プラモデルはこのあとスタッフが持ち帰り、説明書を見ながらちゃんと組み立てることにしました。
プラモデルは説明書を見ないで作ると面白い(ただし難しい)
化石とか土器の発掘には憧れがあるが、あれは遊びじゃないので大きな責任感がつきまとうに違いない。その点、説明書を見ないで作るプラモデルは、組み上がった時の感動だけを模擬体験することができた。
おもしろいのでみなさんもやってみてください。箱から出したジグソーパズルでもいいと思います。
December 11, 2023 at 09:00AM
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