「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というフレーズが一般に膾炙して久しいが、現在はどういったところに向かっているのか。
国交省の連携会議が立ち上がり、建築-都市計画-不動産をデジタル情報の中で連携させ有機的に国土空間の価値化を図る政策が示されている。今回は、その内容を一通り見ながらその先にある建築と不動産の時代を想像してみよう。
建築BIMとPLATEAUと不動産ID
2023年5月に、不動産ID官民連携協議会が国交省主導で立ち上がっている。
これは、先年より政府が進めている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」政策の一環として、これまで建築・建設の分野ですすめられてきた「建築BIM推進」、都市計画分野で立ち上げられた「PLATEAU」に続いて、不動産分野のDXと目される土地や建物を一意に特定するための共通コードとしての「不動産ID」の導入を目指すものである。
「建築・都市のDX」と不動産ID官民連携協議会の設立」というこの動きを概観する文書が国交省にて公開されている。これを読み明かしてみよう。
まず、建築BIMとはBIMとは、building information modelingの略であり、建築物を成り立たせるものの情報を3Dモデルとして構造化したデータのことであり、そのデータと構造を設計することである。
その情報は物理的な構造としての情報空間の中の3Dモデルとして設計され、そこに関連付けられた属性(建材、部材の性状や品番、コストや性能など)を、引き出したり付与したりする。
したがって、これまでのCADデータなどが主に空間的形態寸法を扱うものだったのに対して、より情報量の多いデータセットとなる。
その制作、設計にはもちろんマンパワーとコストがかかるが、性能発注が一般化している現在、形態だけのモデルに比較してこれらの性状も含めたパッケージの方が運用な改修などの建築ライフサイクルにおける利用側の行為、計画にとっては遥かに有用であることから、近年事業者、行政において推進されている。
次にPLATEAUであるが、こちらは建築の3Dデータを集積した3D都市モデルをベースとして、そこに空間だけでなく建築の用途や構造などの情報を載せることで、都市計画、防災計画などに活用されることを目指している。
特にデータの公共性を鑑みてライセンスに二次利用が許されることで様々な分析、計画のベースになることを想定している。いわば都市計画のBIMと呼ばれその活用が期待されている。
この先に進められているのが、不動産IDとなる。
上の二つは三次元形態をベースとしたものであり、「作るためのDX」を出発点にしている。その上に完成した、あるいは現在の状況を運用、活用していくための「使うためのDX」がその先に見えてきた現在に必要とされているのが、権利や価値評価のベースとなる「不動産ID」である。
不動産活動においてはその位置情報、登記情報、権利や面積やボリュームや地価など様々な価値の属性をつなぎ合わせて扱うことが必要であるが、それぞれの情報台帳=データベースは別々に管理されているのが現状である。それをベース・レジストリとして一貫して管理する、いわば不動産のマイナンバーを目指しているのがこの不動産IDである。
そのための不動産IDルールガイドラインがまとめられている。
上記の建築BIMとPLATEAUを不動産IDとともに束ねることで、建設、不動産開発、都市計画、交通、防災、まちづくり、地域おこしなどの分野における国土空間に結びついた縦割りを破る活用が期待されている。
3D情報の先に – 作るためのDXから使うためのDXへ
これらのデータの特性は何であろうか。それを考えることがこれからやってくるこれらのDXをどういった道具として利用するかを示してくれるだろう。
一つには、
・同じ空間のプラットフォーム上で展開されるため、重複のない一意なデータであること
が目指されている。建築BIM、PLATEAUは3D空間モデルでもあるため、仮想空間上の1点は一つのデータセットと結びついていることが明らかだ。不動産IDにおいては登記情報と住所情報を合わせたベース・レジストリによって、これも空間の1点が決まればIDが定まりその逆も定まる。
それぞれ空間的なプラットフォームであることで、「重なることがない」と同時にそれが見えるかたちにされている。
それがもたらす重要なことは、何かといえば
・変更の履歴をたどることが可能である
という点だろう。
建築においては、全体を属性まで含めてモデリングしていることで現状とことなるところを差分として取り出すことができる。改修、リノベーションにおいてとても有用である。
早稲田大学の松村教授の考える「都市の資源工学」や、「建築リユース学」などのように、その記録があることで未活用、あるいは埋蔵されている建築資源をマイニングする産業も可能になるだろう。
そこまで大がかりなことではなくても、模様替えや利用方法の変更に際してもシミュレーションのベースとなることで、計画がより具体的になる=事業や運用の想定がしやすくなることがある。
PLATEAUについても同様に、ユースケースとして示されているのは、都市計画における防災、ドローンなど新しい手段における交通計画、空き家問題などの地域計画、都市的な環境計画など、これまでのマップでは扱うことのできなかった、見える化が難しかった、時間変化のある計画だ。
不動産IDは、そういった実空間に影響を与える権利、責任関係の履歴を結びつけることで、紛争や非常時の取り扱い、制度などの整備が進むであろう。これも蓄積され活用されていく履歴情報が大きな要素となることが予想される。
これらのDXは、まずは建築BIMに見られるように「作るためのDX」=作ることを合理化していくためのDXとして始まった。それを集積することでPATEAUのような、関係を見える化し調整するためのDXが生まれ、不動産IDでそれを束ねる段階では、上に見たように「時間や履歴」を認識しコントロールためのデータに手が届くところが見えてきている。
単なる空間を写した3Dデータとして片づけるのではなく、そこに「時間の計画」を重ねる、掛け算することで、これらのDXは本来の価値を生み出していくのではないか。
今後の展開を注目すべき動きだと思う。
不動産ID官民連携協議会
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk5_000001_00025.html
執筆:
(しんぼり まなぶ)December 15, 2023 at 04:01AM
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