こんにちは! 料理家の美窪たえです。
本日は、鶏の砂肝で作る絶品オイル煮込み「砂肝のコンフィ」をご紹介します。
砂肝は内臓類の中では比較的扱いやすく、スーパーでも入手しやすい食材です。値段もお手頃で大変ありがたい食材ですが、実際に料理するとなると、「どうやって食べたら良いかわからない」「硬い」「薄皮は取るべきか?」など、扱い方に関する疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本日はそんな食材「砂肝」を柔らかく仕上げていきますよ。
ご紹介する砂肝のコンフィは、油を使うため直火での温度管理が難しく、オーブンで長時間加熱するのが一般的な調理法です。
しかし、今回は食材を油に浸したままお湯で間接的に温める「湯煎」を用いて、一定の温度を保ちながらじっくりと加熱することで、砂肝を簡単に柔らかく仕上げることができるのです。
油が飛び散る心配もなく、オーブンなどの特別な機材も不要。少なめの油で手軽に作れるのも、湯煎を用いる大きな魅力です。
シンプルな味付けで仕上げる砂肝の湯煎コンフィは、おつまみとしてそのまま食べても絶品ですが、和洋を問わず幅広いアレンジでお楽しみいただけます。記事の後半では、おすすめのアレンジレシピもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
あのコリコリとした砂肝をしっとり柔らかく味わえる砂肝の湯煎コンフィ。早速作り方をご紹介していきます。
材料(2~3人前)
- 砂肝……500g
- 塩……6g
- 黒こしょう……適量
- にんにく……20g(3かけ分/4~5mm程度にスライスしておく)
- サラダ油……120cc(※サラダ油の量は使用する耐熱容器のサイズで変わるので、砂肝が浸る程度を目安に投入してください。)
砂肝の説明
まず、本日のメイン食材の砂肝について。
砂肝は、鳥類の胃の一部に当たる器官「砂嚢(さのう)」という部位になります。餌と一緒に飲み込んだ小石をためておき、食べ物をすり潰すように砕いて消化する役割なのだそう。
そして、砂肝は主に筋肉でできているので、コリコリとした独特の食感と弾力があり、脂肪が少なくヘルシーな食材です。
※砂嚢から砂や石をきれいに取り除き、食べやすく加工されたものが、スーパーなどで並んでいる砂肝になります。
また砂肝には、銀皮と呼ばれる青白い膜が付いています。この部分は特に硬い食感をしているため、焼き鳥や炒め物などでは、銀皮を包丁で削いで取り除く場合があります。
しかし、一つ一つ銀皮を処理するのは面倒ですし、食べる部分も減ってしまいます。そこで今回は、銀皮が付いたままでも問題なく食べられるような下処理をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
砂肝の湯煎コンフィの作り方「下準備編」
1.砂肝を下処理していきます。
砂肝はこぶが2つ繋がったような形をしていますので、まず2つに切り離してから、3〜4カ所を目安に4〜5mmほどの切り込みを入れます。この時、下まで切り離さないように気を付けてください。
※砂肝のサイズによって切り込みの深さは調整してください。
このように包丁を入れることで、銀皮も食べやすくなり、火の通りも良くなりますよ。
2.下処理をした砂肝に調味料などを合わせていきます。
湯煎にかけられる耐熱性のある容器に、下処理をした砂肝、塩、黒こしょう、にんにくを入れて、全体を混ぜ合わせます。
塩の量は、砂肝の重量の1.2%ほどを目安に調整してください。やや多めに感じるかもしれませんが、塩気は薄いよりも濃いめの方が味の輪郭がはっきりして食べやすく仕上がります。
前述の通り、砂肝は筋肉質ということもあり、内蔵系の中では圧倒的にクセが少ない部位。なので、臭み消しのための香辛料や、香り付けのハーブはほぼ使わず、下味はシンプルにしています。少ない調味料などでおいしく調理できるのも砂肝の魅力の一つです。
3.全体が混ざったら表面を平らにならして、材料がちょうど浸る程度のサラダ油を注ぎ入れます。材料がサラダ油に浸った状態で加熱することで、水分が蒸発することを防ぎ、しっとりとした質感が保たれます。
そして、ここで使用する油についてですが、香りの少ないサラダ油がおすすめです。
コンフィは洋風の調理法なのでオリーブオイルを使いたくなりますが、食べ切るまでの間ずっと「洋風の味わい」から抜け出せなくなってしまいます。
コンフィ自体に個性を付けず、シンプルに仕上げることで、アレンジの幅が広がりますので、オリーブオイルではなく、サラダ油を使用しています。
砂肝の湯煎コンフィの作り方「湯煎編」
1.材料が入った耐熱容器にアルミホイルをかぶせて、そのまま大きめの鍋に入れます。
使用する耐熱容器や鍋に関しては、ステンレスのボウルとお鍋、菓子型とフライパンなど、お手持ちの道具をうまく組み合わせて利用していただければ大丈夫です。オーブンなど特別な機材や道具がなくても作れますので、安心してくださいね。
今回はホーローの容器と、それが入る土鍋をセットで使っています。
2.鍋に水(分量外)を入れ、中火にかけます。
水の分量は使用する耐熱容器と鍋のサイズ等で変わります。耐熱容器の高さの半分程度を目安に注ぎ入れてください。
3.お湯が沸いたらごく弱火に落としてからふたをして、60~90分ほど加熱していきます。途中でお湯がボコボコと沸いてしまうようであれば、ふたをほんの少しだけずらして蒸気を逃してください。
ちなみに今回の使用した道具のセットでは、60分加熱した場合は、砂肝のシャキシャキ感が残る仕上がりに。鍋のふたを閉めた状態でさらに30分余熱で放置した場合は、しっとり柔らかい食感になりました。やけどに注意しながら砂肝の状態を確認して、お好みの食感になるように加熱してみてくださいね。
4.湯煎が終わったらアルミホイルのふたを外して、オイルごと常温程度まで冷ませば、砂肝の湯煎コンフィの完成です。冷ますことで塩気とにんにくの香りがなじんでよりおいしくなりますので、どうかご辛抱ください。
砂肝の湯煎コンフィの楽しみ方
じっくりと加熱した砂肝の湯煎コンフィですが、かみ締めた瞬間に、砂肝のしっとりとした柔らかさを感じていただけるかと思います。丁寧に下処理をしているので、銀皮が口に残らず、中心部までしっかりと味が染みています。
塩・黒こしょう・にんにく・サラダ油という調味料のみで調理していますが、シンプルで飽きのこない味わいになっており、赤ワインとの相性が抜群です。ぜひ一緒に楽しんでみてくださいね。
また、彩りにルッコラ(分量外)などを添え、軽く焼いたバゲット(分量外)に油を吸わせて食べれば、食事としても成立しますよ。
夏にぴったりなアレンジとしては、たっぷりの刻み青ネギ(分量外)とポン酢(分量外)の上に、食べやすくカットした砂肝のコンフィをのせた「ずりポン」がおすすめです。お好みで七味(分量外)を加えることで、ピリッとした刺激も楽しむことができます。
ちなみにずりポンの「ずり」は、砂肝の別名「砂ずり」からきており、西日本で主に使われる呼び方だそう。砂肝のコンフィのほどよい油感とポン酢の酸味の相性が抜群で、焼酎やビールによく合います。
ちなみに、砂肝の湯煎コンフィを食べ切った後に残る油は、砂肝とにんにくのうま味が移っており、野菜炒めやパスタに使うのもおすすめ。余すところなく最後まで楽しめますよ。
砂肝の湯煎コンフィの楽しみ方「リヨン風サラダ」
最後に、砂肝の湯煎コンフィを使った「リヨン風サラダ」をご紹介します。
美食の街「リヨン」の名が付くこのサラダは、炒めた砂肝とベーコンを野菜の上に豪快にのせ、ゆで卵とパンをあしらう、フランスの肉系がっつりサラダです。
日本ではあまりなじみのないサラダかもしれませんが、ドレッシングも作りやすく、これだけで食事としても成立する大満足な一皿ですよ。
材料(2~3人前)
- レタス……200g
- 紫キャベツ(千切り)……30g
- クレソン……5本
- ベーコン(ブロック)……50g
- 砂肝の湯煎コンフィ……10個ほど
- バゲット……2~3枚(食パンでも代用可能)
- オリーブオイル……小さじ2
- バター……5g
- ゆで卵(半熟)……1個
- 黒こしょう……適量
※サラダ用に使用する野菜は市販のサラダミックスでも代用可能です。
ドレッシング
- マスタード……20g
- 酢……大さじ2
- オリーブオイル……大さじ2
- 塩……小さじ1/2
リヨン風サラダの作り方
1.野菜を準備します。
今回はレタスをメインに使用しますが、グリーンカールやサニーレタス等でも代用可能です。加えて、クレソンやトレビス、春菊やパセリといった少しクセのある野菜を入れることで、砂肝とベーコンのパンチに負けない味わいになりますよ。
サラダ用の葉野菜を準備する時のポイントですが、繊維に合わせて優しくはがすような感覚で一口サイズにちぎってみてください。たったそれだけで、ふんわりとした見た目になり、盛り付けた時に違いが出てきますよ。
5分ほど水(分量外)に浸けてから、ザルにあげて水気をよく切っておきましょう。
2.ドレッシング用の材料を混ぜ合わせていきます。
今日は粒なしタイプのマスタードを使用していますが、粒ありタイプでも構いません。マスタードがなければ、チューブのカラシをごく少量加えると近い味わいになりますよ。
3.フライパンにオリーブオイルを引き、弱火で温め、1cm角の棒状に切ったベーコンを投入します。
ベーコンから脂がにじみ出し、焼き色が付いてきたらバゲットを加え、ベーコンから出た脂を吸わせながら焼いていきます。パンの周りにバターを溶かして、カリッと風味良く焼き上げます。
脂っぽくない? カロリーは? と思った方がいらっしゃることでしょう。これから野菜もたっぷり食べますから、心配ご無用です。
4.バゲットがこんがり焼けたら先に取り出して、そこに砂肝の湯煎コンフィを投入し、さっと炒め合わせます。そのまま食べられる砂肝の湯煎コンフィは、温める程度にさっと炒めれば十分です。炒め過ぎると硬くなるのでご注意くださいね。
5.水気をよく切った野菜をお皿の上にふわっと盛り付け、その上に炒めた砂肝の湯煎コンフィとベーコンを豪快にのせ、先ほど作ったドレッシングをかけます。
6.半分にカットしたゆで卵(半熟)とバゲットをあしらい、黒こしょうをたっぷり振れば、リヨン風サラダの完成です!
さっぱりとしたドレッシングがかかった野菜に対して、砂肝の湯煎コンフィ、ベーコン、バターのきいたバゲットという、異なる食感や油分を持った食材がランダムに口に入ることで、まったく飽きることなく食べすすめることができます。
クレソンなど野菜の主張もしっかりと感じられ、いつも食べているサラダとは少し違った感覚をお楽しみいただけるかと思います。
リヨン風サラダには、よく冷えたロゼワインがおすすめなので、ぜひ一緒に楽しんでみてくださいね。
砂肝の湯煎コンフィの冷凍保存と解凍の方法
最後に、砂肝の湯煎コンフィの保存方法についてです。
砂肝の湯煎コンフィは、多めに作って冷凍で保存することが可能です。ジッパー付き保存袋などに、オイルと一緒に入れて冷凍してください。30日程度は問題なく持ちますので、こちらを目安に食べ切るようにしてください。
解凍する場合は、そのまま冷蔵庫に移して一晩置き、オイルに浸した状態でゆっくりと解凍してください。ちなみに解凍後、冷たいまま食べてもおいしいですよ。
※冷蔵庫で保存する場合は、砂肝が常にオイルに浸った状態で5日〜1週間を目安に食べ切るようにしてください。
まとめ
砂肝の湯煎コンフィはいかがでしたか?
下処理や加熱に時間がかかりますが、シンプルな材料で作れる手軽さや、湯煎にかけてしまえば待つのみで失敗しづらいことがこのレシピの特徴です。
アイデア次第でアレンジも幅広くできますので、気になった方は、ぜひ試してみてくださいね。
書いた人:美窪たえ
料理する人、食べる人。J.S.A.認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA。OLからバーテンダー⇒日本料理人⇒フレンチコック⇒アメリカンデリという、異色の経歴を持つ料理家。料理のおいしさと酒への思いを発信するユニット[おとな料理制作室]としても活動。著書『おとな料理制作室へようこそ』(ワニブックス)が好評発売中。
August 19, 2022 at 06:00AM
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