第104回全国高校野球選手権千葉大会(7月9日開幕)の組み合わせ抽選会が23日、千葉市内で行われた。春夏通じ県内最多20度の甲子園出場を誇り、74年夏には日本一も達成している銚子商だが、05年を最後に聖地から遠ざかる。初戦は7月13日に、佐原-木更津の勝者との対戦が決定。当時の「黒潮打線」を知らない選手たちが、新たな伝説を作る夏が来る。この日はほかに、岩手、山梨、大阪などでも抽選会が行われた。

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古豪ではなく、強豪と言わせたいー。銚子商・久保形怜司主将(3年)は「古豪は昔、強かったけど今は違う、というイメージ。今強いと言われたい」と力強く話した。

昨秋、県大会1回戦で敗戦すると、「チームを変える」と改革に挑んだ。「やり切る」をスローガンに掲げ「自分たちの手で強くする」と、練習ではお互いにアドバイスを送り合った。ときに厳しい言葉もあったが、仲間の意見に耳を傾け、前を向いた。

そんな選手たちのやる気に、沢田洋一監督(41)も動いた。保護者会にiPadを購入してもらい、選手たちはプレーを撮影。プロ野球選手の動画と比較しながら研究した。

指導法も変化した。「1つのミスを怒ることをやめました」。選手たちの試行錯誤を見守り、反省するのは練習や試合が終わった後。チームの雰囲気はガラリと変わり、失点しても下を向かず「次、抑えよう」と前向きな声で粘り強く戦った。「まずは選手たちに考えさせる。わからなければ話を聞く。指導が一方通行ではなくなりました」と手応えを感じている。

強打者はいない。つなぎの打線で得点を重ね、春は県準優勝で、関東大会にも出場した。久保形は「切れ目のない打線を『黒潮打線』と言うなら、僕らにピッタリ。今の強い気持ちをプラスして、新しい銚子商野球を築きたい」と、伝統を引き継ぐ覚悟もできた。

土日の練習試合にはたくさんのファンが詰めかける。沢田監督は「17年も甲子園から遠ざかり、中には『もう無理だろう』という声も耳にする。でも、子どもたちは負けん気が強い。勝って覆したい」。漁師町・銚子で培った反骨心で、新時代の「銚子商伝説」が今、幕を開ける。【保坂淑子】

◆黒潮打線 74年(昭49)夏の銚子商は、3年生でエースの土屋正勝(元中日、ロッテ)、2年生で4番を打った篠塚利夫(元巨人)を擁して全国制覇。決勝の防府商(山口)戦に7-0で大勝するなど、5試合で計29得点を奪う破壊力で、豪快な打撃から「黒潮打線」として恐れられた。