島嶼(とうしょ)部を除いた東京都で唯一の村、檜原村。面積の約93%が森林の村で、林業の形が変わろうとしている。
日本は国土の約3分の2を林野が占める世界有数の森林大国。しかし、戦後の高度成長期の終わりとともにかつて盛んだった林業は衰退している。林業従事者は昭和55年の約14万6千人から、平成27年には約4万5千人にまで減少。木材価格も昭和55年をピークに、約4分の1にまで落ち込んだ。戦後に植樹された木が育っても伐採する人手が足りていないのが現状だ。
檜原村を拠点にする林業会社「東京チェンソーズ」の青木亮輔代表(45)
は「五、六十年かけて育てた杉の丸太が、数千円にしかならない。これでは若者が林業に参入しない」と危惧する。
青木さんが取り組むのは、従来の建築用木材販売に頼った経営から、森林や木材に付加価値をつけた「小さくて強い林業」への転換。同社では、杉やヒノキなどの樹木の好きな部分が買える「1本まるごと」の販売が好調だ。
これまで廃棄していた根や枝葉が、イベント会場の装飾や舞台装置などさまざまな用途で購入されているという。昨年度は、売り上げの9割以上を丸太販売以外が占めた。また、会員制で社有林を開放する事業も始めた。
村も地元産木材を活用した村立図書館の建設などで、地元林業を後押しする。昨年11月には東京チェンソーズも関わり木材を楽しめる美術館をオープンした。これまで丸太が素通りしていただけの村に森林が育んだ雇用と産業が実を結びつつある。
一過性ではない地域に根ざした「小さくて強い林業」。広がれば、見過ごされてきた日本の山林が宝の山へと姿を変えるかもしれない。
(写真報道局 川口良介)
February 13, 2022 at 09:40AM
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