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<土曜訪問>「使って楽しい」を作る 動物や草花を大胆に描いた器 ... - 東京新聞

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 平皿や盛り鉢に大胆に絵付けされた動物や草花。鹿児島睦さん(56)が作る器は、見る人の心をわくわくさせる。国内外の企業と共同して商品のデザインも手がけており、その多彩な仕事を紹介する初の大規模展覧会「鹿児島睦 まいにち」展が、立川市のPLAY!MUSEUMで開かれている(来年1月8日まで)。制作に込める思いを知りたく、会場を訪ねた。

 鹿児島さんの作品世界に浸れる、ぜいたくな空間だ。「あさごはん」「ひるごはん」「ばんごはん」のシチュエーションに合わせ、新作の器が大きなテーブルに並んでいる。黒地に動物や草花の図案がカラフルに彩られた器や、酸化鉄を含んだ顔料で絵付けした「鉄絵」の器、図案の周りを削り取った「搔(か)き落とし」を用いた器…さまざまな技法を駆使し、いろんな表情を見せている。

 愛くるしい器の世界に静かに悶絶(もんぜつ)していると、鹿児島さんの話に驚いた。「私が作っている物は作品でもあるけど、器である以上、道具でもある。であれば、主義主張や物語は全く必要ない。むしろ邪魔になってしまう。できるだけ自分の感情をなくし、皿の中にデザインを落とし込む仕事に専念しています」

 馬やクマなど、デフォルメされた動物たちが描かれており、一見すると物語的でもある。が、「動物を描きたいのではなく、どう構成したら器にとって効果的かを考えています」。器に物語を込めないために、動物たちの視線はあえて外すように描くという。植物もチューリップみたいな花に、ガーベラのような葉っぱを組み合わせるなど、イメージを限定させないよう、“魔法”をかけている。

鹿児島睦さんの展覧会に展示されている器

鹿児島睦さんの展覧会に展示されている器

 鹿児島さんが陶芸に触れたのは、物作りをしていた祖父がきっかけだった。「とてもバイタリティーのある人で、興味のあることは何でもやっちゃうタイプ」。廃品などを使って機械や道具を手作りし、果ては作業場まで建ててしまった。そんな祖父に突然の陶芸ブームがやってきたのは、鹿児島さんが小学1年生の時。高齢で陶芸を楽しむ祖父の姿を見て、「技術を身に付けておいたら、おじいちゃんみたいにずっと楽しく過ごせそうだ」と、美術大学の陶芸専攻に進んだ。

 卒業後は12年間、福岡市内のインテリアショップで働いた。1カ所目の会社はクラフトのギャラリーも運営しており、百貨店など出展先との交渉の仕方やコスト意識などを学び、「プロの陶芸家になる上で近道になった」という。2カ所目の会社では売り場や品質管理、マネジメントなど幅広く担当。毎月大量に海外から入荷する商品を検品しながら、「自分で物を作るようになったら、テーブルの真ん中にぽんと置くと、すごく面白くなるような器を作ろう」と、自身のコンセプトを固めていった。

 周りの助言を受けて退職したのは2002年、35歳の時。福岡市内の祖父の作業場近くに自宅とアトリエを構え、作陶に専念した。独立当時、周りに流通するのは白や黒色の器ばかりで、イラスト的な動物を大胆に配した鹿児島さんの器は「おもちゃみたいな器を作ってどうするの?」などと奇異な目で見られたという。ただ、徐々にその独自の作風から人気を集め、13年以降は台湾やロサンゼルス、ロンドンで定期的に個展を開催。今では国内外にコレクターがいる。

 海外では、「北欧の作家の作品?」「南仏の工芸品?」などと声を掛けられるという。「無国籍な感じが好まれるのかもしれない。どこの国の物にも見えて、どこの国の物でもないというのは、すごい褒め言葉」と語る。

 「とにかく見て楽しくなる物じゃないといけない」と言う鹿児島さん。展覧会場には器のほか、企業とコラボレーションしてデザインを担当した菓子缶や屛風(びょうぶ)などもあるが、こうした品々が毎日の暮らしに寄り添ってくれると、ちょっとした特別感を味わえ、ハッピーな気持ちになるはず。そう伝えると、「そういう使われ方をしたら、私の器は幸せだろうなと思います」。照れくさそうにほほ笑んだ。 (飯田樹与)

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