歴史や伝統を大切にすることはもちろん、それを未来へとつなげていく物語こそ重要だ。デザインに心を奪われ、機能に夢中になる。そして気になりだすと、見えないことがもっと知りたくなる。「どうしてこのデザインが誕生したのか」、「どのように作られているのか」、「どのような歴史を辿ってきたのか」――。時計には製作者やブランドの想いが込められたストーリーがあり、知れば知るほど虜になってしまう。そんな素敵なトム フォードの魅力を紹介しよう。
N.002 オーシャン プラスチック スポーツ
ダイバーズウォッチのスタイルを取り入れた新しいモデルはブラックとホワイトの2種類。ブラックとホワイトをハイコントラストで対比させた視認性抜群のダイアルも印象的だ。ケースと回転ベゼルのインレイ、引き通しストラップなどに100％海洋プラスチックを用い、リュウズ、ケースバック、バックルなどはステンレススティール製。自動巻き。ケース直径43mm、10気圧防水。各24万9700円。
毎年800万トン以上のプラスチックゴミが海洋を汚染。スイスのタイド・オーシャン社はそれらを利用して100％海洋プラスチック素材を開発し、廃棄物に新たな価値を生む。
再生プラスチックから始まる未来のウォッチメイキング
時計の歴史や伝統にまつわる物語は数限りなくあるが、未来へとつなげていく物語は始まったばかり。注目すべきは素材や製造全般におけるエコやサステナビリティへの取り組みだ。時計の分野でその先陣を切るのがトム フォード。2020年発表の「N.002オーシャン プラスチック」は、スイスに拠点を置き、海洋プラスチックのリサイクル素材のサプライヤーとして知られるタイド・オーシャン社の協力のもと、ケースからストラップ、パッケージのすべてにこの素材を用いて注目を浴びた話題作。
第2弾となる2022年の「N.002オーシャンプラスチック スポーツ」は、100％海洋プラスチックで作られた初の自動巻き時計だ。ダイバーズウォッチのスタイルを取り入れたデザインは、いかにもスタイリッシュでオシャレだが、そこに海洋環境問題との関連をユーザーに意識させる伏線が張られているところがなんとも絶妙である。海洋プラスチックの粒子をスイスまでカーボンニュートラルで輸送し、太陽エネルギーを利用してスイスで製造したことも見逃せないエピソード。地球環境にこれ以上の負荷をかけずに持続可能なもの作りを実現するための示唆に富んだショーケースとして貴重だ。
問い合わせ＝トム フォード タイムピース Tel.03-4360-5608
文＝菅原茂 写真＝近藤正一
（ENGINE2022年8月号）
July 02, 2022 at 01:12PM
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