ネット連動の新"販売プラットホーム"
春らしいやわらかな色合いの美濃焼のピアスに温かいものを注ぐと模様が現れるマグカップ。
この記事の画像(13枚)職人技が光る製品が並んでいるのは、埼玉・所沢市にある「かずとデンタルクリニック」。
棚の下の段に並べられたのは、木でできたおもちゃのカメラ。
岩手の家具職人が、一つ一つ丁寧に削って作ったものだ。
製品の横に並んだプレートにスマートフォンを近づけると、ICチップが反応し、製品ページへ。
展示されている製品をオンラインで購入することができる。
こうした職人が作った製品とさまざまな販売場所をつなぐのが「カタルスペース」という新たなプラットホーム。
販売場所は店舗だけでなく、病院や美容院、スポーツジムなど多岐にわたる。
クリニックの患者:
新鮮な感じはする。ネコのグラスとかかわいくて、お店だといろんな商品があって、あれに目がとまらないかもしれないが、ここで目立つように少量置いてあったら見つけられる。
製品は、メーカーから購入者に直接送られるため、クリニックでは在庫を置く必要がなく、売れた場合は手数料も入る仕組み。
かずとデンタルクリニック・片桐和人院長:
初診の方などはかなり緊張しているので、心を和ませる意味で、こういうものを置いておくとすごくいい。しかも職人の手助けもできるところがいい。
埋もれている"いい物"の販路を見つける
このプラットホームを手掛ける「カタルジャパン」の吉本正社長は、「日本には、全国にいいものがあるが、まだまだ埋もれているものがたくさんある。販路を見つけてあげる手伝いができないか、というのがわれわれの狙い」と話す。
そして重視しているのが、モノの背景やモノと出合うときの"ストーリー"。
例えば、かずとデンタルクリニックに置かれたカラフルな南京椅子。
子どもが多く訪れることや、温かみのある色や形が院長に合っていると感じ、吉本さんが選んだという。
カタルジャパン・吉本正社長:
実際にモノを見ていいなと思うだけではなく、どんな場所で、どんなきっかけで、どんな方からの紹介で製品に出会うか。それが1つのストーリーになっていく。それが魅力的に映れば映るほど、製品の訴求力が変わってくる。
現在は東京ガスやJTB、ドコモなど大手企業とも提携。
例えば、岐阜県内のドコモショップで地元の物産を置くといった取り組みをしている。
カタルジャパン・吉本正社長:
消費がモノからコトに移ってきていると言われるが、コトで終わらせるだけではなく、コトとモノを連動させていく。
旅行も、行っておしまいではなく、『ここに行って、これがおいしかった』と思うと、ECにつながって買えるといったコトモノ連動を重視していきたい。
製造者と客を直接結ぶ販売手法に注目
三田友梨佳キャスター:
この新たな販売プラットホームについて、バイヤーとして多くの商品の仕入れや開発に携わってきた、マーケティングアナリストの渡辺広明さんに聞きます。
こだわりの商品と販売スペースを結ぶ新たなプラットホーム、どうご覧になりましたか?
マーケティングアナリスト・渡辺広明氏:
中小メーカーにとっては、販路の拡大は大きな悩みです。
今回のような、職人仕事から生まれるロット数の少ないこだわりの商品は、どこでどうやって売るかが常に課題です。
当然、ECで専売するという手もありますが、顧客がリアルに見たり触ったりできないというマイナス面もあるんです。
そこで、商品を置いてもらうようにリアル店舗を開拓するという方法があるんですが、地方のメーカーとかを中心にすごく大変で、今回の歯医者のような小売りを常にやっていないところを探すのは極めて困難です。
そういった意味で、課題を解決する今回のプラットホームは、素晴らしい形になっていると考えます。
三田キャスター:
わたしたち消費者にとっても、リアル店舗とネット通販の両方のいいところを兼ねている印象もありますね。
渡辺広明氏:
実際の商品を見たり触ったりしたあとにオンライン購入できる「ショールーミング型」という販売機会があるんですが、今回はその機会が与えられて、かつ効率的なサービスが魅力的だと思います。
市場は大量消費が続いていますが、一方、消費の好みが多様化しているので、こだわりの商品の人気はあがってきています。
そういったこだわり商品は、流通業界では「C2M」(Consumer to Manufacturer・消費者から製造者へ)という手法が一般的になりつつあって、製造者が直接顧客と結びついて、顧客に応じて商品を作るというのがトレンドになりつつあるんです。
今後、このような消費スタイルが拡大していく中で、今回のようなお客さまと製造者が直接つながるサービスをアシストするようなプラットフォーマーの役割は、これからどんどん増していくと考えます。
三田キャスター:
こうしたリアルとネットを融合させた新たな流通の形によって、中小や特に地方メーカーが抱える販路に関する課題が解決へとつながることが期待されます。
(「Live News α」4月19日放送分)
April 20, 2021 at 06:30PM
https://www.fnn.jp/articles/-/171987
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