千葉大学が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の重症化を予測するシステムの開発に向け、臨床研究を始めた。肺の血栓などを作るタンパク質を重症化の診断マーカーとして利用するのが特徴で、年内に研究を終える計画だ。このシステムが実用化されれば、重症化が心配される患者を早期に治療することで重症患者を減らし、医療機関の負担軽減にもつながると期待される。
千葉大学大学院の中山俊憲医学研究院長と同大学医学部附属病院の横手幸太郎病院長らが8月28日に記者会見し、臨床研究計画を発表した。発表によると、中山医学研究院長らの研究グループは、COVID-19の重症患者では肺梗塞や血栓症などが多いことから、血管の疾患を引き起こす「Myl9」(ミオシン軽鎖9)と呼ばれるタンパク質に着目。重症化に伴ってMyl9の濃度も上昇すると想定し、千葉県や東京都の感染症指定病院などに入院している100人の患者を対象に週1回定期的に採血してMyl9の濃度と重症化の相関関係を調べる。
Myl9は小さな細胞内タンパク質で、通常の状態では血小板の中に蓄えられている。ウイルス感染などにより血小板が活性化すると血小板の外に放出され、固くなって血栓を作り、気管支や血管の炎症の原因となる。これまでに血管炎や関節リウマチ、気管支ぜんそく、炎症性腸疾患などの重症患者は血中のMyl9濃度が高いことが分かっている。
研究グループは、臨床研究によってMyl9がCOVID-19重症化の診断マーカーとして活用できることが確認されれば、このマーカーを検査キットに組み込むなどして重症化の可能性を早期に判定する予測システムの実用化を進めるという。
世界保健機関(WHO)などはCOVID-19の重症化要因として、糖尿病や心臓血管疾患、慢性の呼吸器疾患、腎臓病などの持病を挙げている。厚生労働省に対策を助言する専門家組織(アドバイザリーボード)は男性の方が女性より重症化リスクが高く、血液中の尿酸値が高い高尿酸血症もリスクが高いとしている。
September 08, 2020 at 01:55PM
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