★それにしてもメディアは新総裁・菅義偉の言う「安倍政治の継承」とやらを垂れ流すが、安倍政治の検証や総括はやったのだろうか。それなしに安倍政治の継承というのは何のことなのか。何を指しているとみるべきなのか。総裁選挙に飛びつき、候補者3人の横顔に飛びつき、次は人事や解散の予測だ。総裁選挙の最中、次の総裁とメディアの距離感を問う声があったが、国民に判断を丸投げするメディアの雑な報道ぶりにもメスを入れるべきだ。

★新総裁選出後、菅は「新型コロナウイルスの拡大という国難にあり、政治の空白は許されない」「この危機を乗り越え、国民が安定した生活ができるように、安倍首相の取り組みを継承し進めていく。私にはその使命があると認識している」と歴史の必然性を語ったが、常識的に見れば政治空白とは解散・総選挙を指し、コロナ禍の中、解散はしないと読める。また「この国を前に進めよう。役所の縦割り既得権益、あしき前例主義を打破し規制改革を進める。『働く内閣』を作っていく」と、霞が関の官僚を諸悪に例えた。

★だが、既得権益とは、役所にのみはびこるわけではなく、与党の部会と族議員が作り出したものではないのか。昨年末以来、ふるさと納税は税制として間違っていると菅に進言し聞き入れられないまま退官した元総務省自治税務局長・平嶋彰英が証言するように問題点を指摘する官僚を遠ざけるやり方、つまり政府が政策を決めた後も反対する官僚は異動させるイエスマンだけにする方針を菅は13日、テレビ番組で示した。「私ども(政治家)は選挙で選ばれている。何をやるという方向を決定したのに、反対するのであれば異動してもらう」とし、内閣人事局の在り方について、菅も見直す考えは「ない」とした。実態は与党議員のプロセスを見せず、官僚に反対させない仕組みの中、新たな既得権を作っていくことが問題なのではないか。官僚が「働く内閣」の邪魔をするのではなく、既得権維持に官僚が邪魔になるということではないのだろうか。野党はそれを突けるのだろうか。政治と官僚の関係はますますいびつになっていくのだろうか。(K)※敬称略