宗教的なペインティングや染毛料などとして、5000年以上も前から愛されてきたヘナ。古代エジプトのクレオパトラもヘナでおしゃれを楽しんだという。しかし現代では自然派で頭皮や髪に優しいイメージはあるものの、使いこなすのが難しいカラー剤というイメージを持つ人も多い。
そんなヘナに現代の風を吹き込み、体を思いやりながら、満足のいくデザインをかなえるのが、トータルビューティカンパニーの「ウカ(UKA)」が提案する「ヘナ シリーズ」だ。沖縄県石垣島で有機栽培されたヘナをぜいたくに使った同リーズは、美しさと健康に真剣に向き合うウカならではのものづくりの姿勢が反映されている。顧客に対してケミカルな施術を行うからこそ、「ヘアカラーのオルタナティブ(選択肢)を提供する必要がある」と話す渡邉弘幸ウカ代表取締役CEOに、製品化の道のりから、「ウカ」が思い描くヘアカラーの未来を聞いた。
伸びる売り上げに対して頭皮に悩む顧客が増
美容師の複雑な思い
WWD:「ヘナシリーズ」を立ち上げた背景を教えて。
渡邉弘幸ウカ代表取締役CEO(以下、渡邉):10年ほど前にさかのぼる。当時からヘアカラー後の残留アルカリや、頭皮の経皮吸収率の高さは言われていて、体への負担があることは美容人としてはよく知った話だった。しかし、われわれはヘアカラーを提供する立場でもあるので、頭皮・毛髪ケアに着目した「ヘッドセラピーシリーズ」やスカルプブラシ「ケンザン」のプロデュース、ヘッドスパ、頭皮クレンジングといった施術で顧客の頭皮の健康にアプローチをしてきた。それと同時に、美容師のヘアカラーの技術が年々向上。コロナ禍という時勢が後押しして、ハイトーンカラーがブームになった。ヘアカラー比率が高まり、売り上げが伸張することはとても喜ばしいことだが、その影でヘアカラーによるジアミンアレルギーに悩むお客さまが増えてきたのだ。ジアミンアレルギーは花粉症と同じようにキャパシティを超えると発症するといわれる。それゆえに若い頃から繰り返しカラーをしてきた大人世代は特に悩んでいる人が多い。アレルギーの呼水は解明されていないが、ヘアカラー人口が増えれば、それだけアレルギーに悩む人が増えると言えるだろう。カラー剤が頭皮につかないように塗るようにしても、少量のジアミンに反応してしまう人もいる。それでも我慢して白髪を隠すためにカラーをしたいという要望に美容師たちはとても複雑な思いを感じていた。売り上げは上がるものの、お客さまにつらい思いをさせてしまっている...。経営者としても、なんとかしてヘアカラーの課題を解決したいと思ってきた。
WWD:そのような背景があって、ヘナに目をつけた?
渡邉:ヘアスタイリストのshucoさんと妻の季穂(ネイリストの渡邉季穂さん)が話しているのを聞いて、ヘナに興味を持った。shucoさんは艶のある美しい髪色をヘナで叶えていて、毛先はブリーチを施して、ヘナを使いながらもデザインも楽しんでもいたのだ。自分たちが考えているよりも、ヘナには可能性があるのかもしれないと思った。
その年の全収穫量の買取を約束
ヘナが石垣の名産になるかもしれない
WWD:市場のヘナはインド産が多いのでは。なぜ石垣産を選んだのか。
渡邉:当時はコロナ禍だったこともあり、インドに渡航することが難しかった。現地に足を運べないのでは、どのような生産者が、どうやって作っているのかを見ることができない。それではぼくたちのものづくりではないと思った。そういった意味では国内に目を向けるしか無かった。インターネットで情報収集をする中で、沖縄県の石垣島でヘナを育てているおばあのストーリーを見つけた。「ウカフェ」に野菜を卸してくれていた農家さんとのご縁で繋がりのあった石垣島で平田観光を営む奥平さんに10年ぶりに連絡。そのおばあの娘さんと奥平さんはなんと偶然にも同級生で(笑)。すぐに会うことができた。
WWD:そのおばあのヘナを仕入れている?
渡邉:おばあの畑では量産していないということで、もっと大きな規模で畑をやっている農家さんを紹介してもらった。しかし、東京から美容室がやって来ても取引が長く続くことがあまり無かったそうで、「またそのパターンか」と思われてしまったらしい。信頼を得るためにも、その年に収穫された分は全て買い取るという約束をした。さらにスタッフを連れて収穫を手伝いに乗り込んだことも。結果として、「『ウカ』だから一緒にものづくりをしたい」と思ってもらえたのではないだろうか。
WWD:石垣産のヘナがあることを知らない人も多いのでは。
渡邉:たしかにあまり知られていない。この取り組みをビジネスとして発展させていくためには、農家だけでなく、行政が石垣の名産、つまりはブランド農作物として、ヘナを認識することも必要だと思っている。石垣だけでなく沖縄の名産といえばサトウキビが思い浮かぶ人も多いだろう。サトウキビの生産には行政の金銭的なサポートが大きく、ゆえにサトウキビ農家が多いのだ。もしヘナがヘアカラー市場で存在感を増し、行政の協力を得ることができれば、石垣でヘナを作る農家が増えるかもしれない。生産量が増えれば、流通量だって増える。良い循環が生まれるはずだ。だから石垣市長にアポをとって、僕らがやろうとしていることやヘアカラー市場、ジアミンアレルギーについてプレゼンして、今もコミュニケーションを取っている。ヘアカラーのオルタナティブとしてヘナが一定の認知を得ていけば、いずれはサトウキビに並ぶ石垣の名産にヘナがなる日だって来るかもしれない。
WWD:市場に出回るヘナと「ウカ」の「ヘナシリーズ」の違いはどのようなところ?
渡邉:市場で多くを占めるのがインド産のヘナ。現状インドに足を運べていないので、調べた範囲だが、大量生産で葉と枝を選別せずに大きな枝も小枝も含めて粉砕機にかけてしまう商品もあるそうだ。対して、石垣では手で摘み、乾燥させ、葉のみを仕分けして粉砕機にかけて粉末にする。非常にプリミティブな作り方をしている。農薬・化学肥料を一切使用せず土づくりから始めているところもこだわりだ。収穫した後のヘナとインディゴの枝を燃やして炭にして追肥することで土壌がアルカリ性に傾くと、色素成分を濃く含有するヘナを収穫することができる。石垣のヘナは一般的に流通するヘナに比べて香りがマイルドなのも特徴。年に2回、多くて3回、季節ごとに収穫したものを粉末にして製品化するので、とてもフレッシュ。有機栽培の野菜が安心安全で、旬なものを食すという習慣が認知されつつあるが、頭皮につけるものも同じ考え方をして欲しい。
選択肢としてノンケミカルも用意するのが
美容室としての務め
WWD:製品化まではどのぐらいの時間がかかったのか。色の表現も難しいのでは。
渡邉:玉城さんとの出会いから3年近くが経った。彼女が持っていたヘナとインディゴを分けていただき、使ってみたのがスタート。その後、ヘナへのきっかけを作ってくれたshucoさんや、保科(保科真紀スタイリスト)をはじめスタイリストたちとともに、一から学んで行った。スタイリストたちは2年ほどかけて、ヘナとインディゴを使いこなすために、訓練を積み重ねた。昨年の「アジアビューティエキスポ」のヘアショーでは、ヘナとインディゴを使ってどこまでデザインで遊べるかに挑戦した。
WWD:昨年末からはサロンでヘナの施術を体験できるモニターを募っている。反響はどうか。
渡邉:1000ケースを目標に進めているところ。昨年11月にスタートして今年の3月までで、400人以上が体験している。2回目のリピート率は50%超。3回までは無料で体験が可能で、3回目体験以降の顧客化は肌感覚では70%程度となかなか高い水準になっている。体験をきっかけに、新規の顧客も増えている。スタッフたちも実際にヘナの仕上がりに満足している顧客の姿を見ると、机上の空論ではなくニーズを感じてもらえている。始めた当初はヘアカラー比率の中でも1〜2%いけばいい方ではと言っていたスタッフも、今では12%以上は伸びると言ってくれている。「ウカ」にはヘアで来店する顧客が年間10万人いて、そのうちヘアカラーを受けるのは7万人。そのうち1割強に上るとすれば、年間1万人以上がヘナでカラーをするという未来も遠くない。そのためにはまずは1000ケースのデータを集めたい。1000件のデータがあれば統計的にも十分な数字。これまでヘナにまつわる統計的なデータがなかったこともあり琉球大学の荒川雅志教授が興味を持ってくれて、学会発表に向けて一緒に進めているところ。先ほどの行政を巻き込むこともそうだが、うまくいくかはさておき、ヘナを拡げるためにはいち美容室の中だけでなく、親和性のあるところと手を組むことも必要だ。
WWD:サロンの施術ではどうしてもケミカルも必要。どう考えている?
渡邉:これほどヘアカラーがブームになっている昨今、既存のヘアカラーを否定するのではなく、美容室としてノンケミカルの選択肢を作る責任があると考えている。ときにヘナでデトックスするとか、コンディション作りに使ってもいいだろう。コロナ禍を経て、体を労わることが増えたことで、ヘナに共感してもらいやすい時代になったと思っている。
WWD:「ウカ」が思い描くヘアカラーの未来図とは。
渡邉:ここ数年で日本人の髪色のバリエーションは圧倒的に増えた。黒髪の日本人がこれほどヘアカラーを楽しむようになるとは誰も想像していなかった。すごくポジティブな流れだと思う。ファッションやメイクの選択肢も増え、自分の個性を表現しやすくなることはとてもいいこと。一方で、“陽”があれば“陰”があるように、業界として“陰”に対応することも必要だ。このままポジティブに髪色を楽しむ空気感はどんどん広がっていく。その一方で、体の不調を感じている人に対するアプローチも忘れないこと。それがわれわれの、そして業界としての務めだと考えている。
May 17, 2023 at 12:02PM
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