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「ゼロから作るのではなく、なおすことで人の人生に関わる」修復 ... - J-WAVE

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今回は、鳥取、京都、東京の3つの拠点で活動する修復専門家、河井菜摘さんのHidden Story。まずは、修復専門家とはどんなお仕事なのか、伺いました。

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私の仕事は、陶磁器や漆器などの器や古美術品を修復することです。欠損したり、割れたりした器や重箱などをお預かりして修復し、持ち主の方にお返しするような仕事です。」

河井さんがおこなう修復の方法は『共直し』、そして『金継ぎ』。この2つの方法、河井さんに解説いただきました。

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「『共直し』は、割れているところ・欠けているところをわからなく直すような技法で、それが自分の手の中で行われる、その変わっていく様が魔法みたいだなと思って。上手く直せると、本当にどこが修理したかわからないようになるんです。『金継ぎ』は、今いろんなやり方が提案されてはいるんですが、本来は漆を使って全て自然素材で修復するような技法で、バラバラになった器を漆で接着して、欠けたところを漆と木の粉とか土の粉とかを混ぜたもので充填して、傷口をその漆で塗って、金粉をまいて景色として見立てるような技法です。」

学生時代、京都市立芸術大学で漆のことを学んだ河井さん。その後、京都の茶道具の会社で漆を使った修復の仕事を担当されました。

「そこの会社はすごく色んなものが入ってくる会社というか、古い漆器や茶道具のおなつめとか軸先や、古い時計、船とかが修理に入ってくることもあって、すごく鍛えられました。もちろん漆を使って修復もするし、違う画財などを使うこともありました。それで、色んな画材を使う中で改めて漆が接着剤になったりとか。あとは、漆は他の塗料と比べて水にもシンナーにも乾いてしまうと落ちなかったりとか、塗るだけじゃなくて塗った上に粉をまいたりすることで質感を変えることもできるし、今まで作品作りで関わってきた漆と違う側面を見ることができて、ゼロから作るものづくりよりも、もともとある古いものに手をかけて蘇らせる、というような仕事がすごく自分に何かフィットするなという風に思って、これを仕事にしたいと思いました。」

現在は、鳥取、京都、東京の3つの拠点で活動されている河井菜摘さん。鳥取に拠点をかまえたきっかけは、インスグラムでフォローしていた方が、とある情報をアップされたことだったそうです。

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「その方が ある日突然、プロフィール欄に【引っ越すことになったので、家のもらい手を探しています】という風に書いていて。それで、へーと思って興味本位でいくらぐらいなのかなと問い合わせしたら、すぐにメールが返ってきて。【家は猫が結構畳とかボロボロにしているし、50万ぐらいで売れたらいいなと思っています。で、車がない人だったら車がないとこっちの生活は大変だから置いて行ってもいいです。雪用のタイヤも置いていきます。もっと安くする気もあります】と書いてあって。そんな話ある?と思いましたね。 」

結局、50万より少し少ない金額で家と車を譲り受け、河井さんの鳥取の拠点ができた、ということでした。そんな河井さん、実際どんなものを修復されてきたのでしょうか?

「毎日使うような日用品のカップや思い出の品、新婚旅行で買ったおそろいのカップとかお茶碗など。あとは学生時代に親友と一緒におそろいで買ったポットとか、お父さんとか旦那さんの形見の品とか色々ですね。それで古美術商の方からは、兜や甲冑などの依頼を頂いたりもします。兜や甲冑は金属に漆を塗ったりとか皮に塗ったりとか色々なんですが、漆でできているものが多いんですね。そういうものがどうしても経年変化で割れたりとか欠けたりとか折れたりしているものを修繕してお返しします。古美術商の方って古い時代感を大事にしている方が多いので、ピカピカに新しく塗り直さずに、修理した箇所も古びた風合いでお返しするパターンが多いです。」

《ゼロからのものづくり》ではなく、壊れたり、欠けたりしたものを《なおす》こと。この仕事について、河井さんはこんな風に感じています。

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「人の人生に関わることなのかな、という風には思いますね。ゼロからものづくりをすると、自分の感性を信じて認められるみたいな形なのかなと思うんですが、例えば大切なお品物をご依頼いただいて直す時に、やっぱり大切なものだから綺麗に修理して、かつ経年変化が少ないようにしっかりと直す、というのを念頭に修理するんです。お返しする時も、ちゃんと喜んでもらえるかな?というのは、いつも少し不安がありながらお渡しします。例えば、亡くなってしまったご家族の大切にしていた器だと、直った様子を見た時に、その故人・大切だった方に会った時のような顔をされる方の表情を見ることが時々あって。すごく貴重な仕事をさせてもらっているな、というふうに思います。」

漆、金継ぎ、共直し。心と心をつなぐ活動が続きます。

河井菜摘さん ウェブサイト

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May 26, 2023 at 08:20AM
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