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地方局は「オワコン」か? “TVerにない価値”を作るための課題整理 - ビジネス+IT

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稲田豊史のコンテンツビジネス疑問氷解

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ローカル局(地方局)が苦境に立たされている。テレビ業界全体としての広告収入落ち込みに加え、「地域メディアとしての存在意義」が問われているからだ。彼らの間でいま何が課題になっているのか。生き残るためにどのような策を講じているのか。実名・匿名を混じえた関係者ヒアリングから明らかにしたい。

執筆:編集者/ライター 稲田豊史

執筆:編集者/ライター 稲田豊史

キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。 著書は『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』。おもな編集書籍は『押井言論 2012-2015』(押井守・著/サイゾー)、『ヤンキーマンガガイドブック』(DU BOOKS)、『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著/キネマ旬報社)。「サイゾー」「ビジネス+IT」「SPA!」「女子SPA!」などで執筆中。 (詳細

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ローカル局の生き残り

(Photo/Shutterstock.com)

ローカル局が危ない?

 今年2月、TVerの好調について取材を進めていた中で、あるテレビ局(在京キー局)の局員が「これからは、ますますローカル局が苦しくなる」と口にした。

「自分たちで制作しているのは主に朝と夕方のローカル情報番組だけ、それ以外はキー局制作の番組を流しているような制作力のない地方の局は、存在意義がなくなっていくでしょう。だって電波を発信するテレビ局なんかなくても、インターネット配信で全国津々浦々、どこからでもキー局の番組が見られちゃうわけですから。それこそ視聴者側は『TVerがあればいいじゃん』となってしまう。もちろん自社制作の番組をTVerで見せるという意義はありますが、TVerだと全国の視聴者が観るので、ターゲット含有率が低いと判断されてローカルCMが入らない。つまりローカル局のCM収入が激減する」(在京キー局局員・A氏)

 A氏の言う「キー局制作の番組を流している」ローカル局とは、地上波民放のいわゆる系列局(ネットワーク局)のことを指している。各局は在京キー局を中心とした日本テレビ系列、テレビ朝日系列、TBS系列、テレビ東京系列、フジテレビ系列いずれかのネットワークに属しており、ある1つのネットワークに加盟している局を「フルネット局」、複数のネットワークに加盟している局を「クロスネット局」と呼ぶ。

 一方、ネットワークに属していない放送局を独立局と呼び、東京だと東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)がそれにあたる。これら地上波放送局はNHKを除いて全国に127局(キー局含む)あり、全国各地域の決められた放送エリア内で放送を続けているわけだ。

 本稿ではこの系列局と独立局をまとめてローカル局と呼ぶ。ローカル局は今、何を考えているのだろうか。

「テレビ番組」は見られても「テレビ放送」は見られていない?

 日本テレビの社員でありつつ、ローカル局との連携、ライブ配信などを活用したプロジェクトを推し進めるLiveParkの特別顧問・ファウンダーを務める安藤聖泰氏は長らく、全国のローカル局行脚で彼らの悩みをヒアリングしてきた。

「ローカル局には大きく2つの役割があります。1つは、主に東京のキー局や大阪の準キー局で制作された全国ネットの番組を自分たちのエリアで放送するという、インフラとしての役割。もう1つは、放送地域の住民に対して地域の情報を発信するという地域メディアとしての役割。しかしTVerをはじめとした動画配信でキー局の番組がどこでも見られる現状下、中長期的にはインフラとしての役割に大きく依存しすぎる事業モデルは揺らいでいきます」(安藤氏)

 自分たちで制作した番組ではなくキー局制作の番組で放送枠を埋めるメリットは、キー局の番組が得る広告収入の一定割合が、放送したローカル局にも「分配」されることだ。要は、自局で番組を作るよりも収益性が高い。局によっては売上高の3分の1から4分の1をこの収入に頼っている場合もあり、自主制作番組の比率が10%前後の局も少なくないという。

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ローカル局が自主制作するコンテンツは報道・情報番組等が主であり、番組自主制作比率はおおむね10%程度
(出典:「日本民間放送年鑑」各年度をもとに「総務省が作成」)

 しかし同じ番組がTVerで、1週間以内ならいつでも、しかも多様なデジタルデバイスで見られるとあらば、わざわざ放送波をテレビモニタで見る理由はない。
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TVerの2023年5月の動画再生数が前年比1.8倍の3.5億回に達する

 博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の「メディア定点調査2023」によると、スマホやタブレットなどでテレビ番組の見逃し視聴サービスを利用することも「テレビを見ること」だと考えるユーザーは、2023年に11.4%だったところ2023年には26.2%まで増加した。「テレビ番組」は見られているが、「テレビ放送」が見られているとは限らないのだ。

「スマホやタブレットのみならず、メインスクリーンであるリビングのテレビでTVerを見られてしまうので、地上波を見てもらえない。家族がリビングで、いきなりネットで見るようになっている。テレビ局としては非常に辛いというか怖い状況」(関西の独立局幹部・B氏)

 テレビ「放送」が見られない状況が続けば、当然ながらメディアとしての広告価値は下がる。実際「CMスポット単価は下がっており、枠も埋まりきらないので売り上げは良くない」(B氏)そうだ。

 LivePark安藤氏は「TVerなどのエリアを超えた動画配信によって苦境に陥っているというよりは、そもそもテレビ放送全体が落ちていることによる影響が、ローカル局では特に顕著だということ」という見解を示す。

 放送収入が減ることによる弊害の1つとして、B氏の独立局では、予算不足によって制作する番組のバリエーションが減っているのが悩みだという。

「番組予算と人、両方が足りない。予算と人は自社制作のニュース・情報番組に集中させているので、その他の番組制作をどんどんやめている。営業的に成立する番組しか残らない。結果、制作ノウハウが現場に蓄積されない。アイデアを持っている若手はいるが、実現できる状況にない」(B氏) 【次ページ】ローカル局制作の番組はTVerで「埋もれてしまう」

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August 25, 2023 at 05:10AM
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