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多様な生物 学ぶ場作る - 読売新聞オンライン

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 「投網を知っている人はいる? 深いところに投げた方がいいよ」。秋晴れの10月中旬。大津市内の川岸に集まった、地元の環境クラブに所属する幼稚園児から中学生までの18人を前に、川にすむ生き物を捕まえる方法を実演してみせた。続けて挑戦する子どもたち。勢いよく投げる子もいれば、石にかぶせてしまう子もいるが、みな楽しそうだ。軽トラック2台の荷台に並べた12個の水槽に、魚やカエル、ヤゴなどを次々と入れていった。

 水槽を前に「みんなで水族館」の特別授業が始まった。赤い腹が美しい両生類の「アカハライモリ」を手にとって見せたり、とがった口が特徴のコイ科の「ムギツク」について「口で虫を吸い取り、ドンコに自分の卵を育てさせる 托卵たくらん をする魚やで」と特徴を伝えたりする。

 大半の水族館では水槽に手を入れると叱られるが、ここでは関さんらが「手を水でぬらし冷やしてから触ってね。触った後は手を洗って」と声をかけ、無理のない範囲で触れ合う機会が作られる。共に活動するのは、飼育員などを目指す大学生や、希少種のサンショウウオの保護活動に取り組む大学職員らだ。

 「希少種の展示・保全を進めたい」と、今年7月、琵琶湖岸の大津市木戸に小さな水族館「びわこベース」を開館した。

 身近な淡水魚に携わる仕事がしたくて、それまでは、県立琵琶湖博物館で飼育員として勤務し、副館長を務めた京都水族館ではオオサンショウウオの生息環境を再現するなど目玉の展示も手がけた。一方で「多くの水族館では希少種の保護・展示が不十分」との思いがあり、自ら水族館を作ることにした。

 水槽が120以上並ぶびわこベースでは、淡水魚やカエルなど約130種に加え、希少種も展示する。倉庫建設による開発で神戸市北部のすみかを追われた小型のサンショウウオ「セトウチサンショウウオ」は一時保護中で、すみかを整備した後に現地に戻す計画だ。びわこベースの運営は、こうした開発企業からの環境保全対策費などを原資に充てている。

 神戸市出身。小さい頃から魚が大好きで、地元の川などで朝から晩まで、魚を手づかみで捕まえた。「目と歯だけが白い、真っ黒な子どもでした」と笑う。

 約20年前に先輩カメラマンに誘われ、生物が見せる「一瞬」をとらえる写真撮影を始めた。川に潜って水中でシャッターチャンスを待つ。オオサンショウウオが酸素を求めて川面に浮上したり、魚をのみ込んだりする躍動感ある姿をとらえた。生態を知り尽くした専門性を生かし、 爬虫はちゅう 類や両生類の写真集や、図鑑の写真などを数多く手がける。

 びわこベースでは、学術関係者を招いたサイエンスカフェも月1回開き、交流と学びの場となっている。種の保存、環境教育、調査・研究、レクリエーションという四つの機能を兼ね備えた小さな水族館。学術関係者だけでなく、地元の幼稚園児、地域の人など、様々な人々が訪れている。

 「地域の川にいる生き物を知らない人は意外に多い。子どもたちが遊びの中で生き物に触れて、感動し、興味を抱き、学ぶ気持ちになってくれれば。身近な生き物に学び、守る拠点を全国に広げたい」と壮大な夢を語った。(林華代)

     ◇

 大津市在住。専門学校卒業後、県南郷水産センター(大津市)、県立琵琶湖博物館(草津市)、京都水族館(京都市)に勤務。現在は自然写真家で、NHKの人気自然番組「ダーウィンが来た!」の取材協力もしている。子どもらとつくる移動型水族館「みんなで水族館」と「びわこベース」(金・土・日・祝日)を運営。10、11日の午前10時から、大津駅前商店街イベントベースで「まちなか水族館」を開く。まちなか水族館の問い合わせは企画・運営のF&I クリエイト(075・744・6828)。

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December 05, 2022 at 03:00AM
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