煮魚と言えば、「ザ・和食」という感じの王道な料理。きちんと鍋で作らなくてはいけなくて、けっこう難しいものという印象があります。
ところが、料理家の山口祐加さんによると、「実は切り身と電子レンジを使えば、簡単にできる料理なんですよ」とのこと。そんなに簡単ならぜひ、というわけで教えていただき、アレンジも交えながら実際に4品作ってみました。
▼無理なくできる自炊の方法を発信されている、山口さんTwitterアカウントはこちら
▲2022年3月末にオンラインで取材しました
電子レンジ調理で煮魚を作るときの前提
──電子レンジ調理にはどんな器を使えば良いのでしょうか?
山口祐加さん(以下敬称略):耐熱性があれば普通のお皿でも、プラスチック容器でもかまいません。材料の切り身が折り曲がらずタレにつかっている状態にしたいので、多少大きくて深さがあるほうが良いですね。
2切れ同時に調理するときは、くっついたり加熱ムラができたりしないよう、切り身が重ならないサイズの器を使ってください。
──加熱した器でそのまま食べられますか?
山口:詳しくは後述しますが、魚を取り出してタレだけ加熱する工程があるので、盛り付け用のお皿を別に用意するのがおすすめです。
──加熱時にはラップをかけますよね?
山口:はい、ラップが破裂したりしないように、ふんわりとかけてくださいね。
ブリの醤油煮は2分半加熱で完成
材料(1人分。カッコ内は2人分)
- ブリの切り身 1切れ(2切れ)
- 醤油、みりん、日本酒 各小さじ2(各大さじ1と1/2)
- 長ねぎの白い部分 約3cm×3本(約3cm×6本)
作り方
まず、加熱用の器にブリと長ねぎを入れ、上から醤油、みりん、日本酒を投入します。
先に器に調味料だけ入れて混ぜ、後から食材を入れてもOKです。
ちなみに、切り身の下処理はしなくてOK。臭みが気になる場合は塩を両面に軽くふり、数分置いて出てきた水気をペーパータオルでふき取っておくと、水分が抜け、味がさらに引き締まるとのこと。
盛り付けで表にしたいブリの面を下にして、ふんわりラップをかけ600Wで1分加熱します。
1分加熱したら、一度器を取り出してブリの上下を返し、またラップをしてもう1分加熱します。
切り身は崩れやすいので、フライ返しを使うのがおすすめ。
実際にやってみると、上下を返す時点ではまだ少し赤い部分が残っています。ブリと同様に、長ねぎもひっくり返してみました。
さて、1分後。
おっと、ちゃんとできているじゃありませんか。先ほど赤く見えていたところも十分加熱されているようです。
山口:きちんと加熱されているかの確認は、身が薄いブリは外から見ても分かるとは思いますが、心配ならラップの上から、指またはスプーンで触ってみてください。弾力があれば火が入っています。
また、中心部などが少し生っぽく見えても、盛り付け皿の用意をしている間に余熱でさらに熱が入りますから、あまり心配しなくても大丈夫。少し食べてみて生っぽさが気になるようなら、追加で10秒、20秒と少しずつ加熱してみてください。
ブリと長ねぎを盛り付け用の皿に移したら、ラップをせずに、タレだけ30秒加熱します。
切り身からも水分が出てタレがサラサラになり、うまく絡められない状態になっているので、タレを煮つめる必要があるのだそうです。あえてラップをしないのは、より水分を飛ばすため。
加熱したタレをブリにかけたら、加熱時間わずか2分半で完成です。想像以上に早い!
冷蔵庫にあった柚子の皮(分量外)も適当に散らしてみました。照り焼きのイメージがあるからか、なぜか「ブリと言えば柚子」って個人的に思ってしまうんですよね、変な条件反射です。
さて、実食。
ひと口目、びっくりしたのはとにかくしっとりと柔らかいということ。煮魚に対して「つるんといける」というのは変な言い方ですが、この食感は驚きです。新感覚の柔らかさと言いたいほどです。
短時間の調理なので味がしみているのか不安だったのですが、味付けもバッチリ。全体的にほのかに甘いものの、甘すぎない醤油味ですっきり品の良い味に。ブリの脂も気にならない仕上がりです。
山口:今回の味付けはいずれも控えめです。最初に濃くしてしまうと、後から薄くはできないので。最初はあっさり目で作り、自分はもう少し甘いほうが好きだと思ったら、みりんや砂糖を小さじ1ずつ追加して調整してください。このレシピはそのためのベースですね。
ちなみに2人分で作るときは、片面1分半ずつで両面を加熱してください。タレだけの加熱時間は2分にしましょう。
パサパサになりがちなメカジキもしっとりした仕上がりに
山口さんによると「醤油煮は他の魚で作っても美味しいですよ」とのことなので、メカジキの醤油煮も作ってみました。作り方や調味料の量はブリの醤油煮と全く同じです。
ブリよりも身が薄いメカジキだったので、50秒でも良さそうとは思いつつ、とりあえず、1分ずつ両面を加熱。盛り付けて、小口切りの青ねぎひとつまみと、七味を適量ふりかけました。
こちらも柔らかさに感激です。わが家ではメカジキをソテーにすることが多く、焼きすぎてパサパサになりがちなのですが、この醤油煮は噛むとほろりと柔らかく、身の甘さがより感じられます。それでいて、身の脂はしつこくありません。
さらに、七味の辛さがきりりと引き締める感じで、これはご飯のおかずはもちろん、酒の肴にもいけそう。日本酒に合わせるなら、ひと口大に切って小鉢に盛りたくなります。
本当に煮魚が簡単に作れて、しかも焼き魚、照り焼き、ソテーをフライパンで作るよりも楽で、驚きです!
山口:焼き魚のように煙が出てキッチンが臭くなることはありませんし、照り焼き、ソテーのように油が跳ねることもないので、後片付けも楽ですね。それに煮魚は冷めても美味しい料理です。最初に煮魚を作り、次に他の料理を作る段取りにすると手間が増えた感じがしないかもしれません。
サバの味噌煮は、2人分でも加熱時間たったの3分!
続いては定番中の定番、サバの味噌煮です。
手間のかかった料理という印象があり、自分で作るなんてとんでもないと思う人もいるかもしれませんが、これも電子レンジで作ればあっという間。
醤油煮を1人分で作ったので、味噌煮は2人分でチャレンジです。
材料(1人分。カッコ内は2人分)
- サバの切り身 1切れ(2切れ)
- 味噌、酒 各大さじ1(大さじ2)
- みりん 大さじ1/2(大さじ1)
- 生姜 チューブ約3cm分(約6cm分)
※生の生姜半かけ(1かけ)分のすりおろし、千切りや薄切りでもOK - 長ねぎの白いところ 約3cm×3本(約3cm×6本)
作り方
──先に質問なのですが、醤油煮との違いは、材料と加熱時間くらいでしょうか?
山口:醤油煮は上下をひっくり返しましたが、サバの味噌煮はひっくり返さなくてOKなのが大きいですね。
ブリは皮の部分が少ないので、両面に味をしみこませることができます。一方サバは皮の部分が多く、皮は味がしみこみにくい部位。なので、皮がない面に集中的に味を入れていくようなイメージですね。
味噌、酒、みりんを器に入れて混ぜ合わせます。諸事情でボウルを使っていますが、通常は加熱用の器の中で混ぜ合わせて大丈夫。
調味料を混ぜ合わせたら器に生姜とサバを入れ、サバを何度かひっくり返して調味料を絡ませます。手で触るのに抵抗があれば、箸やトングなどを使ってください。
今回はチューブでなく、家にあった生姜のすりおろしを使用。ちなみに、千切りや薄切りにした後で冷凍しておけば、いつでも使えて便利ですよ。
──外で食べるサバの味噌煮は皮に切れ目が入っていることがありますが、こちらは入れなくても良いのですか?
山口:切れ目を入れるのは皮が縮まないようにするためです。このレシピは本当に短時間の加熱なので、皮が縮むほどではなく、入れなくても問題ありません。
皮目を下にしてラップをふんわりかけ、長ねぎと一緒に電子レンジで加熱。今回は2切れにしたので2分半加熱しますが、1切れなら1分半加熱してください。
サバを加熱後、さらにタレだけを30秒加熱。加熱時間計3分で、サバの味噌煮が完成です。これもまた、早すぎます……!
山口:1切れの場合、タレが少ないので煮つめなくても良いと思いますが、どろっとさせたければ10秒、20秒追加で加熱してください。2切れの場合には30秒ほどでしょうか。
魚の追加加熱もそうですが、やり過ぎると固くなったり、焦げたりするので、一度に長時間加熱するのは避けましょう。
サバをレンジから出したときには少し赤い部分が残っているように見えましたが、盛り付けているうちにそこにも熱が通ったようです。
盛り付けて、生姜の千切り(分量外)をちょこんと添えました。
今回、使ったのが中骨のある切り身だったので、少し熱の通りが悪かったのかもしれません。他の魚もそうですが、身の厚さだけでなく、中骨の有無でも若干加熱時間は変わるかもしれないと感じました。
さて、サバの味噌煮の実食です。
何度も繰り返しますが、これも身が柔らかい! 臭みは全くなく、脂もさっぱり、しかも、味噌の風味が生きています。鍋で煮るとどうしても時間がかかり、味噌の風味が飛んでしまいがちですが、短時間加熱だからか、風味がしっかり感じられます。柔らかい身にタレを付け、千切りにした生姜と一緒に口に入れると爽やかな味わいもして、これはご飯が欲しくなります。
──ところでスーパーなどで売られている切り身は、たいてい2切れ1パックです。1人暮らしで2切れ分作ってしまった場合はどうすれば良いでしょう?
山口:冷蔵庫に入れておけば、翌日食べても問題ありません。暑い時期でなければお弁当に入れても良いですね。特に長ねぎはひと晩おくと味がしみて、より美味しくなります。
――翌日食べるときにはどれくらい温めれば良いでしょうか?
山口:再加熱し過ぎると固くなってしまうので、レンジで20秒くらい。少し温かくなる程度がおすすめです。魚は塩分に包まれていると水分が抜け、時間が経つほどパサパサになっていきます。できれば翌日中くらいまでに食べたいところです。
翌日中が無理なら、冷凍保存もできますよ。冷凍庫の肥やしにならないように1週間以内に食べる、など自分で調整するといいかと。
味噌を変えて、鮭の味噌煮にもトライ
――味噌煮におすすめの魚は他にありますか?
山口:味にちょっと癖がある魚に合います。代表的なものはサバ、鮭でしょうか。
逆に避けたいのは、醤油煮にも言えることですが、塩鮭など塩分が入っているもの。塩辛くて食べられないと思います。魚のアラも下処理が必要なので、簡単に作るなら避けたほうが無難です。
――しっかりした下処理が必要だと、捨てるゴミが増えたり手が臭くなったりしちゃいますよね。そしたら、生鮭の切り身でも味噌煮を作ってみます!
ということで、生鮭で味噌煮を2人分作ります。
ついでに味噌も変え、甘めの白味噌を使うことに。調味料の分量や作り方はサバの味噌煮と変わりません。
アレンジで、青ねぎの小口切りを大さじ1と1/2ほどタレに混ぜ、生鮭の両面に絡めました。
サバのように片面が皮で覆われているわけではないので、「盛り付けで表にくる面を表にして加熱しちゃっても、味に問題ないかな」と勝手に解釈しちゃいます。
──ねぎ類以外に、醤油煮や味噌煮の付け合わせとしておすすめの野菜はなんでしょうか?
山口:ねぎ類のような香味野菜が入ると味に深みが出るので、みょうがを半分に切ったものもおすすめです。手軽な冷凍野菜なら、いんげんやほうれんそうも良いかもしれません。茹でてから添えても、加熱するときに凍ったまま一緒に入れてもOKです。
逆にもやしのように水気が出るものは、タレが薄まってしまうので避けましょう。短時間で作るので、ごぼうのように火が入りにくいものも向いていません。
──なるほど。そしたら、冷凍いんげん適量をそのまま、一緒に加熱しますね。
鮭の味噌煮もあっという間に出来上がり。青ねぎといんげんのおかげで、さらに彩り良く仕上がりました。ちょっとしたおもてなし料理風です。
そして、これまた柔らかい。最初に腹身の部分を食べたのですが、鮭の脂と白味噌が溶けあって、ねっとりとした甘みがたまりません。と言っても生姜、青ねぎが入っているおかげか、爽やかな風味もあって、しつこい感じはありません。
白味噌の甘みが強い分、ちょっとご飯のお供にしにくいところはありますが、普通の味噌であれば問題ない気もします。
▲わが家にある味噌。普通の味噌(右下)、麦味噌(左下)、白味噌(上)
わが家には味噌が3種類あるのですが、普通の味噌で作ってもおもしろみがないかなと思い、サバには麦味噌を、鮭には白味噌を使いました。味噌を変えてみるだけでも、違う料理になるような楽しさがあります。
実はこの白味噌、みそ汁にするには甘すぎて持て余していた品だったのですが、味噌煮に使えるなら消費しきれるかも……!
山口:ブリの醤油煮で、「甘い味がお好みならみりん、砂糖をプラスしましょう」という話をしましたが、それ以外にもさまざまな味変ができます。醤油煮であれば、生姜以外にも梅干し、ニンニク、山椒などを入れても良いですし、あっさり食べたいならお酢もおすすめです。味噌煮なら、コチュジャンや柚子胡椒を加えてもおもしろいですね。いろいろプラスして、楽しんでみてください。
──煮魚がこんなに電子レンジと相性が良いなんて知りませんでした。
山口:電子レンジは焼き目を付ける料理は苦手ですが、素材が持つ水分を利用した調理は得意です。だいたい肉より魚のほうが素材に含まれる水分が多いので、固くなりにくく、ふっくら柔らかく仕上がります。
また、電子レンジは誰がやっても同じように加熱できます。鍋で中火で3分加熱といった場合には、鍋の厚さや微妙な火加減の違いで、火の入り方が変わってしまいます。電子レンジのほうが再現性が高く、失敗する確率がぐっと減りますね。
──たしかに、再現性の高さはその通りですね。
山口:ちなみに今回は600Wの電子レンジを使いましたが、自宅の電子レンジが500Wなら×1.2倍の加熱時間、700Wなら×0.8倍くらいの加熱時間で考えてください。
使い慣れていない人は「電子レンジは冷めた食品を温めるだけのもの」と思いがちですが、煮魚のように、実は調理にも向いているメニューは他にもあります。これを機に、ぜひチャレンジしてみていただきいですね。
──私も電子レンジで煮魚を作るのは手抜きなのかなとちょっと思っていましたが、実はとても理にかなっていることが分かりました。今後は電子レンジでもたくさん作ります。ありがとうございました!
書いた人:中川寛子
住まいと街の解説者。30数年不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくりその他、まちをテーマにした取材記事が多い。主な著書に『この街に住んではいけない』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』『東京格差 浮かぶ街、沈む街』(ちくま新書)など。宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。
May 26, 2022 at 06:00AM
https://ift.tt/rRzBwT6
煮魚をレンチンで作るのは合理的!10分以内で作れるメニューを自炊料理家・山口祐加さんに教わってきた - メシ通
https://ift.tt/HFOce53
Mesir News Info
Israel News info
Taiwan News Info
Vietnam News and Info
Japan News and Info Update
Bagikan Berita Ini
0 Response to "煮魚をレンチンで作るのは合理的!10分以内で作れるメニューを自炊料理家・山口祐加さんに教わってきた - メシ通"
Post a Comment