▼全国の焙煎者から豆
「みんなで作る、珈琲(コーヒー)屋」をモットーにする金沢市泉が丘二のカフェ「COWRITE COFFEE(コライトコーヒー)」が人気だ。個人で焙煎(ばいせん)する全国のロースターからこだわりの豆を取り寄せ、スイーツ食材は地元産。利用客らの投票で新メニューを決めるイベントで一体感を高める。昨夏の開店からまもなく一年。協力の輪も広がっている。 (室木泰彦)泉野図書館前の交差点に近い四階建てビルの一階。コライトは共同執筆の意味で、協力しながら店の理想像を描いていく願いを込めた。運営会社共同代表として店を率いる北野隆也さん(27)は金沢市生まれ。星稜高校から富山大卒業後、銀行に勤めたが、学生時代に考えた「いつかカフェを」を果たすため修業に。富山県で世界的コーヒーチェーンの店舗に転職し、業態の違いも知ろうと千葉県のカフェで経験を積んだ。
故郷で店をと決断した昨年。顧客、ロースターらと一緒に店を作るとのコンセプトを決めた。賛同者を募るためインターネットで資金調達するクラウドファンディングを実施。目標五十万円を超える百五万円余が百二十三人から集まった。
昨年七月十六日開店。いろんな味を楽しめるよう人脈も頼りに全国のロースターらに協力を求め、東京や兵庫、愛媛、金沢など県内外のロースターから届くアフリカ産など十種類ほどの豆が並ぶ。相手国に配慮した価格で輸入する「フェアトレード」で東アフリカのウガンダの農家を支援する神戸大の学生四人からの豆も。各ロースターおすすめの豆が随時届く。
デザートも地元産サツマイモや春菊を使うケーキなど独創的なメニュー。一、二カ月に一回の新メニュー開発イベントで選ばれた品もある。デザート選びは人気で定員十人は毎回満員。店員らが試作した三品を味わう参加者らの投票で一番人気をメニューに加える。
「予想以上の参加者がいてありがたい。生産者など地域の人と協力しながら楽しんでもらえる仕掛けを考えたい」と北野さん。知人の芸術家らの作品も展示するなど多彩な協力を実践する。目標は店舗を増やすこと。「今は駐車場がなく、気になっても素通りする人が多くなってしまう。駐車場が確保できる場所にも店を出したい」と話す。
▼試食会で生産者と交流も
今回の新メニュー開発イベントは、店が初めて取り入れるフードメニュー選び。参加者六人が林農産(野々市市)の米粉を使った三品を試食し投票した。試食者の意見を重視するため参加者は一人一票。店のインスタグラムでも投票を受け付け、一番人気だった品に一票を加える。今回の米粉三品は、根菜と生ハムを巻いたサラダラップ、ベーコンとレタスなどをはさんだベーグル、パンケーキ。開票するとサラダラップとパンケーキが各三票で、最終結果はインスタグラム投票に持ち越された。参加者は「六百円」など設定金額も提案。新メニューを選ぶ高揚感とスリリングな展開を楽しんだ。
人気の加賀のほうじ茶風味のプリンも投票で選ばれた品が原形。ブランデーを加えたり、エスプレッソでアフォガードにしたりバリエーションを増やし看板商品に育った。
イベントには林農産の林浩陽(こうよう)社長(63)も参加。無農薬生産の米粉へのこだわり、一九九二年の天皇杯受賞時のエピソードなどをユーモアたっぷりに紹介した。北野さんは「最初のフードメニューなので実績ある林さんにお願いした」。林さんは「メニュー開発に立ち会うことはあるけど投票で決めるのはユニーク。米粉の良さが引き出され、ありがたい」と評価した。
金沢市の女子大学生(24)はほぼ毎回参加。「投票した品がメニューになるのは本当に楽しみ。クリームソーダも飲むたび茶や緑、青色に変わったり魅力が多い」と話す。
同店は午前十一時開店。火~木曜が午後八時まで、土日祝日は午後六時まで、月金定休。(問)同店050(8884)2700
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June 28, 2023 at 03:05AM
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