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相も変わらず「ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国」 - ITpro

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全3630文字

 ある会合で話をしてほしいと言われた。会合の趣旨を聞くと「日本がなぜITの利用で劣後してしまったのかを考えること」と説明してくれた。演題を考えているうちに「ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国」という一言が浮かんだ。

 この言葉は10年近く前、2013年12月に出版した拙著の書名である。元々は日経ビジネスオンライン向けに書いたコラムに付けた題名であり、そのコラムを同書の巻頭に再録した。

 「日本企業は自社で利用するソフトのほとんどをIT(情報技術)企業に開発させているのに対し、米国企業はソフトを内製する比率が高い」「日本のソフト開発技術者の大半はIT企業に所属するが、米国のソフト開発技術者の大半はIT企業ではなく一般企業に所属している」、これがコラムの内容であった。ここでいうソフトはコンピューター上で動かすプログラムのことである。

 これ自体はソフトの内製化と言われる問題だ。実は同書の主題はそれではなかった。再録したコラムのさらに前に置いた「前書き」に「近代化に伴う適応異常とその対策が本書の主題である」と書き、コンピューター関連の話は「主題を考えるための題材」と説明した。適応異常とは「適応できたつもりでいても実際には異常を来している」状態を言う。

 主題の設定に伴い、言葉の定義をかなり広げた。西欧から日本に持ち込まれた技術や科学、さらに政治や経済の諸制度までをハードウエアとし、それらを扱う手段や方法をソフトウエアとした。その上で「我々は目に見える製品や生産ラインの改善と維持には努力を惜しまないものの、目に見えないものに適応し、これを維持しようという努力を十分にしているとは言えない」と述べた。これが適応異常につながる。

 目に見えるものとは広義のハードウエアであり、目に見えないものとは広義のソフトウエアである。後者を無形資産と呼んでもよく、ビジョン、コンセプト、モデル、アーキテクチャー、ストラテジー、ブランドを同書で挙げた。片仮名が並んでしまったが、こうした目に見えないものを自ら描き、使いこなすのが日本企業は苦手だ。ついつい無視ないし軽視してしまう。それもまた「ソフトを他人に作らせる日本」の一面だとみなした。要するに他人事になるということだ。

苦手とする「見えないもの」とは何か

 日本がなぜITの利用で劣後してしまったのか。それは見えないものが10年前も今も依然として苦手だからである。いくつか例示してみよう。

ビジョン、ミッション、パーパス、プリンシプル

 企業でも部門でもプロジェクトでも個人でも、こうしたことを考え、掲げるべきだと言われて久しい。パーパスは最近になってから取り沙汰されているが、自らを鼓舞し、同時に律する言葉を持とうとする点は他と同じである。2021年に発行された『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+プロジェクトマネジメント標準』(PMI日本支部 監訳)は巻頭に記載された12のプリンシプルを念頭に置いてプロジェクトに取り組むことを勧めている。

 だが、ビジョンもミッションもパーパスもプリンシプルも扱いにくく、なかなか腹落ちしない。社長が命じたり、現場の有志が手を挙げたりしてこれらをつくる活動が行われ、それなりの議論を尽くし、言葉を決めるところまではいく。しかし組織やプロジェクトメンバー全体に浸透させるのは容易ではない。それを聞いた大多数は「お題目にすぎない」「これでうまくいくなら苦労しない」などと内心思うからである。とはいえお題目がないと、何のためにどのような方針で情報システムを開発するのかが分からなくなってしまう。

コンセプト、ストラテジー、ブランド

 製品でも情報システムでも開発するに当たっては「要するにこうだ」というコンセプトが不可欠だ。しかしこれが曖昧なままで開発を進めることが少なくない。このため何を重視して作っていくか、開発のストラテジーもぼんやりしてくる。コストを下げ、品質を維持し、納期を守れといった実現不可能な指示がまかり通り、開発の現場は苦労する。

 コンセプトが優れた製品は多くの人に受け入れられ、ブランドとして知られるようになっていくはずだ。なのにコンセプトにそぐわない売り方や広告、使い方を安易にしてしまい、ブランドの確立に失敗する。社内で利用する情報システムでも同様である。外販する場合があるし、そうしなくても「あの会社は〇〇と呼ぶ優れたシステムを持っている」と評判になる可能性はあるが、そこまでになった例は少ない。

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June 01, 2023 at 03:00AM
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