韓国ごはんと韓菓(はんぐぁ)のお店「Rico cafe(りこ かふぇ)」。オープンして半年も経たないにも関わらず、近隣はもちろん東京などの遠方から訪れるお客さんが後を絶たない人気店です。予約の時点でその日のランチの限定数が売り切れる日もあるほど。料理を作るオモニの金さんに健康を一番に考える韓国の家庭料理について教えてもらいました。
昭和の街並みが残る連棟長屋でいただく韓国ごはんと韓菓
堀川通と千本通を繋ぐ「三条会商店街」。人気のカフェやパン屋さんなどグルメなお店が集まる名物商店街から一筋入るちょっぴり穴場的な場所にあるのが韓国ごはんと韓菓のお店「Rico cafe」。
昭和の雰囲気が残る昔ながらの連棟長屋の一軒です。
先に娘さんが2階で子ども向けの英語と韓国語の教室を始め、空いている1階で「カフェをしたら?」と金さんに持ちかけたのが店を始めるきっかけ。というのも金さんは、かつて先斗町にあった人気韓国居酒屋のオーナーシェフを務めた経験の持ち主。
あまり忙しすぎるのはもう嫌だけれど「席数が10席で夕方までなら」と韓国ごはんと韓菓のお店「Rico cafe」を2023年の春にスタートさせました。
一度食べたらまた食べたくなる韓定食「五楳飯床(オチョプパンサン)」
「Rico cafe」の大人気メニューのひとつが「五楳飯床(オチョプパンサン)」。「楳」は器を意味し、「飯床」はお膳仕立ての提供方法をいいます。つまり、5つの小鉢がついたお膳仕立ての定食。韓国では、3チョプ、5チョプ、7チョプと小鉢の数は奇数にするのが一般的。
平皿にのっているのは「トッカルビ」「海鮮のパジョン」「「じゃがいもの煎(ジョン)」。「トッカルビ」はもともと韓国の宮中料理。カルビ肉を粗く刻み、骨の代わりのエリンギに巻いて焼き上げます。金さんはエリンギの代わりに京都府丹波町の名産、丹波しめじを芯にします。粗ミンチのカルビ肉の柔らかさと肉のうま味を味わいつつ、がぶりと噛むと大ぶりの丹波しめじのしゃきっとした食感に新鮮な驚きを感じます。「パジョン」は見た目はチヂミと似ていますが、卵たっぷりで焼き上げるので、ふわっと軽い口あたり。
この日の「五楳」は「白キムチ」「茎わかめの塩炒め」「おでんポックム」「茄子と胡瓜のナムル」「大根のキムチ」。
「白キムチ」も宮中料理。金さんは、塩漬けした白菜から出た水分で野菜を漬けて発酵させます。冬場になると発酵に2日間かけることもあるそう。乳酸菌発酵エキスの溶け込んだスープは残さず飲み干すのが◎です。唐辛子やコチュジャンは入っておらず、やさしい味わい。
「おでんポックム」のおでんとは、韓国ではさつま揚げなどの練り物のことを指します。ポックムは炒める調理法のことで、少し甘辛くて、冷えてもおいしい韓国の常備菜。「日本の人は、韓国料理は唐辛子で辛く味つけたものばかりと思っているけれども、あれは観光用のパフォーマンス。家庭料理では辛いものはほとんどなく、体に良いものを食べるのが主流」と金さん。
主食のごはんにもこだわり、滋賀県「近江の里 木下農園」が減農薬で育てるミルキークイーンに韓国の黒米を混ぜたものを使用。韓国の家庭では雑穀米が基本なのだとか。韓国料理へのイメージが変わりますね。
そして、特筆すべきは韓国の無添加田舎味噌を使ったテンジャンチゲ。味噌に独特のコクがあり、味に深みがあります。「韓国のお味噌っておいしいんですね!」と声をかけるとこの味噌が特別おいしいのだとか。普段使いのランチには少し高めですが、ちょっと疲れているときやデトックスしたいときに食べたら、元気をもらえそうです。
今、韓国女子たちの間で大人気!伝統菓子「ケソンチュアク」を揚げたてで
韓国の家庭料理のお膳「五楳飯床」と並んで看板メニューとなっているのが「ケソンチュアク」。宮中の儀式にも使われた韓国の伝統菓子「韓菓」の一つです。餅粉などの粉にマッコリを加えたお湯で練って生地を作る揚げ菓子。
「ケソンチュアク」などの「韓菓」は、宮中飲食研究院と宮中餅菓研究院で韓菓を学んだ金さんの妹さんのお店「韓果堂」製。「韓菓堂」は現在オンラインショップのみなので、揚げたての「ケソンチュアク」が食べられるのは「Rico cafe」だけなのです。※「ケソンチュアク」の提供は14時以降となります。
「ケソンチュアク」のお持ち帰りはできませんが、ナッツを使ったおこしといったイメージの「強情(カンジョン)」や、シナモン香るドーナッツのような揚げ菓子「宮中薬菓(ヤッカ)」はテイクアウトもあります。「韓菓堂」はギフト商品の販売がメインなので、1個から気軽に買えるのは、ここだけです。贈り物にする前に、ちょっとお試しできるのがよいですね!
ドリンクは金さんイチオシの「自家製なつめ茶」をチョイス。「葛根湯」など漢方薬の材料としてもつかわれるナツメを使った身体によいお茶です。
お茶というよりも、なつめのスープといったイメージで、なつめの実をとろとろに煮込んであります。砂糖不使用で、なつめのやさしい甘さがすっと喉に広がります。
クルトンのように浮いているのは、天日干ししたなつめの皮をペティナイフで丁寧に剥いて、くるりと巻いてカットしたもの。細部まで丁寧な仕事が施されていて、裏側を知るとさらにありがたみが増します。
韓国料理のイメージを一新してくれた「Rico cafe」の「韓定食」は、一度食べると、また食べたくなる。カラダが求める味でした。
■Rico cafe(りこ かふぇ)
住所:京都府京都市中京区西ノ京南聖町17-17
TEL:075-432-8907
営業時間:11~17時(ランチ13時、カフェ16時LO)
定休日:日・月曜休
アクセス:JR二条駅徒歩4分
Photo:千 恋し
Text:京都ライター事務所 小西尋子
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
October 21, 2023 at 03:31PM
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