Search

学生の推し本 黒板に…読みたくなる仕掛け作る<帝京大> - 読売新聞オンライン

tsukuru.prelol.com

 本の森を歩く道しるべは、黒板だ。

 天井近くまで背丈のある書架が整然と並ぶ帝京大学メディアライブラリーセンター(東京都八王子市)の3階と4階。通路に面した書架の側面は黒板になっている。チョークで手書きされたメッセージやイラストが目を引く。それぞれの書架にある「お薦め」の1冊が紹介されている。

 絶滅したニホンオオカミの最後に迫ったノンフィクションの説明に添えられていたのは、毛並みまで丁寧に描かれたオオカミの絵。「頭ひとつで世界が広がる!」というコメントは、哲学の書架から選んだ1冊に付けた一文だ。文学部4年の向嶋瞭真さん(22)は「専門外の本でも手に取ってみようという気持ちになる」と話す。

 本を選び、読みたくなる仕掛けを考え、黒板に表現しているのは、図書館を盛り上げようと集まった「 共読きょうどく サポーターズ」の学生たち。推薦文の書き方を指南するセンター主催の研修を受け、合格した学部1年生から大学院生まで約50人がメンバーだ。

 副代表で文学部3年の高瀬皓太さん(21)は「面白いのに、みんなに見つけられていない本を表舞台に立たせたい」との思いで、お薦めを探す。貸し出されて書架からなくなっているのを見ると、喜びがこみ上げるという。

 サポーターズが手がける書架は1階にもある。全面が深い緑色の「黒板本棚」は、棚のひとつひとつがメンバーに割り当てられていて、テーマは「夜」だったり「妖怪」だったり。

 意外な本が、そこには待っている。

 旧図書館の老朽化に伴い、ライブラリーセンターがオープンしたのは2006年。当初は目新しさもあって利用者数は順調に伸びたが、次第に頭打ちとなった。そこで始まったのが、読書推進プロジェクト「共読ライブラリー」だ。12年度からサポーターズを募り、黒板本棚を導入。職員の辺見純子さん(51)は「本を保管し、貸し出すだけでなく、本に向き合う機会を作ろうと考えた」と語る。

 そう願うのは、教員たちも同じ。センター1階には、八王子キャンパスで学ぶ1年生約4000人の担任教員140人全員の推薦本がコメントとともに並ぶ。今のネット社会を意識してか、その弊害を訴える本も目立つ。

 知的財産法が専門の教授でもある館長の木村友久さん(67)は「ネット任せで情報収集すると、どうしても偏る。図書館には本も雑誌も新聞もあり、客観的な情報を、ふかんして探すことができる」と強調する。

 「実はこの本、あとがきがめちゃめちゃ面白い」「プロローグで“伏線”をばらまいている」。9月下旬、ライブラリーセンター内ではサポーターズたちによるビブリオバトルが開かれていた。

 読んで終わりではなく、その後の交流にまでつなげたい――。だからセンター内での会話は、学習室などを除き禁じていない。時にはイベント会場としても使われる。

 サポーターズ最年長メンバーで教職大学院2年の小林 捺哉なつや さん(23)は「本を紹介して反応をもらうなかで、自分が何を面白いと感じたのか、自分なりのこだわりは何かに気づく。読書を通じた体験は、自分を知ることにつながる」と思い至った一人だ。

 本に魅せられた人たちの発信が、図書館に人を呼び込む。ここでは、そんな好循環が生まれている。

文・山田睦子

写真・佐々木紀明

 アダム・スミス「道徳感情論」(1759年)=写真左=や、カール・マルクス「資本論」(1867年)=同右=の初版本。経済学者の故・鈴木鴻一郎教授によるコレクションの一部だ。経済思想史を教える専任講師の田中延幸さん(44)は「初版本には、世に思想を知らせようとする著者の勢いやエネルギーが感じられる」と評する。

 自由放任主義を唱え経済学の祖とされるスミス。資本主義社会の矛盾を追究したマルクス。その思想は過度の格差社会をもたらす新自由主義や独裁体制に行きつくが、それは2人が思い描いたものとは 乖離かいり していた。「2人は豊かな社会とは何かを追求していた。現代でも、その姿勢から学ぶべきことがある」と田中さんは語る。

 冲永 佳史よしひと さん(50) 本は、自分の頭で整理しながら読み進めないと、しっかり内容を理解できません。紙の本はその点、最適です。厚みを感じながらページをめくっていくと全体の文脈もつかみやすくなります。自分が理解した内容を 咀嚼そしゃく して表現し、さらに議論して理解の質を高めることも大切なことです。

 難しい本と相対する経験をしないと思考は深まりません。その訓練を、社会に出る前に積んでほしいと思っており、図書館でもサポートしています。地域の方々にも開放しており、色々な人に本を読んでもらいたいと考えています。

 ■大学概要 1931年創立の帝京商業学校が源流。大学は66年に開学した。当初は文学部と経済学部の2学部でキャンパスも八王子のみだったが、現在は医学部や理工学部など理系を含む10学部の総合大学に。約2万2000人の学部生が八王子と板橋(東京)、宇都宮、福岡の四つのキャンパスで学ぶ。教育理念は「自分流」。自律的に考え、行動し、結果に責任を持つ人材の育成を掲げる。

 ■図書館 八王子キャンパスの「帝京大学メディアライブラリーセンター」は地上4階、地下1階の施設。蔵書数は約85万冊で、貴重書やマイクロフィルム以外は開架になっており、ほとんどの資料を自由に手に取ることができる。18歳以上で八王子と近隣市の住民、在勤者も利用可(登録料500円)。開館時間は午前8時45分~午後10時(土曜は午後6時30分まで)。日曜は午前10時~午後4時。

Adblock test (Why?)


October 26, 2023 at 08:00AM
https://ift.tt/eNlfOdG

学生の推し本 黒板に…読みたくなる仕掛け作る<帝京大> - 読売新聞オンライン
https://ift.tt/5bW4c7D
Mesir News Info
Israel News info
Taiwan News Info
Vietnam News and Info
Japan News and Info Update

Bagikan Berita Ini

0 Response to "学生の推し本 黒板に…読みたくなる仕掛け作る<帝京大> - 読売新聞オンライン"

Post a Comment

Powered by Blogger.